まとめ

【発表】恐怖の大王大賞&買った自分がむしろ怖い大賞 ~2017年上半期

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<恐怖の大王大賞 2017上半期>

【大賞】ぼっけぇきょうてえ(岩井志麻子/角川ホラー文庫)

怖い、キモイ、文学性、どれをとっても超一流。最後の最後、読者を串刺しにするようなセリフ。まさに理想のホラー小説。作者の他の作品を見ればわかるが、これは奇跡の一冊。現代怪談の真骨頂。心に突き刺さる鋭い棘、未読の方はぜひこの恐怖体験を。

【特賞】黒い家(貴志祐介/角川文庫)

私がホラーに目覚めた一作。超常現象を排して尚且つこの恐怖。短い恐怖を連続的に起こしつつ、クライマックスの凶事に接続する。著者自身の実体験によるリアリティあふれる物語。現代ホラーとして、これ以上の作品はまずお目にかかれない。未読であれば、この湿度100%の暗黒世界へ飛び込んでみよう。

【佳作】夜と霧 新版(ヴィクトール・E・フランクル (著)・ 池田香代子 (翻訳)/みすず書房)

これをホラーとして紹介するには抵抗があるが、まぎれもなく恐怖そのもの。強制収容所というものの非人間性、そして裏返して人間の善性を克明に描く傑作ノンフィクション。その冷徹な視点は、心肝を寒からしむるに十分。これを冷静に読める人間はいない。人類は何をして、何を為そうとしたのか。恐怖は、現実にある。

【佳作】殺人犯はそこにいる (清水潔/新潮文庫)

いまも繰り返される幼女殺人。その震源に迫る渾身のノンフィクション。少々、力が入りすぎているが、それでもリアルタイムに読む価値のある一冊。ペドフィリア、この憎むべき性癖といかに向き合うべきか。どこまでも追求し、どこまでも煩悶する。何もする必要はない。ただ、知っていればいい。

【佳作】模倣犯(1-5) (宮部みゆき/新潮文庫)

小説としてこれ以上の臨場感を味わえる小説はそうない。宮部みゆきは作品の質の波は激しいが、これは間違いなく傑作。一度読み始めれば、ノンストップでエンディングまで突っ走る疾走感。娯楽性xテーマ性x感動。これより面白い小説があるならぜひ教えてほしい。長くてもいいなら、読まないと損だ。

【佳作】13階段(高野和明/講談社)

死刑制度をテーマに、娯楽性とサスペンス、テーマ性が見事に融合。作者にとって、最上の一冊がこれ。そこまで有名ではないが、読んで損はさせない。逆に言うとこれ以外の作品はこれに劣る。目イチの一冊、ほどよく楽しみたいなら、この本を選ばない理由はない。


<買った自分がむしろ怖い大賞>

【大賞】呪怨(大石圭/角川ホラー文庫)

この稚拙なテキスト。これを本屋で売っていること自体が驚愕の事実だ。文章は書けばいいというものではない。やっつけ仕事にも程がある。どんな駄作でも愛情が有れば認める。この本には一片の愛情もない。仕事で文章を書くなら、今すぐ辞めろ。冒涜するとはこういう小説のこと。この本を発刊した関係者の正気を疑うレベル。

【特賞】雀蜂 (貴志祐介/角川ホラー文庫)

貴志祐介の最悪の仕事。陳腐な設定に、ありふれた落ち、そして魅力のない文章。絶対に読んではいけないホラー小説だ。「がっかり」間違いなく「がっかり」する。ボランティア目的以外、この本を読むことはおススメしない。ため息しか出てこない、そんな小説もある。

【佳作】四日間の奇跡(浅倉卓弥/宝島社文庫)

美男美女が大したことない不幸に右往左往するくだらない小説。これで感動するのは余程おめでたい人間だ。むしろ善良ともいえる。こんな本をおススメに選ぶ奴は地獄に落ちるがいい。本読みの風上にも置けない不埒者だ。本は売れればいいのか? この大バカ者。目の前の利益を取って、将来の利益を失う。そんな例を実感できるはず。

【佳作】映画版無限の住人(三池崇史監督/木村拓哉主演)

原作へのリスペクトゼロで映画を撮るとこうなる。少なくともこの作品において三池崇史は冒涜者に過ぎない。仕事で映画を撮るなら今すぐ辞めろ。あなたは映画監督に向いていない。CMか安っぽいドラマでも撮っていればいい。義務感でする仕事の虚しさよ。誰一人得をしないこの企画、犯人はだれだ?

【佳作】死の泉(皆川博子/早川書房)

最後までテーマがピンボケのまま。上の4作比べれば真摯に執筆されているが、だからと言って面白いかどうかは全く別。駄作です。まずいジュースを飲むマニアがいるように、しょうもないホラーが読みたいなら最適な一冊。ピンとこないことはなはだしい。我こそはという勇者はぜひ読んで感想をお願いします。まったく、薦めません。

<総評>
最初なので、「恐怖の大王」も「買った自分が怖い」も妥当なところに落ち着いたと思っている。本の種類は無限。まだまだ、探求の日々は続きます。恐怖は相対的なもの、案外、あなたの毎日が一番怖いかもしれませんね。

(きうら)

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