★★☆☆☆

えじきしょんを呼んではいけない (最東対地/角川ホラー文庫) ~ネタバレ気味注意

投稿日:2018年9月5日 更新日:

  • 怪人系不条理(?)ホラー
  • 設定は面白いが色々大雑把
  • 許せるタイプのホラーファンに
  • おススメ度:★★☆☆☆

ツッコミどころ満載という意味で、近年稀にみる怪作ではないかと思ったが、全体の構造が、先達である「リング」系なので、イマイチおススメしにくい作品である。あらすじはこう。

(あらすじ)ある島に旅行に出かけた居酒屋の元バイト仲間5人。しかし、上陸した途端、硫酸に溶かされたような猫の死骸を発見する。戦々恐々とするメンバーたちだが、島の民宿に泊まることになる。そこで、偶然が重なって島に伝わる伝説の「えじきしょん」と呼ばれる謎の怪人を召喚してしまう。「えじきしょん」はガスマスクをつけ、毒液のタンクを背負って、そこから伸びたホースをもって人を溶かす液をかける神出鬼没の存在。彼らの運命やいかに!

リング系と書いたのは「えじきしょん」が出現するには法則があるのである。ちょっとネタバレ気味になってしまうが「待ち合わせをする」「写真に撮られる」「30日ごとに現れる」というものだ。そして、ご想像の通り、それぞれに防御策が用意されている。大まかなプロットは、正体不明の「えじきしょん」に追われる>現れる法則が分かる>その法則からいかに逃れるか>そして大落ち。という流れになる。あと、これは重要なことだが、そのメンバーの一人、秋乃という女性に筆者がインタビューしているという体裁を取っている。

「えじきしょん」の意味を書いてしまうとこの本を買って読む意味がなくなってしまうので、それは避ける。避けるが、遠回しに例えるなら、日本の島の民間伝承に「ある要素」を持ってくるというのは、今まで読んでことがないパターンだったので、それは斬新だと、素直に思う。思うのだが、さあ、突っ込んでくれと言わんばかりの描写の数々に思わず仰け反ること必須。そもそも「えじきしょん」はほとんど「硫酸かけかけマン」と呼ばれていて、一応ミスリードになっているのだが、どこか力の抜けるネーミングである。リングにあった「貞子」のような凄味が無いのである。

と、いうような話をしていると一見面白そうだと思う。私も書いててそう思う。しかし、読み終えて振り返ってみると、どうにも腑に落ちない設定多いという大雑把さ。そもそも伝承上の怪人が「ガスマスク」はないだろうと思う。それはどう見ても第1次世界大戦を想起させるイメージであり、土着的怪異とは相性が悪い。さらに、いろんな追加設定が明らかにされるのだが、これがもう、どんどん破綻していくようにしか思えない。ネタバレ気味になるが、一つだけ、思い切り疑問に思う点を挙げたい。

「えじきしょん」はカメラを通して見ると、姿が見え、シャッターを切ると一瞬止まるという設定がある。一応、昔からいるという設定なのに、この追加の弱点は、どう見ても「デジカメ」を想定した設定である。もはや完全なフィルムカメラは、平成生まれの人には「遺物」でしかないと思うが、そもそも昭和のカメラのピントを合わせるレンズは、安物(使い捨て)だとただのガラスだったりした(ガラスさえないものもあった)のだ。そんなものを通して見ても何の意味もないではないか。そういう構造のもので、人ならざる者が見えるとは思えず、さらにシャッターを押して動きが止るとも思えない。実に失礼な言い方をすれば、ほとんどご都合主義のコンピュータ・ゲームの設定である。

まあしかし、こういうものだと割り切ってみれば、怪人との鬼ごっこも楽しめるし、実は怪人以上に恐ろしい存在が「二人」出てくるので、その辺のホラーの定石はしっかり守られていてこなれている。ただ、一方で、やたら冗長に感じるのも確か。良くネタにされる「リング」の貞子だが、設定としては実在の人物を下敷きにし、しかも周到に伏線が張り巡らされていた。呪いがVHSビデオ(!)を通じて伝染するというのも斬新だったし、科学的な設定まで用意されていた。そのうえでテレビから出てくる「貞子」が決め手として生きてくる。しかし、この小説にはそういった「納得」できる点が少なく、ひたすら用意された設定に従ってストーリーが流れていくという感じだった。

新刊でもあるし、タイトルも秀逸だし、決して楽しめないわけではないのだが、★3とせずに、★2としたのには理由がある。実はそれがラストの落ちなのだが、流石にこれはないな、と思う。もうちょっと、何とかなるはずだっただろう。一応、下に白色に文字を反転して「それ」を書いておくので、読む気がない方はどうぞ。でもまあ、ホラーファンとしては、ツッコミ甲斐のある作品だと思うので、決して嫌いではない。積極的におススメはしないが。

(きうら)

<どうしても納得できない点・大ネタバレ注意・以下白く反転>
インタビュアーが取材しているという形なのに、最後にインタビュアーが死ぬ。じゃあ、いったい誰がこの話を書いたんだぁ! そこは、せめて取材ノートとかにして欲しい。


-★★☆☆☆
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