★★☆☆☆

ここから先はどうするの: 禁断のエロス (新潮文庫)

投稿日:2019年1月16日 更新日:

  • 5人の作家によるエロスがテーマのアンソロジー
  • 性的に興奮するというより後味の悪い話が多い
  • イマイチこの本を読むシチュエーションが分からない
  • おススメ度:★★☆☆☆

新年早々「禁断のエロス」はないと思うのだが、まあ、紹介文を読んで欲しい。

【本裏紹介文から転記】官能小説の依頼に難航していた女性ホラー作家は、女性同士のカップルの後をつけ漫画喫茶へ。隣の壁に耳を澄ませ聞こえてきたのは、衣擦れ、溜息、潤みの音で……(「壁の向こうで誰かが」)。医師の寺沢は急患の老女の足に驚く。爪先に向かって細く、指は折り畳まれ、足裏は窪んでいた。纏足(てんそく)だ。それは、性具だった──(「Lotus」)。歪んだ欲望が導く絶頂、また絶頂。五人の作家の官能アンソロジー。

「女性ホラー作家」という単語ひとつに反応して、買ってしまったのである。思い返してみると、私がホラーというものを意識したのは映画「13日の金曜日」ではないだろうか。そして、その中には今でいう「リア充」カップルのお色気シーンがあったように思う。その後の印象も同じで、なぜかエロスとホラーはセットで記憶されていた。サスペリアなども女性が意味不明なものに襲われている紹介文を小学校で読んだ気がする(映画は怖いので、未だに観ていない)。とにかく、最初、ホラーとエロスは私の中では不可分だった。

ところが、最近、ホラーばかり読んでみると、この二つを融合させたものは意外に少ない。京極夏彦の「姑獲鳥の夏」などは、かなりの猟奇性と異常性を持って官能要素も取り込んでいたが……。そういう訳で、エロスとホラーの融合というテーマは面白いのではないか、特にエロスを前面に出したホラーというのは珍しいのでは、というのが購入までの動機だった(別に版元はホラーと言ってないけど)。

結論としては、サイコホラー要素はあるものの、何となく後味の悪い話ばかりで、スッキリしない。性的な描写もあることはあるが、それほど熱心ではない。ただ、5人の作家が集まっているので、クオリティに差があった。順に解説したい。

「壁の向こうで誰かが/澤村 伊智」
表題作で上記の説明にある通り。ホラー作家が官能小説を依頼され、見知らぬレズビアンに刺激されて、自らの体へのコンプレックスを逆転させるというもの。まあそのー、レズビアンで主人公が女性という要素は新しいものの、典型的な「窃視性の目覚め」がテーマで目新しさがない。「まあ、こういう性癖もあるよな」程度の感想です。

「噛みあとはオレンジ/彩瀬 まる」
小学生から中学生に成長していく少女と従兄、その恋人が登場する「思春期の性的成長(?)」を描く短編。この小説は苦手だった。何だかぐにゃぐにゃした女体を連想させるような文章で、エロスというより拙い独白のようで、小説的なテクニックも感じない。現役高校生の投稿小説のよう。小学生が痴漢に遭う話を真面目に読んでいる自分もどうかという気がするが。

「Lotus/木原 音瀬」
これも紹介文にある一篇。読み始めてみると、意外にしっかりとした医療的臨場感のある描写で小説としては面白かった。しかし、とにかく設定が気持ち悪い。主人公の医師は脚フェチ。それは分かるが、纏足(てんそく)をテーマに持ってくるのはやりすぎだ。昔、「中国の伝説」的な本で読んだ気がするが、まさかこんな所で邂逅するとは。これをエロスとしたい気持ちは分からないでもないが、想像すると生理的に受け付けない。しかも、おばあさん……ある意味、その異常性で一番ホラーっぽい。面白いけど、もう読み返したくない。

「ROMANCE/樋口 毅宏」
エロいと言えば、一番エロい描写があるのだが、後味の悪さも格別。イケメンの高校生と地味な女子高生のカップル、その友人。と、なればすることは一つ。3人それぞれの視点から物語は語られるが、ラストにはちょっとしたサプライズも。うーん、何だろうこの違和感。ちなみにホラー要素はあると言えばある。不思議な作品だ。

「バイタルサイン/窪 美澄」
うーん、やってしまいましたなぁ。母の再婚、カッコいい義父、そして小学生から高校生に成長する娘。と、なればすることは一つ。さっきも同じことを書いた。いくら何でも設定がステロタイプすぎないか。しかも母親は小説家、義父は映画関係者とくれば、もうおとぎ話。しかも、少女は最後はおばさんになってるし……。「見てはいけないものを見てしまった」というよりは「見たくもないものを見てしまった」という感じに似ている。知らんがな、というのが感想。うーむ。

と、まあ、こうやって書いてみると確かにバラエティ豊かな作品集である。小説家が出てくる話が二つもあるのは頂けないが、ホラーばかりでは味気ない、気取ったドラマにはもう飽きた、かといってポルノを読んでは芸がない……という極めて限られた読者に向けられた不思議な短編集。

私のように「何か新しいものが読みたい。内容は問わず」という奇特な読者の方がいれば、まあ、なんとなく、ちょっとぐらいは読んでみてもいいのではないだろうか。余り責任は持てない。

(きうら)



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