★★★☆☆

ぼぎわんが、来る(澤村伊智/角川ホラー文庫)

投稿日:2018年3月21日 更新日:

  • 正統派の化け物系ホラー
  • 視点の転換は新鮮
  • ただし、後半は半ばマンガ……
  • おススメ度:★★★☆☆

「映画化決定! 全選考委員が絶賛した第22回日本ホラー小説大賞受賞作!」という華々しいキャッチコピーもあって、久しぶりにちゃんとしたホラー小説を読んでみた。「久しぶりに」というのが、このサイト的にどうなのかはこの際、置いておくとして、感想を率直に描いていきたい。あらすじはこう。

幸せな新婚生活を営んでいた夫婦にある不気味な来訪者が現れる。その後、主人公、田原秀樹の後輩は退社するなど、不吉なことが起こり始める。幸せ、それは二人の間に生まれる娘なのである。しかし、その娘を巡って、土地の強力な妖怪(?)がやってくる=ぼぎわん。これに対抗するのは、オカルトライターと女霊媒師(姉妹)なのだが……。

まず私は「タイトル勝ち」という小説があって、まさにこの本がそう。「ぼぎわん」という響きもさることながら「、来る」の流れがインパクト抜群だ。この点で一歩秀でていると思う。「ぼぎわん」は架空の化け物だが、英語のブギーマンや古文書から名前が生まれたとする説が語られる。どちらにしても、この不気味な響きが全て。これで「ホラー小説大賞」と言われれば、思わず読んでしまうだろう。

あまりネタバレにならない範囲で表現するとこの「ぼぎわん」は、けっこうグロイ姿をしている。映画化されるのも分かる気がする「映画映え」する造形なのである。実写化するとさぞや気持ち悪かろう。貞子や「不安の種」というホラー漫画に出てくる「オチョナンさん」にも勝るとも劣らないインパクトがある。しかもけっこうこれが凶暴で、物理的に攻撃してくるあたり、心霊系を得意とする和製ホラーからすると少々異色な設定だ。

これもネタバレになるが、3部構成になっていて、一部と二部、三部の味わいが全く違う。一部は普通のホラーの文脈にの則って書かれたある意味、平凡な内容だが、二部の内容がなかなか衝撃的だ。この辺が審査員の心をつかんだのだと思う。私も正直、二部の展開は予想できなかった。抽象的に表現すると「攻め方が新しい」のである。まあ、内容自体はよくあると言えばよくある手法なのだが、一部があまりに完璧に平凡なので、上手く騙された感がある。

で、問題は三部なのだが、これが賛否が分かれると思う。私は悪く取った。冒頭で「漫画みたい」との旨を書いたが、女霊媒師が警察の高官に電話する辺りで嫌な予感はしていた。面白いかどうかと言われると普通に読める程度には面白いが、ホラー小説からアクション・サスペンスにシフトするような感じだ。作者はライター経験が長いようだが、そういう経験者独特の擦れた感じのする展開で、言い方変えると「大衆受けする」物語になっている。個人的には、もう一回、全体をひっくり返すぐらいのエネルギーが欲しかった。

人の評価は様々で、おおむね好評なのでバランスの取れた面白い小説なのだろうが、今一つグッとくるものが無かった。うまいとは思うし、ぼぎわんはいいキャラだと思うが、霊媒師というだけで笑ってしまう。もちろん、日頃から言うように霊媒師も呪物も実際に機能するので、軽く見ているわけではないが、これではまるで能力バトルではないか。

などと、ぼやき交じりで★3つの評価とした。興味のある方はどうぞ。

(きうら)


-★★★☆☆
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