★★★★☆

みちびき地蔵(まんが日本昔ばなしより)~話の全容(ネタバレ)と感想

投稿日:2019年5月3日 更新日:

  • 親子が体験する津波の恐怖
  • 死の前日に祈りにくるという地蔵の前に無数の亡霊が……
  • 静かに、深く、恐ろしい
  • おススメ度:★★★★☆

はじめに

令和早々に扱うに相応しい明るい話も考えてみたのだが、そもそも「怖い」を追求してきた本サイトなので、やはりそこはブレずに「怖い話」で初めてみたい。ただ、その辺のホラーではどうかと思ったので、このサイトではなぜかアクセスの多い「まんが日本昔ばなし」をお借りして、日本人の恐怖の根源を考えてみたい(例によって、DVDには収録されていないようなので、あくまでもイメージでお伝えします)。

あらすじ

気仙沼大島で端午の節句(いわゆる子供の日)の前日。はまきちとその母親は、人手の足りない他の村の農作業の手伝いを朝早くから行い、その帰り道にあった。はまきちは早朝から働かされて今にも眠りそうだった。そんなはまきちを引きずるようにして家路をたどる母親。その帰路に「みちびき地蔵」というお地蔵さんがある。なんでも、明日死ぬ者が、天国に導いてもらえるようにお祈りに来るそうである。母親が見ていると、若い男がぼんやりと青く浮かび上がるのが見えた。「こんな若いのに、明日死ぬのか」と気の毒に思っていると、その後ろに村一番の年寄りのお婆さんもいる。「ついにお迎えが来るのか」と思っていると、恐ろしいことに気づく。その亡者の「地蔵詣で」は尽きることなく、老若男女関わりなく、次々と現れては消えていくのだ。それは一面が真っ青になるほどの数で、中には馬や牛といった家畜も混じっている。はまきちは良く分からなかったが、母親は恐ろしくなって、急いで家に帰る。そのことを夫に告げるが、「どうぜ狐か狸にでも化かされたのだろう」と、取り合ってくれない。翌日は、大潮(いつもより大きく潮が引く)で、はまきち親子を含む村人は、海藻などを取りに浜に出かけた。母親は昨日のことがあったので、気が進まなかったが同行した。やがて、潮が満ちる時刻になったのだが、一向に潮は満ちてこない。その時「津波だ!」との声が上がる。三人は驚いて、松山に避難する。津波はまるで山のようになって村を飲み込んでいった。呆然と見守る親子。昨日のみちびき地蔵でのできごとは、このことを予言していたのだ。

怖さのポイント

解説不要の直球型のお話で、このたった10分ちょいが異様に長く感じられる。まずもって、絵のタッチが異様に怖い。筆で描き殴られたようなデザインで、親子は火事で焼き出されたような不気味な姿をしている。もうこれだけで何かあったのかと思うくらい不気味だ。高畑勲は「かぐや姫の物語」で手書きのタッチを動かすことに執念を燃やしていたが、ひょっとしたらあれ以上にアヴァンギャルドな絵柄がアニメーションとして動かされている(もちろん、ほとんどは静止画なのだが)。亡霊という非現実的な存在が出てくるのだが、そんなことはどうでもいいくらい全体の雰囲気が危ない。そして、少しずつ増えていく亡者(この時点では生霊ではないかとも思うが)が、このお話のクライマックスで、画面が真っ青に染まる描写は、静かな恐怖という意味では、ある意味完成形であろう。「津波が来る」という絶望的な状況において、その前日の平凡な日常にクロスオーバーするみちびき地蔵の構図が、記憶に深く根付く恐怖感を植え付ける。東日本大震災を知っている私たちには、本当に絵が頭に浮かぶので、恐ろしいことこの上ない。作品全体としても、民話の形を借りて津波の恐怖を伝え、後年の住人達に警告を送る、という意味があり、決して不謹慎なお話としては描かれていない。3人が松山に逃げて助かったというのも避難の重要性を訴えている。ちなみに明治三陸大津波(2万人以上が犠牲になった)がモデルとネットには記述がある。

わたしと地震

日本で暮らす以上、地震というものは日所生活における一種の前提である。この平成30年の間にも、上記の震災を始め、阪神・淡路大震災、中越地震、熊本地震など大きな地震だけでも結構な頻度で起こっている。

私は阪神・淡路大震災の時大学生だったが、異様な揺れで目が覚めた。上から何かが落ちてきて、目覚まし時計に直撃して透明なカバーが割れた。それどころではないので、寝室のあった二階から一階へよろけながら降りると、まだ地震が続いていた。その時、同居していた祖母が「えらい揺れや」といったのを覚えている。私は狭い廊下の壁に両手を置いて体を支えていた。ただ、住んでいたのが三重県だったので、揺れが収まると「えらい地震だったなぁ」という程度で落ち着きし、いつも通り朝食をとって家を出た。大学まで2時間以上かかるので、もよりの駅に自転車でついた時にはまだ7時前後だった。父親が同じく出勤のため、先に駅に来ていたが、一緒の電車には乗らなかった。そう、驚いたことに近鉄・大阪線は動いていたのである。私はそのままいつもの列車に乗って鶴橋駅を目指した。行きは何とも思わなかった。しかし、駅についてみると、地震で環状線が止まっているという。復旧のめどもないらしい。これでは大学に行けない。仕方がないので、そのまま折り返しの電車に乗った。その時、ふと窓から外を見ると、屋根が落ちた家や崩れた塀が見えた。「ひょっとしたらエラいことになったのでは」とようやく思った。ちなみに、当時は携帯電話というものは庶民には全く普及しておらず、情報源というのはTVや新聞、ラジオを指した。つまり、ことの重大さを知ったのは、その日の昼頃で、燃え盛る神戸をみて、初めて恐怖が沸き起こってきた。この地震で大学はしばらく閉鎖され、神戸の同級生が二人亡くなった。

ある意味、お祝いの週に何を不吉な、と思うかもしれないが「天災は忘れたころにやってくる」のである。何かの人間のタイミングを見て、発生するわけではない。そう考えると、地震は日本人の中にある恐怖の根源の一つであろうし、忘れてはならない。そういう理由で「まんが日本昔ばなし」の中にこういう一話を差し込んできた製作者たちの鋭い姿勢には敬意を表したい。とはいえ「絵だけでトラウマ級」というのも、やりすぎではないかと思ったりもする。これをゴールデンタイムに放送し、けっこうな数の子どもが見ていたかと思うとそれはそれでちょっと怖い気もする。

何にしても災害は無いに越したことは無い。この新しい時代が、少しでも人にとって過ごしやすい時代であることを願う。ちなみに、GW中も普通に更新します。

(きうら)


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