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やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。(12)(渡航/ガガガ文庫)

投稿日:2017年10月25日 更新日:

  • 最新12巻の感想です。
  • 時折挟まれるタイムリーな(オタク的)ギャグがよく分からないことも。
  • 誰もが誰かを気にしている、ありえないほどにやさしい世界。
  • おススメ度:評価不能(これだけ読んでも何も分からないため)

今回とりあげるのは12巻という中途半端なものなのですが、一応これまでの(本当に)簡単なあらすじを紹介したいと思います。主人公は千葉県の高校2年生「比企谷八幡」で、彼は入学以来ぼっちを気取り、ひねくれを性分とする結果に陥っていましたが、ひょんなことから教師の「平塚静」より「奉仕部」に入部させられます。そこで彼はヒロインの「雪ノ下雪乃」と「由比ヶ浜結衣」とに出会います。三人は(主に)生徒からもちこまれる様々な問題を解決することによって、お互いに少しずつ自分の胸を開いていきます。八幡は高校生男子が持つコンプレックスの塊のようですが、原作では、見た目はそれほど悪くないと書かれ、そこがアニメ版との違いです。物語はこの八幡を中心にした青春ラブコメの体裁をとります(一応)。この三人と、彼(女)らをとりまく個性的なメンツとが絡み、とりわけ思春期特有の狭い了見の人間関係がメインになります。ところで、原作は基本八幡の一人称で進められるせいか、彼の劣情めいたものはほぼ漂白されています。これは、八幡の真意を隠すためのものでしょうか。

この巻でも、ある学校行事との関わりでもって三人の関係性が描かれます。しかし、今までの共依存の関係に気付き、それから脱しようとする雪乃の決断と、それを支持した八幡と由比ヶ浜との関係は従前とは違ってきています。雪乃一人の意思を尊重するために三人の友情めいた仲も変容をせまられることになるわけです。とにかく、これが高校生かと疑うかのような達観した三人は、おのれのプライドとそれへの自覚を再認識しつつ、新たなステージへと出発するのです。

なにかと八幡に(無意識的に)頼ることの多かった雪乃の(半)自立と、他人との新たな付き合い方を模索しはじめた八幡と、八幡に好意を持ちつつ雪乃を含めた(三人の)関係を大事にしたい(と自己欺瞞気味に見える)由比ヶ浜と、それぞれが関係性の担保にしてきた奉仕部を抜け出して見つけようとする答えは一体なんなのでしょうか。しかし12巻では、この中で、由比ヶ浜だけが(本当の意味で)青春物ヒロインを演じようとしていますが、他の二人の関係(とプロット上の都合)により、自らの意思を表立って告げることができずに涙を零さざるをえません。

奉仕部への新たな依頼に一人踏み出す雪乃。彼女に立ちはだかるのは、母親が代表するおそろしい社会の影。ちょっとこの世間の声はキツすぎるかなと思います。八幡に対する「陽乃」(はるの=雪乃の姉)の最後の一撃も、読者は既に分かっていたことだろうし、なんだか無理矢理(大人の)世間の厳しさを持ちだしたみたいです。八幡はそんなに動揺しなくてもいいのにと思いますが、まあ高校生だから仕方ない、と言いつつも高校生同士がたすけあうのは普通だと思いますけどねぇ。むしろ一般の高校生なんて、誰もそんなことあまり気にしてないと思うのですが(今の高校生は携帯を通じた繋がりの方を気にするでしょうか)。しかし、なにかと八幡たちに付きまとう陽乃は最初コワイ(←声優の演技のせいもあって)という雰囲気を感じましたが、なんてことはない、この12巻に至って、彼女には、結局狂言回しめいたかなしげで滑稽な人物という役回りしか付与されてなかったという印象です。

それにしても、この作品の高校生たちはおそろしく高度な人間関係の綱を深刻な顔をして渡っているなぁという感じです(もちろん、なごやかな登場人物もいるのですが)。彼らが先のステップ(大学など)へ進んだ後、今までの関係を引きずりながら同様の付き合いをするのだろうか。大学生などになった時には、それまでの世界観が狭かったとお互いに笑いあうのだろうか。まあそれはいいとして、とにかくこの高校生たちは(一部を除いて)みんな八幡にやさしく何かと彼を気遣っています。現実は、これほど周りの人間はやさしくはないし構ってくれないし分かってなどくれないし、そもそも他者のことなどどうでもいいと思っているものなのになぁ(偏見)。11巻では由比ヶ浜が、12巻では雪乃が表紙イラストになっていて、どちらも不安げにこちらを(八幡を)見つめていて、彼がどうするかはもう答えが出たような感じですが、この先の展開も一応楽しみにしています。

(成城比丘太郎)



やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。12 (ガガガ文庫) [ 渡 航 ]

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