★★★★☆

アニメに出てくる本(1)

投稿日:

  • アニメに登場する書物。
  • これもまた不定期更新です。
  • 今期[2017年夏]の『NEWGAME!』に出てくる本を中心に。
  • オモシロ度:★★★★☆

アニメに書物が出てくると、その内容とは別の意味でうれしくなります。たいていは登場人物が読んでいたり、言及していたり、あるいは内容とリンクしていたりします。『交響詩篇エウレカセブン』ではフレイザー『金枝篇(Ama)』が重要なアイテムになっていて、『涼宮ハルヒの消失』で長門が読む『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド(過去記事)』(村上春樹)は、キョンの決断と内容的にリンクしていました。また、『PSCHO-PASS(サイコパス)』には、シェイクスピアからディックのSFまで数多くの実在の書物が登場する一方、『ささめきこと』では、ヒロインの自宅が(非実在の)本に埋もれていました。このように、実在・非実在を問わず本が出てくるアニメはいろいろありますが、今年(去年)一番本が出てきた作品は『NEWGAME!』でしょう。

『NEWGAME!』は、「イーグルジャンプ」というゲーム会社に就職した「涼風青葉」が、キャラ班に配属されて、あこがれの「八神コウ」やその他の先輩たちと共にゲームをつくりあげていく「お仕事アニメ」です。なぜかこのアニメには女性の社員しか描かれず、男性がいるのかどうかわかりません。もちろん、スタッフが全員女性だけというチームがあったとしても(創作上)無理はないでしょう。1期の「フェアリーズストーリー3」の発売日に、店頭に並んでいたのが主に若い女性であることからして、女性がメインターゲットのゲームを制作するチームだとしたら、女性社員が多いのもうなずけます(一応)。

この『NEWGAME!』は、青葉とグラフィックチームおよびキャラ班のメンバー(コウ・遠山りん・ひふみん・ゆん・はじめちゃん)に、ディレクターの「葉月しずく」、プログラマーの「阿波根うみこ」が加わって織りなす仕事ドラマです。学生の教室のようなゆるい雰囲気があり、のんびり穏やかな日常とちょっとした仕事の厳しさがにじむように描かれています。1期は、ここに青葉の親友「ねねっち」がデバッガーとして加わりドタバタ要素も追加されます。1期から2期を通して全ての人間関係が青葉を通して描かれるため、2期途中から加わる新人二人(とくに紅葉)への距離の取り方に青葉が苦心するようになってから、作品そのものに不協和音がうまれたように思います。1期では「きらら」史上最高作品かと思ったのですが、2期の途中から、まるで、他人が合わないピースを無理矢理ねじこもうとするジグソーパズルを見ているようで、落ち着かない気分でした。ようやく最後の方になって、青葉とねねっち(ねねっちは青葉と一体の存在)がそれぞれ新人とうまく付き合えるようになってから、落ち着きが出ました。

さて、ここでようやく本題に入りますが、1期の頃から『NEWGAME!』には、数多くの(実在の)本が出てくることがつとに知られています。青葉、コウ、りんのデスクの上にある棚に、実在の書名が入った本がいくつか並べられています。ダブっている本もあり、一体誰発信でこの本を並べたのか不思議なところだったのですが、2期になって、しずくやクリスティーナのデスクが映されるようになり、そこではじめて青葉たちの本が誰由来なのかわかった気がします。では、以下にしずく(とクリスティーナ)のデスク上にある本をいくつか、一覧で(わかる範囲で)書きだしてみます。
(※編者注 以下、リンクのあるものは全てAmazonへのリンクです)

アリストテレス全集』(図書館のリサイクル本?)
高野文子『黄色い本
レイモンド・チャンドラー『ロング・グッドバイ
尾崎翠 』(ちくま日本文学のやつか)
プラトン『ソクラテスの弁明・クリトン』(岩波文庫)
エンデ『鏡のなかの鏡―迷宮
ルドルフ・シュタイナー『色彩の本質・色彩の秘密
『鏡花全集』(Amazon)
春と修羅
『中原中也―山羊の歌』(Amazon)
柄谷行人『世界史の構造 』(これもまたリサイクル本か)
レイモンド・カーヴァー『ささやかだけれど、役にたつこと』(村上春樹訳)
センス・オブ・ワンダー』(カーソンのやつ?)
稲垣足穂『一千一秒物語
本川達雄『ゾウの時間 ネズミの時間
『中村白○』(これは中村白葉のことだろうか!?)
『~バレリーナ/イサドラ・ダンカンの生涯』(同名の本はないようだが)

この他にもいくつかあるようだし、しずくのデスクの後ろには更に図書館のような本棚が置かれていて、そこに数百冊はあるようです(会社の本なのか、個人の本なのか気になります)。上記の書物からしずくのプロファイリングができそうですね。ファンタジーゲームをつくっていることからして、幻想文学系が好きそうな感じですね。それはともかく彼女が本好きであることは疑いがなさそうです。

この中ではシュタイナー(Wiki)の本が異色ですが、まあゲーム会社ならあってもおかしくはないか(スピリチュアルで主観性の高いと思われるこの本は、しずくのパーソナリティにあっている感じがします)。ところで、『ゾウの時間ネズミの時間』は青葉とコウの棚にもあるし、『黄色い本』はりんの棚にも見受けられる(さらにいうと、プログラム班の誰かの棚にも『黄色い本』と『尾崎翠』らしき本が見える)。さらに、りんの棚には他に『ロング・グッドバイ』、『アリストテレス全集』、プラトンの本が見えて、特に『ロング・グッドバイ』は2期の最終回とあわせて考えると示唆的な本ですね。

1期の一話では、まだ青葉の棚には一冊もなく、しずくと会った後の二話から棚に本が並べられているところから考えると、青葉の本はしずくから贈られたものでしょうか。それとも、1期の頃から「読書週間」というポスターが貼られているように、この会社(もしくはチーム)では読書が奨励されているのでしょうか。青葉の棚には、『風の又三郎』、『英語で読む銀河鉄道の夜』、高野文子の本、シュタイナーらしき本、『中村白○』など、しずくとかぶった趣味の本が多いことから、おそらくこれらはしずくから勧められたか押しつけられた(?)かした可能性は高いですね。しずくがつくったチームですから、自分の色に染めるために、自分が好きな本をあげることは考えられることです。青葉たちは、しずくのお気に入りなんでしょうね。

では、どうして他のメンバーにはこれといった本がないのか。たぶん、机の中にしまっているのでしょうか、それとも自宅に持ち帰っているのか、はたまた希望者だけに貸しているのか。まあ、色々考えられますが、いずれにせよ作中では誰も本の話や読書をしてはいないんですけどね。読書していないのに、これだけの本を背景に紛れ込ませるスタッフは、書名と作品に何か関連性をもたしている、と思いたい。人物の後ろに本棚を置いたショットが頻繁に映されるわけですから。漫画や(幻想)文学が多いのはともかく、『ゾウの時間~』が複数冊あるということは、このチームのメンバーの多様性をあらわしているのでしょうか。サイズ(個性)が違えば、それぞれの時間(世界)を持っているというように、チームメンバーの個性を(しずくが)大事にしつつ、でも同じ仲間だということをあらわしているのか、どうか。シュタイナーの本は読んでみたいが、これも何かそういうもの(主観的なもの)を大事にしようということなんでしょうか。また、プラトンとアリストテレスとがあるのも何かありそうですね(考えすぎ)。

最後に余談ですが、青葉は私と星座と血液型が同じで少し嬉しい(はじめちゃんとは誕生月と血液型が同じ!)。それと、私は最初に青葉の声を聞いた時、「これだ!」と心の中で叫びました(原作を読んだわけでもないのに)。これは、『イカ娘』以来のことです。

※執筆者追記 改めてよく見たら、ひふみんの棚にも数冊の本があり、そこにはシュタイナー『色彩の本質・色彩の秘密』らしき本があります。さらに、コウ/りんの棚にもシュタイナーらしき本があります。どうやらこのチームには最低四冊のシュタイナー本がありそうですが、ここまでくると、なんかこれらの本は、アニメ制作スタッフ(アニメーター)あたりの趣味で並べている気がしてきました。(2017/10/06)

(成城比丘太郎)















(最後見られた方はお疲れさまでした)

-★★★★☆
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