★★★☆☆

エッジ(上)(鈴木光司/角川ホラー文庫)

投稿日:2019年4月10日 更新日:

  • 人が消える怪現象を追う女性ライター
  • 微妙な既視感・疑問・それでも読んでしまった
  • 下巻には嫌な予感しかしない
  • おススメ度:★★★☆☆

【鈴木光司は終わったのか】
前回「バースディ」を紹介したとき、もう鈴木光司はダメだと思った。何しろ、リング、リング、リングで、何の発展性も感じなかったからだ。シリーズを除くと、他に「仄暗い水の底から」位しか知らなかったので、冒頭の疑問を解消すべく、比較的新しい本著を読んでみた。作品の設定が気に入った。

(あらすじ/転記)人が消えてゆく―長野、新潟、カリフォルニアで、人々が突如“消失”する怪現象が起こった。そんな中、フリーライターの栗山冴子は、ある一家が忽然と姿を消した“一家失踪事件”の謎を追い始める。18年前に父が、やはり消失ともいえる突然の失踪で行方不明となっている冴子は、一連の事件の中に、人類が経験したことのない未曾有の世界的異変を嗅ぎとるが…!?世界の基盤を揺るがす恐怖を描く、サスペンス・ホラーの傑作。

どうでしょう、この危うい設定。まるでスティーブン・キングかクーンツ、映画ならM・ナイト・シャマラン、あるいはローランド・エメリッヒの新作かという設定。とにかく「世界滅亡」というテーマは私の心をひきつけるが駄作に終わることも多い。(キングの「ザ・スタンド」は良かった)。並みいる作家・監督がチャレンジするが、なかなか世界を終わらせるのは難しい。ドラゴンヘッドという漫画もあったが、共通して「何らかの超常の力が働き」その結果「人類が滅亡へと向かう」というストーリーである。いわゆるディザスターものというジャンルになるのだろうか。

で、鈴木光司。冒頭から大上段に振りかぶる様子は正に大作洋画をイメージさせられる。世界各国で起こる失踪事件、そして、何でもない日本へ戻る。そこには父を失踪で失ったという主人公の女性「冴子」がいるのである。有名な文化人の娘、離婚歴あり、気の強いライター、いきなり乳房に乳がんらしきものを発見、謎の失踪事件を追う……うーん、いつもの鈴木光司ではないか。私は著者の女性の造形にはいつも違和感を抱く。どこかヒステリックで、神経質。妙に共感できない冷たさがある。そういう設定なのかもしれないけど。

物語は、その冴子がテレビ番組の取材に合流するという流れを取り、謎の一家失踪事件に関わるようになるというふうに進行する。途中、父の失踪を調べた変人探偵・北沢も出てくる。気になる点は三つ。

このテレビに、明らかに霊能力を持った鳥居繁子が出てくるが、この人物がそりゃもう完全にスーパーナチュラル。造形も古き良き女霊媒師そのもの。それは別にいいんだけど、科学的なアプローチをテーマに持ってきているのに、いきなり霊的なファクターをぶっこんでくるのはどうか。そりゃ全てはつながっているという設定だろうけど、あんまりといえばあんまり。

二つ。妙に性的な描写がある。必要あるのか。しかも、鈴木光司はやはり「精子信仰者」のようで、男性が読んでも女性が読んでも、微妙な感じのエロシーンがときおり挿入される。番組ディレクター羽柴との痴情は必要なのか。なんとなく、これまで築いてきた作風を捨てきれない著者の姿が浮かぶ。もちろん、読めないほどひどくは無いのだが、どうも違和感がある。生命と起源がテーマなのだから、この辺の生殖に関する描写は仕方ないのか。

三つ。いまさらマリー・セレステ号やらマチュピチュやら、引っ張ってくるネタが古すぎる。アトランティスやムー大陸、ほぼ、解体された感のあるオーパーツネタなど、どうも古典的オカルトネタにこだわりがあるようだが、私はともかく、一般の人はどーでもいいのではないか。どうせなら、新たな謎でもでっちあげて欲しかった。

後半、世界の行方は気になるが、冷たい感じの主人公の色恋沙汰なんぞどうでもいいし、正直ウザい。お世話になった探偵の息子に強姦されかけたという設定もいらんだろう。とはいえ、ここまで読むと話の落としどころは予想がつく。

上巻の感想としては「可もなく不可もなく」だ。「まあまあ」ともいう。ある統計では、飲食店に入って「まあまあ」という感想を抱いた客は、リピーターにはならないそうだ。そりゃそうだ。で、悩んだ末、下巻も購入したので、結論は下巻で書いてみる。最後にアッと言わせてくれる仕掛けがあるのかないのか。その辺に言及したい。

蛇足。2008年初版とあるが、この時期にまだ雑誌が生きていることに驚いた。同年にiPhoneが発売されるので、スマホによる雑誌という種の駆逐が迫ってきている時期だ。テレビもそう。ちなみに、私の調べた限りでは、霊能者が関わって解決した事件は一つもない。本人が偽っている場合がほとんど。ま、人間の残留思念なんてものがあるなら、警察はいらないし、存在するなら膨大過ぎて「読み取る」なんてできないだろう。

などと、ボヤいているうちに文字数がかさんできたので、下巻の感想へ続く!

(きうら)


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