★★★☆☆

グリーン・マイル(4)~(6)(スティーヴン・キング/新潮文庫) ~簡単なあらすじ、前半ネタバレなし、後半ネタバレ感想

投稿日:2017年12月31日 更新日:

  • 神への挑戦状か、捻くれた人間賛歌か?
  • 残酷な視点で描かれる悲劇的展開
  • キングらしさは十分味わえる
  • おススメ度:★★★☆☆

本文に入る前に、まずは、お礼を述べたい。この一年、このサイトを訪れて頂いた全ての方に心よりの感謝を。本当にありがとうございました。来年も皆さんにとって善き一年であることを心よりご祈念致します。
>ちなみに旧サイトに成城比丘太郎氏の年末のご挨拶を掲載しています。

今回の記事は前回のグリーン・マイル(1)~(3)を受けての記事になっているので、この記事から読み始めると必然的にネタバレになるので、未読の方は前述の記事をご参考の上、良ければ続きをお読みください。

(あらすじ)双子の9歳の少女を強姦・殺害したとされる死刑囚コーフィ。彼にはある秘密の力があった。その力を「体感」した看守のリーダー・ポールは、親友である所長ハルのある悩みを解決しようと、仲間たちと一緒にある作戦を実行することを決意するのであった。

(ネタバレなし感想)
この四巻ではこれまで、それほど重要でないと思われていた設定が意味を帯びてくる。それはこの物語が、主人公のポールの回想録であるという事実だ。これまでもその記述はあったが、後半の3巻はその設定が「非常に重要」なのである。はっきり言えば、オチへの伏線として不可欠の要素なのだ。それについては敢えて書かないが、それを念頭に入れて読んでいく必要がある。これは終わった話なのである。

前半3巻を読んで、私はこのストーリーが何を意味するか分からないという感想を持った。単なる死刑囚と看守たちの過酷で悲惨な関係が描かれているだけだと思ったのだ。上記のコーフィによるある「奇跡」は起こるが、それはキング作品としては地味なサプライズだった。

結論から言うと、3行の感想で描いたように、キングが唯一神を告発しているようにも思えるし、限りある人生を生きる人間の悲喜こもごも(双子の幼女が強姦殺人されるという世界も含めて)愛して生きていこうという静かな決意のようにも思える。

ホラー・サスペンス小説として面白いかと言われると、まずまず興味深い内容で楽しく読めるが、過去のキングの作品と比べてどうかと言われると、最高傑作とも思えない。どことなく熱を感じない内容で、伏線も結構あからさまであるし、設定も甘いと思う。ただ、スティーブン・キングは、大衆の要望に応えるという意味では天才的ホラー作家であるので、ついつい読み進めてしまう上手さはある。

有名な映画版も、細部しか覚えていない理由が分かった。個々のシーンは強烈だが、全体をつなぐテーマが「不信」であるので、ストーリーがすぐに呑み込めないのである。結果、「胸糞の悪い映画」となったのも納得だ。

以上、極力ネタバレを避けて書いたが、この内容ではスッキリしないと思うので、以下、ネタバレを含めて感想を書いてみたい。興味を持たれた方は、ぜひ、後半も読んで頂きたい。ちなみに、復刊された小学館バージョンの表紙はそれだけで「泣ける」内容だと思う。
では、改行を入れます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ネタバレ感想)
4巻はタイトルにあるようにドラクロアというフランス系死刑囚が、パーシーの悪意によって悲惨な死を迎える様子が描かれている。これが実に強烈で、まあ、ひどい。映画を見た方ならご存知だと思うが、電気椅子で瞬間的に感電死させるはずが、パーシーの悪意で導電物質(水を含んだスポンジ)を使わず、電気で焼き殺す結果になってしまった。そのシーンは克明に描かれているのだが、文章だけでも吐き気がしそうだ。さすがというか呆れたというか、さすがにスティーブン・キングである。

その前に、コーフィがそのドラクロアの愛する鼠、ミスター・ジングルスを助けるシーンがあるのだが、そこから5巻では所長の奥さんを助ける様子が描かれ、6巻では無実のコーフィが処刑される(処刑を望む)という展開になる。

話のオチとしては、ポールとジングルスが、コーフィに「癒された」ことによって、異常な長寿を得ていることと、それが決して幸福ではないことが描かれて終わる。

つまり、「聖なる愚者」であり、神にも等しいコーフィは残酷な出来事や人々の悪意が繰り返される世界に「疲れて」しまって半ば自発的にこの世を去るし、残されたパーシーやジングルスはそれほど幸せでない人生を生きているのである。

これは永遠や不死、救済といった宗教的テーマに対するキングの挑戦状とも受け取れるし、残酷な世界の中にある奇跡を信じようというメッセージにも思える。神無き世界でどう生きるかという問いかけなのだろうか?

正直、キング自身はそんなことを考えていたのかも知れないと思わないでもないが、私には残酷な世界を淡々と切り取っているだけのように思えた。「ザ・スタンド」や「IT」などで感じた情熱のようなものは感じない。この浮かれたところのない物語が、妙に寒々しいのは、ただただ、キングが現実を見せつけているからなのかもしれない。俺たちの世界はこんなものだ、と。

そんな静かな悪意を垣間見ることができる点が、実にホラー的な作品だと思った。皆さんはどのようにこの物語を読まれるのだろうか?

と、いうわけで、以上で2017年のブログは終了です。グリーンマイル的な希望と絶望、祈りと皮肉を込めて「良いお年を!」

(きうら)



グリーンマイル [ トム・ハンクス ]

-★★★☆☆
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