3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★★★☆

ダークナイト(クリストファー・ノーラン /監督)

投稿日:2019年10月28日 更新日:

  • 何かと話題のジョーカー像
  • ヒース・レジャーはやはりスゲェ
  • 映画としても面白い
  • おススメ度:★★★★☆

今さら感は満載だが「ジョーカー」が公開中の今、何とはなしに前作に当たる「ダークナイト」を見てみたら、そのまま止まらなくなってしまった。2時間半もある長い映画だが、とにかくスピーディでカッコいい。とことんダークな世界観とストーリー。クリストファー・ノーランにしては難解さも少なく、非常に見やすい。今回は事情が事情なので、ジョーカーに注目して見てみた。

驚いたのは、最初はただのチンピラ野郎としてジョーカーが出てくるところだ。そこからマフィアを乗っ取っていく彼の「サクセスストーリー」になっている。ホアキン版のジョーカーは彼がいかにしてジョーカーになったかが描かれているが、そういったバックボーンはほとんどない。飲んだくれの親父に母親が殺され、怯えていたジョーカーに「笑えよ」を口を割かれたという出自は語られるが、それ以外は一切謎。あの不気味なメークで、常にバッドマンの裏をかく巧妙な心理戦を仕掛けてくる。

更に思った以上にフィジカルが強いということ。バットスーツも無いのにバットマンと互角に肉弾戦を繰り広げたりして、なかなかどうして強いのである。何が強いという訳ではないが、とにかく「負けない戦略」を取っている。長いカーチェイスで見せる執拗な攻撃、犬に弱いという弱点をなぜか知っている情報収集能力、あとは度胸と駆け引きのうまさ。そんなフリがあってこそ「ナース姿のジョーカー」という強烈なビジュアルで、自分で仕掛けた爆弾が不発で何度も携帯を押していると、いきなり爆発して驚くというおちゃめなシーンが笑える。現場は、本当に不発気味だったらしいが、そこを名シーンにしてしまう役者の演技力に素直に感心した。彼が亡くなってしまったのは本当に損失だ。

ゲイリー・オールドマンやモーガン・フリーマンなど、脇役も超豪華。彼らの演技も楽しみつつ、ヒロインを途中で〇〇してしまうという大胆な脚本に唸らされ、ラスト付近のジョーカー初めての敗北に息を飲むという作り。もちろん、主役のバットマンはカッコいい。ほとんど体術だけで戦うが、洗練された動きで見せてくれる。傷だらけなのもなんかこの映画を象徴している。

よく言われるが、こういう映画のヒーローと悪役は、まさに「アンパンマンとばいきんまん」の関係で、お互いが存在を補完している。ジョーカーの邪悪さはそれを知ったうえで、バットマンを追い詰めていくところだと思う。愛と憎悪は極限に達すと絶対値で交わってしまうように思う。そういう一枚上の視点で見てみると、さらに色々見えてきて味わい深かった。

ちなみに、他に見て印象に残っているジョーカーはやはりジャック・ニコルソン。もっとコミカルだったが、さすが狂気の男「ジャック・ニコルソン」という演技で楽しめた。当時は、明石家さんまがしきりにパロディでネタにしていた記憶がある。お話としてはこのダークナイトの方が好みだが。

普段はアメコミ物は見ないが、これは別格。ぜひ、未見の方は、見られてはどうか。トゥーフェイスのメイクもなかなかグロくて素晴らしい。こういう「俺はこの映像で勝負する」という覚悟を感じる映画は大好きだ。

(きうら)


-★★★★☆
-, , ,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

新世界より(貴志祐介/講談社)

ホラー要素満載の傑作SFエンターテイメント 知的ゲーム的な要素も面白い 残酷描写も多いので注意 おススメ度:★★★★☆ 時は未来。人間たちは「呪力」という超能力を手にしていた。その力によって、様々な文 …

アニメに出てくる本(1)

アニメに登場する書物。 これもまた不定期更新です。 今期[2017年夏]の『NEWGAME!』に出てくる本を中心に。 オモシロ度:★★★★☆ アニメに書物が出てくると、その内容とは別の意味でうれしくな …

献灯使(多和田葉子/講談社)

読後感に何も残らない。 ディストピア風だが、ちゃちな感じしかしない。 なぜこんなものを著したのだろうか。 おススメ度:★★☆☆☆ (あらすじ)何らかの「災厄」に見舞われた後、鎖国状態の日本で、死を奪わ …

江戸川乱歩作品集Ⅰ(江戸川乱歩/岩波文庫)

「愛またはセクシャリティ」というテーマで選ばれた作品群。 いろんな愛を謎ときのような形で。 傑作長編『孤島の鬼』が読みごたえあり。 おススメ度:★★★★☆(作品としてのおススメ度) 江戸川乱歩の死後5 …

【再読】自分の中に毒を持て(岡本太郎・青春文庫)

ある種の人間にはまるでバイブル 実際に道を踏み外し(踏み出し)た人も 全ての満足できない「今」を持つ人に おススメ度:★★★★☆ このサイトでわざわざ再読と記して同じ本を紹介するのは初めてだ。それには …

アーカイブ