★★★☆☆

ダーク・タワー1 ガンスリンガー (スティーブン・キング(著),‎ 風間賢二 (著)/新潮文庫)~あらましと感想

投稿日:2017年11月9日 更新日:

  • 西部劇風のロードムービー風娯楽小説
  • ファンタジー要素が多数
  • キング作品の根幹となるシリーズ
  • おススメ度:★★★☆☆

キング作品ではおなじみの長い前書きで書かれているが、この作品はJ.R.R.トールキンの「指輪物語」にインスパイアされて、キング流の神話あるいは、冒険要素のある叙事詩大作を書こうとして出来上がった作品。実に19歳の時ということなので、作品の出来からすると流石のクオリティだ。ただしそこはモダンホラーの帝王。指輪物語的な上品さはカケラも無く、荒廃した世界に西部劇の雰囲気を持ち込み、血と悪魔と性的な描写が盛り込まれた何とも形容しがたい内容になっている。一巻はプロローグだが、いわばファンタジー西部劇というイメージだ。

(あらすじ)ガンスリンガーは暗黒の塔を目指し謎の暗黒の男を追って、荒廃した世界を旅している。彼は二丁拳銃を操る達人で、悪人やミュータント達と果敢に戦う。旅の途中で立ち寄る町、共に旅することになる少年……。黒衣の男の痕跡を追って旅は続く。因みにガンスリンガーは称号の様なもので、名前では無い。一応、彼の幼年期の回想からするとローランドと言うようだ。

読者は比較的長い前書きが終わると、文字通りガンスリンガーと共に荒野に放り出される。そこは悪魔草が生え、生物の気配が乏しい開拓前の荒野の世界。よくイメージする西部劇の世界に酷似しているが、同時に魔法めいたものも存在していてゾンビ化した住人なども出てくる。

一言で言えば、ホラーやファンタジーを混ぜたロードムービー風小説で、ひたすら乾いた世界が描かれる。怪物も出てくるし、キング流のお下品描写も満載だ。途中、ガンスリンガーの出自なども描写されるので、徐々に感情移入できる様になってくる。

しかし、これは全部で7冊ある長編小説のプロローグに過ぎず、お話は最後まで読んでもどこに向かっているのかはよく分からない。面白くなりそうな要素は沢山あるので、2巻以降を読んでくれ! というキングの声が聞こえる。

バトルシーンも多いが、この辺は若い時の作品だけあってアイデアも満載。俗な言い方をするとキングなりの厨二病小説ということになるが、その辺の素人の黒歴史に終わっていないのはプロ。

それにしても指輪物語からどうしてこんな血みどろファンタジーが生まれるのか。キングは事あるごとに「ザ・スタンド」が他の作品より愛されるのか半ば不満げに語っているが、読者からすれば簡単だ。話がわかりやすくて怖くて、キャラクターが魅力的だからだ。ガンスリンガーの一巻はまだその辺が弱い。ただ、ザ・スタンドも本格的にエンジンがかかるのは中盤辺りからなので、キング長編作品は焦らずじっくり付き合うべきなんだろうと思う。

最後に訳者後書きでも触れられているが、この作品の構想が後の作品と多数リンクしているので、そういう意味でもキングファンとしては読まねばならないと思い手に取ってみた。取り敢えず二巻を探しにいこうとは思っている。

(きうら)


-★★★☆☆
-, , ,

執筆者:

関連記事

かもめのジョナサン 完全版(リチャードバック (著)/五木寛之 (翻訳)/新潮文庫) ~ベストセラーを読む(4)

「飛ぶ」ことを純粋に求めるカモメの物語 いろんな意味でひたすら「美しい」 伝説化したのが分かるような、そうでないような おススメ度:★★★☆☆ 初めに読んだのは1974年に発行されたバージョンなので、 …

「幽霊屋敷」の文化史(加藤耕一/講談社現代新書)

「TDL」にあるアトラクションについて 「ホーンテッド・マンション」の成立史 ゴシック小説から、幽霊出現装置までを簡単に見る おススメ度:★★★☆☆ 【はじめに】 東京ディズニーランド(以下、TDL) …

『ゆるキャン△』と「日常感」(1) ゆるキャン△(あfろ/芳文社)<前篇>

アニメの背景美術にみる「日常感」。 どこでもない場所における、誰でもない人たちによる、放縦で平和な会話です。 かなり主観的な長文感想です(二部構成)。 おススメ度:★★★☆☆ <前篇> 【登場人物】 …

仮面病棟(知念実希人/実業之日本社) 〜あらましと感想、軽いネタバレ

病院に立て籠もった犯人と医者のサスペンス 文章は読みやすい。キャラもわかりやすい そこそこ楽しいがもう一捻り欲しい おススメ度:★★★☆☆ (あらまし)アルバイトである病院の夜勤についた主人公の外科医 …

死の棘(島尾敏雄/新潮文庫)

壮大な夫婦の痴話喧嘩の詳細 妻の狂いっぷりが凄い ひたすら繰り返される嫉妬の恐怖 おススメ度:★★★☆☆ この本もいつもの本屋の女性店員さんに推薦頂いた一冊だ。本の帯には「絶望的煉獄か 究極の夫婦愛か …

アーカイブ