★★★★☆

ダーク・タワーII 運命の三人〈下〉 (スティーヴン・キング (著)/風間賢二/角川文庫)

投稿日:2018年2月26日 更新日:

  • 相変わらずの超展開ファンタジー
  • ロクでもない仲間ばかり集まる
  • 物語の行方は全く見えないまま
  • おススメ度:★★★★☆

第1巻では、西部劇風の架空の世界を舞台に、華麗にガンマンとして活躍するローランドの姿を描いていたが、第2巻は上下とも、そのローランドが重篤な病気にかかり、死にかけた状態で、必死に謎の仲間を探し回るという展開である。<上>では「囚われの男」として、麻薬常習犯のエディを仲間に入れたが、この2巻でも強烈なキャラクターが登場する。

まずは、この小説の構造を話すと、1巻で完璧な虚構の世界を構築し、その後、2巻では、「(当時の)現代」と混ぜて、物語を進めるという手法がとられている。途中にシャッフルという言葉が出てくるが、現代サスペンスと西部劇風のファンタジーがそれこそシャッフルしているという構造で、その中に登場するのは人間の屑ばかりという、確かにキングにしか書けない内容になっている。

簡単な紹介になるが、2巻では二人目の仲間となる、オデッタという黒人女性が登場してくる。この黒人女性は美人で差別活動家、セレブという設定だが、両足がなく、非常に美しいという造詣だが、実は二重人格者で恐ろしく下品で邪悪な「デッタ」という人格が取り付いている。まあこれが、登場するたびに機関銃のように罵詈雑言を浴びせかけるのである。

これには百戦錬磨のガンスリンガー=ローランドも、気は抜けないし、麻薬常用者のエディなど最初の人格の「オデッタ」といい感じになってしまうという悲劇(喜劇)である。そして、3人目の仲間の扉をくぐって乗り移ったのは快楽殺人者。この絶望的な状況で、ガンスリンガーは銃と薬の確保に奔走するという内容だ。

書いてしまえば、大したことが無いように思えるが、実際に読んでみれば「キング節」が堪能できる出色のペーパーバック小説になっている。着想のもとになった指輪物語では、フロドのもとにメリーとピピン、サム、アラゴルン、ガンダルフ、ギムリなど頼りになる「旅の仲間」が集まってくるが、ローランドのもとに集まってくる奴らは本当にダメ人間ばかり。しかし、この低俗さというか裏返しの世界が、中々痛快でハードボイルドな世界観を堪能できる。

先日読んだ「神聖喜劇」は文章をもって世界と対峙してやろうという気概があったが、このシリーズはそんな高尚な理念は微塵もなく、とにかく本能の赴くままにキングの趣味・嗜好がさく裂するある意味清々しい小説だ。

新刊でもないので、慌てて読む必要はないが、私のような比較的歴史の浅いキングファンなら、ゆっくりと読み進めていくのがいいだろう。

終わりの見えないこの世界で、どんな結末が待っているのか。もう少し、たどってみたいという欲求にかられる。

(きうら)


-★★★★☆
-, , , ,

執筆者:

関連記事

謎解き 超常現象2(ASIOS/彩図社)

超常現象を科学的に解説する真面目なノンフィクション UFOから心霊、惑星の衝突やニセ化学まで多彩な42のテーマ 物足りない所もあるが、とにかく解説が分かりやすくて面白い おススメ度:★★★★☆ 本書は …

パンドラの少女(上)・(下)(M・R・ケアリー/創元推理文庫) ~あらましと感想、軽いネタばれ

不気味な存在が跋扈する、ポスト・アポカリプスもの。 荒廃した世界での、命をかけたサバイバル。 自分は何者なのか、ということに苦悩する少女。 おススメ度:★★★★☆ 世界は「<大崩壊>」という人類の危機 …

嗤う伊右衛門 (京極夏彦/角川文庫)

有名な四谷怪談を京極夏彦風にリブート 元ネタが有名なので意外性がある設定 怖いというより非常に美しい物語 おススメ度:★★★★☆ 有名な「四谷怪談」を京極夏彦が独自の解釈を加えて、再構築した作品。映画 …

江戸の刑罰(石井良助/吉川弘文館) ~内容の紹介と軽いネタバレ

江戸の刑罰と牢屋に関する、古典的名著。 処刑の記述や、牢屋内でのドキュメントは結構おそろしい。 刑の執行や牢屋内の取り決めは、かなり細かい。 おススメ度:★★★★☆ 著者は、「日本法制史」の研究者で、 …

大西巨人と六十五年(大西美智子/光文社) ~人生で絶対読むべき本について

約70年間にわたる、たたかいの記録です。 回想記でありながら、著者自らの経歴や想いを綴っています。 ともにあることの倫理。 おススメ度:★★★★☆ 2014年3月12日に、97歳で亡くなった作家、大西 …

アーカイブ