★★★★☆

ダーク・タワーII 運命の三人 上 (スティーヴン・キング (著)/風間 賢二/角川文庫)

投稿日:2018年2月10日 更新日:

  • いきなり超展開するキング流西部劇&ファンタジー
  • スリリングなシーンと比較的退屈なモノローグ
  • アイデア満載。確かにもっと認めて欲しい気持ちは分かる
  • おススメ度:★★★★☆

まずは、これを見て欲しい。

そうなのである。この作品は映画化され、今年公開されるらしい。が……!

予告を見る限り、ここまで読んできた私のダークタワーじゃない。キング自身は自分の一番のお気に入りであると同時に映画化する場合は好きにやってもらっても構わないと言っているので、どうも全体の「いいとこどり」をした作風になっているっぽい。ぽいというのは、この作品、けっこう面白くなってきたので検証サイトで原作との違いを読んでしまうとネタバレを食らってしまうからだ。と、いうわけで、ネタばれない範囲での紹介はこんな感じ。

(あらすじ)
ダークタワーを目指し、孤独な旅を続けるローランドという孤高のガンマン。どことも知らない浜辺に辿りついた彼は、夜ごと出現する異形のモンスター(まんまロブスター)に、大切な右手の2本の指を喰いちぎられ、敗血症で死にかける。その時、超展開が起こって、ドアが現れ、80年代のニューヨークに接続(超時空どこでもドア)。どこの誰とも分からない人間に乗り移ったはいいが、そいつは麻薬の運び屋でドラッグ中毒のエディという若者だった。図らずも彼を(自分のために)助けざるを得ないローランド。

前に紹介した1巻では、どうも西部劇風のハイファンタジー(完全な異世界)を目指していたような感じがあるが、2巻に入ると、いきなりキング節が炸裂する展開だ。ご存知ない方のために解説すると、キング節とは、非常にサスペンスに満ちた状況を生み出し、汚いスラングと激しいアクション、グロイ描写で畳みかける例のアレである。

この作品では、荒涼とした架空の西部劇の世界でまず、主人公のガンスリンガー=ローランドが死にかける描写から始まる。そこからなぜかドアが現れて、それをくぐると、ニューヨーク行きの航空機に乗っている麻薬の運び屋の意識に憑依するのである。

えっ? っていう展開である

もう一度書こう。なぜ、ニューヨーク? そこは、せっかく構築した世界でタイトルにある<3人の仲間>を探せばいいものを、どうして人間の屑っぽい麻薬の運び屋なんかに乗り移るんだ。しかも(当時の)現代に戻って。

えっ? っていう感じである。

余りの変転ぶりに、最初は何が起こっているのか良く分からなかったが、そこはやはりキング。徐々に読者をなだめすかして、このアイデアが実に素晴らしいかを分からせてくれる。導入の後のしばらくはちょっともたつくものの、後は麻薬の運び屋が遭遇する危機的状況をガンスリンガー(しかも死にかけ)と一緒に乗り切るストーリーになっている。

正直に言って途中からは非常に面白くなってくる。ものすごく下品ではあるが、確かにサスペンス・エンターテイメント要素としては十分だ。一巻を読み終えた読者なら、この展開にも納得できるはずだ。そして、まだ見ぬダークタワーへのはてしない旅を思うだろう。

ホラー要素としても、随所に残酷なシーンが出てくるので、その点は心配ない(?)。読む人間は選ぶが確かに、ちょっと読み続けてみたいシリーズだ。今後編を読んでいるが、後編もやっぱり……な展開だ。この路線で行くのかキング先生。

とにかく若きキングの情念が炸裂するダークタワーは一読の価値ありと言っておきたい。

ちなみに映画のイメージは全く原作とあっていない。何だよあの子供は。ガンスリンガーのキャラ設定もどうなんだ。地雷臭が半端ないが、キングの映画は「ショーシャンクの空に」一本で元が取れるのでそれでいいのだ。

では、いまから後半の続きを読んできます。

(きうら)


-★★★★☆
-, , , ,

執筆者:

関連記事

ぼっけえ、きょうてえ(岩井志麻子/角川ホラー文庫)

短編だが、グロテスクでゾッと来る恐怖感 巧みな岡山弁での語りが魅力的 表題作以外はいま一つ おススメ度:★★★★☆ あちこちの書評で「怖いホラー小説」の話題になると、必ず選ばれているのが、この「ぼっけ …

キラー・ファイト(阿木慎太郎/徳間文庫)※改題前は「闇のファイター 喧嘩道」

クールな傭兵の正統派格闘小説 人物の構図はまんまジョー 古いけど楽しめる内容だと思う おススメ度:★★★★☆ 紹介文を見て、ピンとくる本というものがある。本読みの勘というか、今読みたいと思わせるフレー …

ねじの回転(ヘンリー・ジェイムズ[著]・土屋政雄[訳]/光文社古典新訳文庫) ~あらすじと感想

クリスマスイブに古い屋敷で行われた怪奇譚。 二人の美しい子どもたちと、二人の亡霊と、家庭教師の女性と。 (ゴシック小説風)ホラーとして読めます。 おススメ度:★★★★☆ 本書は、聞き手の「私」を含む何 …

山の霊異記 赤いヤッケの男(安曇潤平/角川文庫) ~感想と軽いネタバレ

山にまつわる短編怪談集 基本的には登山者の死者の話 語り口も工夫されている おススメ度:★★★★☆ 本来、このサイトで取り上げようと思っていた主なお話は、ホラーというか、怪談のような話だった。もう結構 …

カルヴィーノまみれ~木のぼり男爵/不在の騎士/ある投票立会人の一日

木のぼり男爵(イタロ・カルヴィーノ、米川良夫[訳]/白水Uブックス) 不在の騎士(イタロ・カルヴィーノ、米川良夫〔訳〕/白水Uブックス) ある投票立会人の一日(イタロ・カルヴィーノ、柘植由紀美〔訳〕/ …

アーカイブ