★★★☆☆

ノロイ―小林雅文の取材ノート(林巧/角川ホラー文庫)【※注 決定的なネタバレあり】

投稿日:2018年8月24日 更新日:

  • 自宅が焼失・失踪した作家の取材ノートの中身
  • 呪いは存在するのかというテーマ
  • 中々テクニカルである
  • おススメ度:★★★☆☆(予備知識が無ければもう半個★プラス)

ある実在の怪談蒐集作家の自宅が全焼し、妻が焼死。その作家自身も失踪してしまった。この本は、その失踪した作家=小林雅文から「取材ノート」を渡されるシーンから始まる。そして、ノートの中身が明らかになるのだが……「ノロイって存在するんですかね?」という、疑問に答えは出るのか。

以上、カンタンな概要だが、ここから先の感想は、もろネタバレになるので、興味が湧いた方はそのまま読んでみてもらいたい。もし、読むつもりが無ければ、改行の後の文章をどうぞ。

 

 

 

 

【以下ネタバレ】

 

 

 

簡単に言ってしまえば「……という体裁を取った普通のホラー小説なのであった」というのが真実で、作品自体はあくまでノンフィクションとしての体裁で描かれているが、悲しいかな世はインターネット一発で何でも調べられる世界。いくら頑張ってフェイクを隠そうとしても、簡単にばれてしまうのであった。

例えば、冒頭に「小林雅文のビデオ作品」の広告と、彼の顔(ただし目線入り)とプロフィールがカラーページで出てくるが、これもいわゆる前振りである。昭和の時代なら簡単に騙されてしまったかもしれないが、ホラーにとって「Google」は最大の難敵。これを突破するのは容易ではない。

中身にもう少し触れてみたい。小林雅文はあるきっかけで「赤ん坊の泣き声が聞こえてくる」という相談を受ける。現地に赴くと、可愛い娘のいる普通の奥さん(依頼者)の隣に怪しい家がある。そこに入ってみると、唸り声をあげる禍々しい女性が出てきて「なぜ、そんないいかたができるんだ、と訊いているんだ!」と叫ばれる。その場は、それでおしまい。しかし、その後、依頼者は正体不明の事故で死亡する。慌てて女の家に行くと、もうもぬけの殻であった……「正体を突き止めなければ」小林雅文は事件により深く関わっていく。

なかなかうまいと思ったのは、初めの方で怪奇現象の否定派であることを書いていること。赤ん坊の泣き声も所詮は猫や騒音だったというオチが多い。幽霊も幻覚が多い。などと書いてある。そんな彼が徐々に不可解な現象にぶつかっていくのはちょっと捻りがあって面白い。

途中「怪奇番組の取材」でアンガールズが実名で登場するなど「ひょっとしたら」と、思わせる要素を入れてくるところがなかなか。ついつい、本当にそんな番組があったのか調べてみたくなる。実名(っぽい)アナウンサーも出てくることから、信じてしまう読者もいるのではないかと思う。

実際これがもとになったのか、映画が先になったのか分からないが、同名の映画も公開されており、こちらは「フェイク・ドキュメンタリー」と明記されている。いわゆる「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」風の作品であり、それ程珍しくも無いのだが、けっこう本気でこのジャンルに挑んでいたのではないかと思う。小説は、いわばフェイク・ノンフィクションホラーであり、否定の否定なので、言ってしまえばただのフィクション・ホラーなのだが、ちょっとややこしい。

残念なのは後半で、明らかに物語的に盛り上げようとして、柳田翁ばりの古代祭りが語られるがその辺りは設定が荒すぎてちょっとお粗末。この辺の展開は「妖怪ハンター」で読んだ気がする。

他にもアルミ箔超能力者(読めばわかる)の行動や、そんな危ないおばさんが簡単に転居できている(身元保証はどうなった)など、あまり深く考えてはいけない設定も多いので、全てが分かってしまうとちょっとテンションが落ちる。

とはいえ、何も知らずに読めば(かつ、途中でググらなければ)、一定のスリルが味わえるという点で、最近読んだホラーの中ではなかなか楽しめた一冊。新刊では手に入らなさそうだが、去りゆく夏の思い出に(?)こんなホラーもどうかと。

(きうら)


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