★★★★☆

ファントム〈上〉 (ディーン・R・クーンツ (著) 大久保寛 (翻訳)/ハヤカワ文庫) ~あらましと感想

投稿日:2017年7月28日 更新日:

  • 500人の住人が一瞬で消えた謎に挑むホラーサスペンス
  • 美しい姉妹が主人公、個性的な脇役多数
  • 見たいものは全て見せる正にペーパーバックスタイル
  • おススメ度:★★★★☆

先日紹介した「ホラー小説大全」でも、絶賛されていたクーンツの長編ホラー小説。曰く「徹夜本」とのことで、初クーンツとなる私はわくわくして読み進めてみた。大まかなプロットは以下の通り。

(あらすじ)山間の田舎町スノーフィールドの夕暮れ時、主人公の女医ジェニーは年の離れた14歳の妹リサを伴って帰郷した。しかし、住み慣れた町は、物音ひとつしない。ジェニーは自分の診療所で全身くまなく痣だらけ、パンパンに膨れ上がった家政婦の死体を発見する。恐怖に混乱する二人。その後も、次々と町の住人の死体が見つかる。もしかしたら町中の人間が、一瞬で消え失せた? 二人は隣の町の保安官ブライスに助けを求めるが……。

著者はホラー作家と呼ばれるのを嫌ったらしいが、紛れもなくこれはノンストップホラーサスペンス。しかも、変な前置きで引っ張ったりしない直球型。(上)・第一部の物語はこのとんでもない怪異の原因を、姉妹と保安官の一団が探っていくというスタイルで進む。作風ももちろん、エロ・グロ何でもありで最初からフルスロットル。ただ、これは翻訳のせいかもしれないが、そこまでグロい感じはなく、どこか冷めた調子で描かれている。SF作品も書いていたとのことなので、スティーブン・キングと比べると、すぐにスーパーナチュナルに傾かないのは好感が持てる。

キャラクターの書き分けも上手で、必要最低限の挿話を挟みながら保安官の一団もちゃんと感情移入できるように描かれている。ただ、後半に向かうにつれ、様子はだんだんと怪しくなる。それまで冷静を装っていた主人公のジェニーと保安官のリーダーのブライスも時折取り乱し、山の上の田舎町という限られた空間で、ヒリヒリするようなサバイバル劇に変わっていく。ラスト、(下)に続く、重要な変化が訪れる。

上巻は正統派のモダンホラーとして退屈せずに読める楽しいお話だ。緊張と緩和を使い分け、死体を存分に登場させながらすぐに結論に飛びつかないのはうまい。大体、先は読めてくるが、それでも先が気になるのは間違いない。スティーブン・キングほどの知名度はないが、確かにセットで名前が出てくるだけはある力作だと感じた。最後まで読んだので、下巻の感想は、また、次回に。

(きうら)


-★★★★☆
-, , , ,

執筆者:

関連記事

この世にたやすい仕事はない(津村記久子/日本経済新聞社)

ありそうで、なさそうな5つのしごと。 少しだけ、こわい部分あり。 現在、仕事で多忙な人には向かないかも。 おススメ度:★★★★☆ 本書は五つの章で構成される、長編小説といってもいいもの。タイトル通り、 …

ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち (ティム・バートン監督) ~感想と軽いネタバレ

異能者たちの苦悩と戦い 純粋なエンターテイメント映画 不満もあるが概ね良くできている おススメ度:★★★★☆ (あらすじ)リア充になれないオタク系男子のジェイクは、祖父の謎の死に遭遇する。祖父は奇怪な …

狂骨の夢(京極夏彦/講談社) ~あらすじと感想、軽いネタバレ

清涼感のある猟奇系ホラーという特異な存在 前半は少々、まどろっこしいところも 読み返すと味のある展開。文庫版は多数加筆。 おススメ度:★★★★✩ 「姑獲鳥の夏」「魍魎の匣」に次ぐ、百鬼夜行シリーズ3作 …

カルヴィーノまみれ~木のぼり男爵/不在の騎士/ある投票立会人の一日

木のぼり男爵(イタロ・カルヴィーノ、米川良夫[訳]/白水Uブックス) 不在の騎士(イタロ・カルヴィーノ、米川良夫〔訳〕/白水Uブックス) ある投票立会人の一日(イタロ・カルヴィーノ、柘植由紀美〔訳〕/ …

塔の中の部屋(E・F・ベンスン〔著〕、中野善夫・圷香織・山田蘭・金子浩〔訳〕/ナイトランド叢書)

超自然現象を、結構冷静な目線で。 オモシロ怖い怪談を含むホラー短編集。 何かを感じるということについて。 おススメ度:★★★★☆ E・F・ベンスンは、「イギリス怪奇小説の名匠」ということで、丁度100 …

アーカイブ