- 500人の住人が一瞬で消えた謎に挑むホラーサスペンス
- 美しい姉妹が主人公、個性的な脇役多数
- 見たいものは全て見せる正にペーパーバックスタイル
- おススメ度:★★★★☆
先日紹介した「ホラー小説大全」でも、絶賛されていたクーンツの長編ホラー小説。曰く「徹夜本」とのことで、初クーンツとなる私はわくわくして読み進めてみた。大まかなプロットは以下の通り。
(あらすじ)山間の田舎町スノーフィールドの夕暮れ時、主人公の女医ジェニーは年の離れた14歳の妹リサを伴って帰郷した。しかし、住み慣れた町は、物音ひとつしない。ジェニーは自分の診療所で全身くまなく痣だらけ、パンパンに膨れ上がった家政婦の死体を発見する。恐怖に混乱する二人。その後も、次々と町の住人の死体が見つかる。もしかしたら町中の人間が、一瞬で消え失せた? 二人は隣の町の保安官ブライスに助けを求めるが……。
著者はホラー作家と呼ばれるのを嫌ったらしいが、紛れもなくこれはノンストップホラーサスペンス。しかも、変な前置きで引っ張ったりしない直球型。(上)・第一部の物語はこのとんでもない怪異の原因を、姉妹と保安官の一団が探っていくというスタイルで進む。作風ももちろん、エロ・グロ何でもありで最初からフルスロットル。ただ、これは翻訳のせいかもしれないが、そこまでグロい感じはなく、どこか冷めた調子で描かれている。SF作品も書いていたとのことなので、スティーブン・キングと比べると、すぐにスーパーナチュナルに傾かないのは好感が持てる。
キャラクターの書き分けも上手で、必要最低限の挿話を挟みながら保安官の一団もちゃんと感情移入できるように描かれている。ただ、後半に向かうにつれ、様子はだんだんと怪しくなる。それまで冷静を装っていた主人公のジェニーと保安官のリーダーのブライスも時折取り乱し、山の上の田舎町という限られた空間で、ヒリヒリするようなサバイバル劇に変わっていく。ラスト、(下)に続く、重要な変化が訪れる。
上巻は正統派のモダンホラーとして退屈せずに読める楽しいお話だ。緊張と緩和を使い分け、死体を存分に登場させながらすぐに結論に飛びつかないのはうまい。大体、先は読めてくるが、それでも先が気になるのは間違いない。スティーブン・キングほどの知名度はないが、確かにセットで名前が出てくるだけはある力作だと感じた。最後まで読んだので、下巻の感想は、また、次回に。
(きうら)