★☆☆☆☆

ヘブンズ・フラワー (長谷川エリカ /無双舎F文庫 は 1-1)

投稿日:2018年7月15日 更新日:

  • 暗殺者の少女がディストピア的近未来で自分探し
  • 設定、キャラ、テーマ、すべてが横滑りする
  • ドラマのノベライズであることを読んでから知る
  • おススメ度:★☆☆☆☆

読み終わってドラマのノベライズだということに初めて気が付いた。まあ、それで途中にあった違和感が解けて、妙に納得したのだが、実に中身のない一冊で、タイトル買いする私も最初から期待していなかったのだが、その「期待」に全く背かない「内容」である意味「期待通り」の作品である。川島海荷の連続テレビドラマだったらしいが、全く知らないので、感想はあくまで小説版に限っての感想である。あらすじはこんな感じ。

(あらすじ)日本が焦土になるような科学事故「2047年事故」により、植物が絶滅してしまったという設定。主人公の少女アイは、暗殺者としてその崩壊した町で生きている。やがて彼女の出自と事故の原因、日本の再生などが語られる。紹介文には「未来の日本を舞台に描いた全く新しいヒューマンミステリー」とあるが、新しくもないし、ヒューマンミステリーでもない。

まずは、キャラクター。ほとんど主人公アイの一人称で語られるが、これが妙にステレオタイプで個性がない。感情のない暗殺者で、両親を殺され、組織のボスの命令に忠実に従うが、やがて、それに疑問を持ち始める……まったく、どこかで聞いたような様な設定、というより、暗殺者が主人公の物語で、最初に思いつく設定である。良くこれで話を組み立てようと思ったな、というのが身も蓋もない感想だ。刑事との恋愛となっているが、全く恋愛している感じはない。

設定も、よくあるというか、誰でも考え付くので、今やだれも使わなくなった設定「大事故で日本が滅亡した」というものである。発行した年を確認すると2011年。そう、あの東日本大震災の年だ。少し調べてみると、案の定、途中で放送中止になっている。誰が読んでも、原発事故を想起する内容で、一部には「事故を予言した」ような感じで語られているが、あなた、この設定はSF黎明期というか、私が初めてSF(らしきもの)を読んだ時から定番の設定で、たまたまタイミングが合ったので、話題になったという方が正しいだろう。うーむ。

テーマもまあ、無感情なアイが自分を取り戻すというような、意外性の欠片もないもので、愛だの真実などが語られるが、キャラクター造形に深みがないので、何の感情も動かない。全てが上滑りしていく。取り柄があるとすれば、異常に読みやすい(台詞がほとんど)ところぐらいか。かと言ってラノベかと言われると、セクシャルな要素が全くないので、少女が主人公である意味が全くない。エロ・グロを目指せとは言わないが、硬派でもないし、軟派でもない、深みはないけど、大真面目という良く分からない位置取りで物語が出来上がってしまった。いったいどこに、何の需要を見込んでこの話が描かれたのか。

という、疑問を持ったところで、話が終わり、これがドラマのノベライズであるということを知った。なるほど、ビジュアルありきならこのスカスカ感も納得できる。そもそもドラマのノベライズなどというものは、ドラマのファングッズの一つで、単体で読むものではない。存在意義がないとは言わないが、ドラマの感動を再現するための触媒であり、門外漢がいきなり読むものではないと思っている。そういう意味で、私の違和感は正鵠を射ていたのだ。

日本の連続ドラマでSFをやろうとしたことは評価に値すると思うが、小説的におススメできるかは別問題。とはいえ、たまにはこんな感じで「よく本になったな」と思える作品と出合うのも悪くないと、本読みは思うのである。私でも書けるかもしれないという姑息な思いは別として、こういう懐の深さを失ったら、小説というジャンルは衰退すると思う。読まなくてもいいが、こういうテーマと文章、内容で書籍が存在するということを確認するのも一興と思える方なら、一度、読んでみるのも後学のために良いのではなかと思う。

(きうら)



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