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今期〔2018年夏〕アニメ感想など ~映画『聲の形』の感想を含む

投稿日:2018年9月3日 更新日:

  • 今期アニメなどについての感想
  • 映画『聲の形』の感想を含みます
  • まあまあ怖いところあります
  • おススメ度:それぞれ

【聲の形について】

映画『聲の形』をようやくテレビ放送で観ました。まあまあ良かったですが、その良かったとは作画とか背景とかの出来だけです。とくに書くこともないのですけれど、一応記しておくと、これはやはりテレビアニメシリーズでやったほうが良かったのではないでしょうか(映画ほどのヒットはしないでしょうが)。原作は、はじめの部分しか読んでませんが、それでも言うと、アニメの脚本等はあきらかにブツ切りのように思えます。そのせいか、この監督の演出だけが浮き上がってくるように見えます。それに、鑑賞後になんだか内容的な違和感もまた目立つような感じでした。

あらすじ的な内容はヒット作なので省きます。違和感というのは、この映画には悪人がいないなぁという率直な感想によるものでしょうか(原作に出てくる担任の先生はもう少しイヤな感じだったが)。それがまあリアルといえばそうなのです。私は小学生時に人をからかったことはあるし、その私も身体的な特徴で他人から理不尽な難癖をつけられたことはあるし、まあ、悪と善は立場や状況により相対的なものだということだろうか。いや、これは善とか悪とかではなく、ただたんに、映画では役割的に希薄なように(私には)見えてしまう西宮硝子にまどわされた人々の話といえるでしょうか。もし硝子がふつうといわれる健常者であれば話は違ってくるでしょう。そうなっていれば、例えば『3月のライオン(コミックス1巻)』に描かれたようにもっと救いのないような感じになっていただろうか。その辺りのせいで、すっきりしないものになったのだろうか。

あと、内容的には細かいところでもっと違和感はありますが、まああえて言うと、映画の流れが綺麗にまとまりすぎているという印象にかんすること。それについて詳しく書くとしたら二度以上観なければならないし、原作をきちんと読まないといけなさそう。しかし、今のところ録画を見返す気が起らない。京都アニメーションということで評価のハードルが高いせいかもしれませんが、同じ京アニでいうと『氷菓(Ama)』も二回観るのが精いっぱいだったので、アニメの出来がいいだけではダメなのだろうか(原作の問題だろうか?)。

それよりも、これを放送したNHKの意図がどこにあるのかを探る方がおもしろいかもしれません。放送日である8月25日には、裏番組で恒例の24時間テレビが始まったところでした。この日時に映画放送をわざわざぶつけてきたのには局側には何らかの意図があったのだろうか?

そして、『聲の形』は舞台が岐阜(大垣)ということで、これもまた注目(?)でしょう。ここ近年の岐阜バブルはいったいどうなっているのだろう。『君の名は。』に限らず、最近のアニメでは岐阜が舞台なものが数多くありますねぇ。『氷菓』もそうですし。ここまで書いてきてふと思ったのが、現在NHKで放送している朝の連続ドラマとの連関です。そのドラマも岐阜が舞台で、しかも片方の聴力を失ってしまった女性の話。う~ん。もしかして、『聲の形』から物語の構図を借りようと考え、全部をパクるとまずいから、半分だけ設定を借りてきて、それで「半分、青い。」というタイトルにしたのだろうか?というか、西宮硝子は劇内で右耳が完全に聴こえなくなることが示唆されていましたが、このドラマでは主人公が左耳の聴力を失います。聞こえなくなる耳を逆にしただけか。

【今期アニメについて】

今年の夏アニメについて。まあまあ怖い作品がいくつかあります。その前に書いておきたいのですが、なぜ『伊藤潤二コレクション』を冬に放送したのだろう(放送を延期したから?)。まあ、夏に放送していても人気が出ていたとは到底思えない出来なのですが、それでも「グリセリド」なんかは夏に観るとイヤさの効果アップなのに。それにしても、二番目に観たかった「首吊り気球」をアニメ化してくれなかったし、富江の魅力も漫画ほどではなかったし。続編はないだろうしなぁ。やはり(?)、ホラーアニメというのは人気がないジャンルなのだろうか?その点でいうと、現在放送中の『闇芝居』が直球ホラーとして頑張っていて、もう少し注目されればいいなぁとは思う。

さて、今期のアニメに関して。今一番恐怖とスリルを味わえるのが『はねバド!(Ama/コミック1巻)』であることは間違いないでしょう(?)。これはおそらく、バドミントンを通して、高校生たちの汗と涙と屈折が混じった青春スポーツものを制作したかったのでしょうが、あきらかにホラー的なものに仕上がっています。その原因としては主人公の「羽咲綾乃」の描き方にあるかと思われます。天才的な運動能力をもつバドミントンプレイヤーの綾乃には、中学生時に母親が家を出て行ったという過去があります。そしてその母親は綾乃の(姉妹で)ライバル的な存在を育てて戻ってくるのです。この辺りは猪熊柔と環境が似ているかも知れませんが、柔と違って、綾乃は一度バドミントンを辞めていました。その綾乃がもう一度バドを始めるのですが、普段はイイ子のように見える彼女が、ラケットを握ると人が変わる(ように見える)のです。そしておそらく多くの視聴者は、何というか、ハンドルを握ると悪い方に人が変わるドライバーの助手席に座ってしまったといった感情を、その綾乃に覚えるのです。綾乃の瞳からは生きる者がもつ光が消え、表情筋は動くのをやめ、口角は不気味に上がり、他人を人とも思わない傲岸不遜な態度で時に冷静に残酷に悪態をつきはじめるのです。普段はふつうの子に見える綾乃がいつ変貌するのか、そこにスリルがあって、スポーツアニメなのに試合の結果などはどうでもよくなってくるのです。制作サイドはこの効果(?)をどの程度見積っていたかは分りませんが、スポーツものなのに、スポーツの試合展開よりも、綾乃の心理状態に私が恐怖のハラハラドキドキを覚えるところからして、まあ何も考えてなかったのでしょう、おそらく。バドミントンのプレーシーンに相当の作画リソースをつぎ込んでるところから考えるに、アニメではバドミントンでのハラハラ展開を見せたかったのでしょうかねぇ。

さて次にぶっ飛んでいるのは、これまた女子高生が主役の『あそびあそばせ(Ama/コミック1巻)』でしょうか。なんというか、ちょっと下品な『ゆゆ式』といったかんじですかねぇ。しかし、個人的には『ゆゆ式』ほどの中毒性はなさそうですが。それはそうと、これを観たときに、かわいい絵柄でシュールということで、なんとなく『サディスティック・19(Ama/コミック1巻)』あたりを思い出したが、これも白泉社だったなぁ。

ところで、『邪神ちゃん(Ama/1話)』には悪魔が主人公として出てきます。ここでは、日本人が抱いている「悪魔」概念についての捉え方の一つがありそうです。内容的にスプラッタ表現はあるもののどう考えても怖くなくて、ただたんに邪神ちゃんがゲスいだけ。

『ハッピーシュガーライフ(Ama/コミック1巻)』は、ウィキペディアでは「サスペンス・(サイコ)ホラー」とジャンルつけられています。たしかに、登場人物がいずれも狂っているようです。といっても、それはある意味、人間がふつうに持っている何らかの性情をデフォルメして描いているだけのような気もします。しかも登場人物が己の性癖に淫しているだけのような気もします(だから世界が広がらない)。「戦慄の純愛サイコホラー」というキャッチフレーズが冠されていますが、それにプラスして、私としては、謎多い展開もあるサスペンス・ミステリ的なものとしても楽しんでいます。

『はたらく細胞(Ama/コミック1巻)』を観ていると、擬人化された身体内のはたらきには頭が上がりません。アニメ内の身体の持ち主はいろいろと難にあっているようだが、最期はどうなるのだろうか。アニメ内には様々なウイルスや細菌がおそろしい形状で描かれています。個人的には、実際に存在する狂犬病のウイルスの形状が非常に怖くて、その画像を検索して見るたびに鳥肌が立つのです。その狂犬病ウイルスが、もしあの身体に侵入したら、赤血球ら登場人物たち(?)も一巻の終わりだろうなぁ。

さて、なんやかんやあってアニメ化された『ハイスコアガール(Ama/コミック/デジタル版)』ですが、出てくるゲームが懐かしいものばかり。私も駄菓子屋の筐体でよくやった『源平討魔伝』や『魔界村』も出てきて懐かしかった。しかし、住んでいた大阪のゲームセンターは、小中学生が行くと必ずカツアゲされるというおそろしい場所とうわさされていたので、高校卒業までゲーセンには行かなかった。その後よく対戦した『バーチャファイター』や『サムライスピリッツ』もアニメに出てくるが、今のところアニメではメインには出てこないのかねぇ。

今年も非常にアニメ作品が多くて半分もまともに観ることができない。これらを全部見ている人はいるのだろうかと思ってしまいます。アニメオタクの人は、よく「わたしなんかそんなにオタクじゃないですよ」と言うそうですが、それは全部のアニメをチェックしていないからということでしょうか。これほどのタイトルをオタクでもチェックしない(できない)ということは、業界人はもっとチェックしていないでしょう。業界人がこれほど業界内のものをチェックしない業界は他にあるのでしょうか。アニメが製作される理由というか事情はいろいろあるのでしょうが、もう少し考えてみてもいいのではないでしょうか(何を?)。20~30年前に、「これはアニメ化できそうだな」と思う作品でもアニメ化されていないことから考えると、ちょっと現在はアニメにしすぎ。とはいえ、これからは製作に関しても配信等に関しても進化が見込めるので、まあどうでもいいか。個人的には、アニメは人知れずひっそりと楽しんでいきたい。

(成城比丘太郎)


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