★★★☆☆

実話怪事記 穢れ家(真白圭/竹書房文庫)

投稿日:2018年10月27日 更新日:

  • 毎度おなじみ伝聞調の現代怪談集
  • どこかユーモアを感じる作風
  • 破綻しているような気もする話もあるが至極真っ当に楽しく読める
  • おススメ度:★★★☆☆(このタイプの怪談集が好きなら★+0.5)

本の紹介には「汚れた血が呪いの飛沫をまき散らす! 祟りが血脈を滅ぼしていく実話怪談! 大人気、実話怪事記シリーズ第2弾! 」とある。46篇の怪談が紹介されているが、正直、類書と比べて特に何が優れているというのは俄かに判断できない。怪談好きにとってこの手の話は「日常的に消化する」ものであろうと思うので、全体の傾向を述べると「妙に明るい」という印象。もちろん、暗い話も多いが、どこかすっとぼけているか、面白がっている風に見える。一方、他の怪談集ではなるべく避けたいような「あからさまな光学現象」に踏み込んで、いささかリアリティを欠く気がする。

などなど、このように抽象的に紹介していても何なので、今回は趣向を変えてCDのプレビューのようにずわーっと、概要をさらってみたい。怪談集の感想で、あんまりこんなことをする人はいないとは思う。

01 幽霊ニ非ズ/子どもの頃、鉄道で幽霊らしきものに遭遇する話。テーマは逆転。不思議だが、特に説明はない。
02 最終バス/田舎の最終バスを待っているとあやしいバスが来て、それに乗り込みそうになる主人公。少々犯罪のにおいがしていい。
03 隣の家/「お隣の家がすごく気持ち悪い」という話。良くある話だが、落とし方が現代怪談特有のもの。
04 ホウおじさん/タイトルが秀逸。地下街で出会う不気味な男の話。男はいつもアフロ頭だったが、実は……まあ怖い。
05 手招き/幽霊の出る家とそれを守るアイテム、幽霊の行動を楽しむ系。もちろん落ちはスーパーナチュラル。

06 牛丼屋のバイト/仮眠室に幽霊が出る話。よくある。非常によくある。最後、何らかの因果を仄めかすのが、個性と言えば個性。
07 シェアハウス/その女を店子としてシェアハウスに入居させると幽霊が出て……という話。この女が中々不気味。
08 ストロボ/自殺を繰り返す海外の幽霊という珍しい設定。なかなか個性的だが、途中の霊媒師が限りなくうさん臭い。
09 石臼/ソバ挽き用に知り合いからもらった石臼が引き起こす不幸。この石臼は実は「○○石だ」というところがやや怖い。
10 拍子木/消防団の夜回り中にドッペルゲンガー的なものに出会う怪異譚。よくあるあの世に引き込まれ系。

11 円柱の家/この辺からユーモアを感じる。母親と離婚した破天荒な親父が借りた家は円柱3本のような奇怪な家だった。むろん、因縁がある。
12 行先/いわゆる幽霊タクシーの話。しかし、作中にもあるが車も幽霊になり得るのだろうか? 幽霊の本体の根本に踏み込む野心作(?)。
13 かまくら/虫の知らせ系(死に予告)の小編。まあなんでもない。
14 運命の人/これも面白系怪談。運命の二人の出会いとその後。輪廻転生譚でもある。
15 イマジン/作曲家がふいに着想を得たイメージを求めて、その場所を訪ねる話。ちょっと異色な落ちがつく。

16 ルーティン/親父の料理の味を再現できない二代目。技術は完璧、では足りないのはもちろん「怪談要素」ですね。
17 淡雪/これもよくある「変な旅館に泊まってしまった」話の一つ。なんか昔ばなしみたい。
18 蜃気楼/南極旅行に出たサラリーマンが見た幻想とは。怪談より、サラリーマンが南極旅行という設定が気になる。
19 聖者の行進/これもどこかで聴いた「勝手に電話が鳴る電話ボックス」。電話ボックスほとんど無いからもう怪談にならんか。アメリを思い出す。
20 追跡/インスタの写真を撮りたい主婦という設定が新しいので笑った。GPSを偽装する幽霊という斬新な設定で、これも幽霊とはなんぞやと思う。

21 衣文掛け/古典的怪談。衣文掛け(まあ、着物のハンガー)に首がぶら下がっていてという悲劇譚。
22 炎々羅/家電量販店に出る燃えてる幽霊。それだけ。タイトルは妖怪の名前なのでもう少し変わった展開を期待したのだが。
23 赤玉/洪水にまつわる不気味な赤玉の話。身近な設定なので、リアリティがある。ちょっと怖い。
24 水遊び/田舎の小学校の見回りのバイトをする大学生。彼はプールで踊り狂う女性を見るがその正体とは!? しかし、音がしないという設定とオチが矛盾している。納得のいかなかった話。
25 雷人/自転車に乗った怪人の話。それ以上でも以下でもない。今でもたまに見るというのが落ちなのだろうか。

26 ワンピース/花見に言った酒好きのオッサンが多数の幽霊の足に引っ張られるという話。ありがちだが、しつこさにちょっと笑う。
27 じょうおうのおしごと!/SM女王にまつわる怪奇譚。設定が斬新。そして、オチが結構投げやりでこれも笑える。
28 股壺/死人を跨ぐ風習のある地方の苦労話。「変わった風習」系の怪談。まあこんなもん。
29 後ろ姿美人/顔が見えない美人を慕う司法試験の受験生の話。たいていこの場合顔を見ない方がいい。このテーマもよく見る。
30 廃ホテル/20年前、ストロボの明かりを頼りに、片手に廃ホテルをうろつくオッサン。もちろん、良くないものが映ってる。ちょっと怪物系も入っているが、きわめて基本に忠実なフォーマット。

31 Iターン/沖縄にIターンしたら野菜が高くて、農園を作ったらその土地が呪われていたという話。解決法が腑に落ちないが、これくらいで物語から手を放す方が良いのかも知れない。
32 コーンヘッド/怪人系怪談。コーンヘッド(工事用の赤い奴)を被って事故に遭った小学生にまつわる怪異譚。ビジュアル的に怖い。
33 窓外の姉/ヤンキーのネイサンと弟の話。ちょっと不思議な因果ばなしになっている。いまいち、言いたいことも分からない。
34 窓外の男/タイトルは続いている感じだが、別物。これはユーモアがある。「怪異を追い返す系」と分類したい。
35 役場のトイレ/あるトイレでは、ヒザカックンが起こる。まあ、そういう話じゃったというだけ。

36 ゲレンデ/ナイトスキーで変なゲレンデの怪異に合う男の受難。いろんな幽霊がいるもんだ。
37 そば女(め)/必殺落ちなし系の怪談。ただ、なんとなく、幽霊に取りつかれているということが書かれている。繰り返すがオチがない。この辺が作者の真骨頂で、ブラックユーモアを感じる。
38 あきらめ/わずか2ページの短い話。これも「死の予告」系に分類される。
39 老人ホーム/これは力の入った一篇。結構長い。ミステリ要素もある。オチは相変わらずさっぱりしているが、珍しい色んな要素が含まれる総合系怪談
40 見積もり/その学校に工事の見積に行った部外者に不幸が……という話。まあこれもこれだけ。

41 鯉のたたり/金持ちの爺さんの鯉の祟りを描いた現代的な「ノロイ」系ホラー。珍しく二段落ちになっている。
42 落命/これはちょっと人情噺。ただし、ちょっと汚い気もする。「生命を分け与える」というテーマはあるが、こういう風に使用されるのは珍しい。
43 中古レコード/これは直球の貰ったら不幸になるアイテム系怪談。それがレコードというだけ。
44 家の隣/人のいない隣の家から人の気配がということだが、何だか落ちが正確に理解できなくてモヤモヤする。乞う解説。
45 アニメーター/有能な独身女性アニメーターの失踪に関する話。珍しく性的要素がある。アニメーターの現場の待遇の方が怖い。
46 忖度/これは結婚にまつわる怪異譚。まあ、よく話でありましょう。これを突っ込んでいくと民俗学的要素が深くなる。その辺の怪談は、京極夏彦などを読むと良いと思われる。

以上、総ざらいというのをやってみた。読む方は参考になるのだろうか。良く分からない。ちなみに怖いと書いている話はごく限られている。怪談を読み慣れるとこうなってしまうという訳で、だんだん間違い探しのようになってきた。とはいえ、明るい作風で気軽に読めるので、陰惨すぎず、適度に楽しめる入門用怪談としてはおススメである。

まあ、しかし、車は幽霊じゃないだろうと思うんだが、その辺を考え始めるときりがないので今回はこれだけでやめておこう。

(きうら)


-★★★☆☆
-, ,

執筆者:

関連記事

声優(森川智之/岩波新書)~読書メモ(010)※長編のため本編記事として

読書メモ(10) 「声の職人」が伝える声優の極意 著者本人の経歴を綴る おススメ度:★★★☆☆ 本書の著者である森川智之は、現役の声優であるとともに、個人事務所社長として声優のマネジメントや声優志望者 …

櫛の火(古井由吉/新潮文庫)

死んだ女性を裡に秘めつつ、生きる女性と交わる 『行隠れ』の発展的変奏 古井文学的には過渡期にあたるものか おススメ度:★★★☆☆ 【はじめに】 本書は、古井由吉が出した単行本としては、『杳子・妻隠(過 …

ヒロシマの人々の物語(ジョルジュ・バタイユ[著]・酒井健[訳]/景文館書店)~概要と感想

バタイユの「ヒロシマ」論。 ナガサキにも通じるものがある。 後半はバタイユの思想についてさかれている。 おススメ度:★★★☆☆ 本書は、バタイユが、ハーシーのルポルタージュ『ヒロシマ』(1946年)を …

なまづま(堀井拓馬/角川ホラー文庫) ~あらすじと感想、軽いネタバレ

ヌメリヒトモドキという人に似た架空生物を扱うややSF要素のあるホラー 研究者の手記という形で、妻へのゆがんだ愛をテーマに、ひたすら湿度の高い文章が続く 表紙そのままの内容。気持ち悪いと思った人には内容 …

海の底(有川浩/角川文庫)

突如横須賀だけを襲った謎の巨大甲殻類。 潜水艦にとり残された自衛隊員と、13人の子供たち。 警察組織(特に機動隊員)の意地と奮闘ぶり。 おススメ度:★★★☆☆ 本書は、きうら氏が以前紹介していた(20 …

アーカイブ