★★★★☆

怖くて眠れなくなる感染症(岡田晴恵/PHP研究所)

投稿日:2017年5月24日 更新日:

  • 軽く読めるが、中身は結構重い。
  • 身近にある、気をつけるべき病気。
  • 海外渡航する人は特に注意。
  • おススメ度:★★★★☆

感染症というのは、人間誰しもかかるし、いつ発症してもおかしくない病気です。(2017年1月現在)「地球上から根絶できた感染症は天然痘だけ」というように、ペストから結核やノロウイルスまで、今でも世界中で患者が出ています。だから大事なのは、感染症という「うつる病気」に対して、きちんとした知識を持つことでしょう。最近は病気の情報はネットなどで簡単に手に入りますが、本書のような、ためになって軽く読める本を読んでみてもいいのではないでしょうか。この本には感染源から、感染ルート、病状の進行具合までが詳しく書かれていて、その内容の客観性は、現実的だけに結構怖いです。

多くの病原体を媒介するものに蚊があげられます。近年有名になった「ジカウイルス」や「デング熱」や、古くからある「マラリア」など、蚊が媒介する感染症はいくつもあります。「ジカウイルス」のブラジルでの発生は、ワールドカップ(2014年)による人の移動が大きな要因といわれています。「ジカウイルスの予防ワクチンはまだ未開発」で「ウイルスに効く薬もまだない」という状況で、日本でもオリンピック時に気をつけなければならないでしょう。また、「デング熱」は、2014年に日本で70年ぶりに流行しました。これのおそろしいところは、二度目以降の感染でおこる「デング出血熱」だそうです。

私が一番おそろしいのは、「狂犬病」でしょう。幼少期、この病名を聞いた私は、「狂犬病」という字面から、人間が凶暴な犬のようにワンワン吠えまくる姿を妄想して怖がったものです。実際の「狂犬病」はヒトを含めてほとんどの哺乳類が感染し、人が一度発症してしまうと「ほぼ全員死亡する」というほんまにおそろしいものです。日本では一応根絶されましたが、外国では未だ野生・半野生を含めて多くの動物が感染しているので、海外渡航する人は特に気をつけるべきだそうです。ワクチン接種はしておいた方が良いとのことです。それにしても、「狂犬病」発症後のプロセスはおそろしいです。

その他にも、災害時に気をつけるべき「破傷風」、「結核」、「麻疹」、マダニによる「重症熱性血小板減少症」(こわそうな病名)、「ノロウイルス感染症」まで、身近な感染症の危険性と予防法が書かれています。自分がもしかしたらこれらの感染症にかかったのではないかという恐れがある場合、怖くて眠れないかもしれません。しかし、不必要に怖がるものでもないです。普段から正しい知識を持って対処すればよいのです。特に病名はよく聞くものの、その実態はよく分からない場合が多いですから。

(成城比丘太郎)

(編者注)これ系の「病気もの」はある種独特の怖さがある。怪談と違って、自分が「こちら側」に立たされるからだ。私が知っている感染症で印象深いのは、日本住血吸虫(Wiki)のはなし。これはある種感動的なエピソードなので、良ければこちらもどうぞ。



怖くて眠れなくなる感染症

-★★★★☆
-, ,

執筆者:

関連記事

文字禍(中島敦/Kindle版)~概要と感想、中盤までのネタバレ

文字による禍をアッシリアの伝説で説く 短く鋭い文章と明確な主題 ネット時代にこそ意味があるストーリー おススメ度:★★★★☆ 先日、同じ著者による「山月記」を紹介したところ、共同運営者の成城氏より「( …

拝み屋郷内 花嫁の家拝み屋(郷内心瞳/MF文庫ダ・ヴィンチ)

「拝み屋」を営む著者の実話怪談集 魅力的な登場人物と秀逸なストーリー 単なる実話系会談集の枠を超えた傑作 おススメ度:★★★★☆ 憑き物落としや安全祈願などを生業とする拝み屋を営む著者が、自らの奇怪な …

幽霊人命救助隊 (高野和明/文春文庫) ~あらすじとそれに関する軽いネタバレ、感想

自殺者が幽霊となって100人の人間を救助 幽霊という題名だが、ホラーではなくエンタメ小説 まったく怖くはないが、面白い おススメ度:★★★★☆ この本は上記の通り、設定こそ「幽霊」という単語が出てくる …

倉橋由美子の怪奇掌篇(倉橋由美子/新潮文庫)~紹介と感想、軽いネタばれ

「幻想・残酷・邪心・淫猥な世界」を描いた20篇。 簡潔で読みやすい。 著者の博識ぶりがいかんなく発揮されている。 おススメ度:★★★★☆ 倉橋由美子というと、一番(一般的に)有名なのは『大人のための残 …

奪われた家/天国の扉-動物寓話集(コルタサル、寺尾隆吉〔訳〕/光文社古典新訳文庫)

コルタサルの「真の処女作」にして、最適な入門書 都市生活者の不安とペーソスをかんじとれる 解釈は読み手次第 おススメ度:★★★★☆ アルゼンチンの作家フリオ・コルタサルの短篇集。この『動物寓話集』は、 …

アーカイブ