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新版 指輪物語〈1〉旅の仲間 上1 (J.R.R. トールキン (著)/田中明子 (翻訳)/評論社文庫) ~あらすじと感想

投稿日:2017年7月16日 更新日:

  • 現代ファンタジーの元祖ともいえる偉大な名著
  • 弱きものが勇気で悪を撃つ感動の物語
  • 「読みにくさ」は万人の認めるところ
  • おススメ度:★★★★★

一般的には、映画「ロード・オブ・ザ・リング(Ama)」と知られる物語の原著。初版はイギリスで1954年に刊行されているので、2017年時点で53年も前の作品となる。しかし、紛れもないファンタジー小説の名著で、それまでバラバラに散らばっていたエルフやトロル、ホビットやドラゴンの設定などを再定義し、現在、スマホゲームなどで遊ばれているすべてのファンタジーの礎となっているといっても過言ではない。著者のトールキンは言語学者で、そこに言語体系のある「社会」を創造したことも歴史的な意義が大きい。

(あらゆじ)ひょんなことから、叔父であるビルボから謎の指輪を受け継いだ若きホビットのフロル。彼は偉大なる「灰色の魔法使い」ガンダルフによって、その指輪が魔王の復活のカギを握る重要なアイテムであることを知る。彼らはその指輪を葬るため、半ば強制的に旅に出る。やがて彼らを助ける馳夫(はせお/原文ではスタライダー)と呼ばれる強力な戦士やエルフたちの助力も得て旅を進めることになるのだが、それは最初から波乱に満ちたものだった。第一巻は、旅の四人の仲間が本格的に旅立つまでが描かれる。

映画版を撮ったピーター・ジャクソン監督の原作への愛情は異常なまでに深く、私は映画を観たとき、これは「動く挿絵」だと思ったほどだ。これは誉め言葉で、この映画が登場するまで、ファンタジー映画といえば、中途半端な子供だましで終始するものがほとんどだった(「ウィロー(Wiki)」や「ネバーエンディング・ストーリー(Wiki)」はまだ、マシな方だったが、ここまで本格的ではなかった)。原作は別として、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の「コナン・ザ・グレート(Wiki)」のようなアクション映画になることが多かった。とにかく、映画の細部へのこだわりは素晴らしく、キャストも含め、ほぼ、イメージ通りの映像で物語が観られる。最も、原作未読者には第一部は端折り過ぎて映画としてはいまいちだったようだ。

とにかくディティールが素晴らしい小説だ。この本も5、6回は通読しているが、読むたびに新しい発見がある。それだけ情報量が多い小説とも言える。ただ、残念というか、仕方ないというか、この情報量の多さなので、物語は非常にゆっくりと進む。何しろ本を読み始めても40Pはお話が始まらない。ずっと、設定を語っているだけだ。今の目まぐるしく展開する小説に慣れた人には相当辛いに違いない。事実私も初見の時は挫折した。さらに、輪をかけて読みにくくしているのが「です・ます」調で書かれた文章だ。これは大人向けの小説としては非常に珍しく、格調高く美しい言葉なのだが、まどろこっしい読書感覚に拍車をかけている。

しかし、これらすべてはクライマックスで巨大な感動へと転換する。敢えてこんな表現をすれば「序盤は後半のために我慢して読む価値があるタメである」といえる。この本に関しては、私の言葉を信じて序盤も楽しんでもらえると嬉しい。よく読むと、細かな美しい情景がそこかしこにあって、実に丁寧に異世界に誘ってくれるのだ。

怖いと言えば、人間の悪意や欲望について、その根源がテーマであるので恐怖を感じるシーンも多い。ホラーではないが、ホラー的表現を行っている場面もあるので、ファンタジーが嫌いでなければ、ぜひ、この夏に読み切るつもりでゆっくりとよんでみてはいかがだろうか。映画にはない発見が多数あると思う。

補足・今回は広く流通している「新約」を選んだが 瀬田貞二氏の「旧約」も違った味があるので、絶版だが興味があればそちらもどうぞ。

(きうら)



指輪物語(全10巻) (評論社文庫) [ J.R.R.トールキン ]

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