★★★☆☆ 読書メモ

日本美術とゾンビランドと化した佐賀~読書メモ(23)

投稿日:2018年11月30日 更新日:

  • 『闇の日本美術』をちょこっと紹介
  • ゾンビランドサガについて
  • 戦国武将・鍋島直茂について
  • おススメ度:★★★☆☆

【はじめに】

今回は、最近読んだ本の簡単な紹介と、現在放送中のアニメについて簡単な感想を書きたいと思います。ちなみに、この両者に何の関連性もありません。

【日本の歴史を美術からちょこっと知る】

山本聡美『闇の日本美術』(ちくま新書)を読みました。本書は、なんかやばそうな感じの都市伝説的な(?)「闇」のことではありません。日本古代・中世にかけての仏教美術に見る人々(お偉いさん方)がかかえた「暗闇」を見ていくという内容です。要は、人々がおそれた生老病死苦などを、簡単に美術史的に読み解くというものです。まずは、仏教が日本に入ってから、仏国土への憧れが同時に地獄へ堕ちるという観念を人々に植えつけました。それは地獄という観念の図像化である「地獄絵」にあらわれています。

後白河上皇は、とくに熱心に絵巻物をつくらせたそうです。それは、上皇という「世俗の王権にとって宗教的権威の掌握」を示すものでありました。地獄草紙・餓鬼草紙・病草紙といったものの制作により、平安末期の血みどろ的な世相を「闇」として捉えようとする意思があったのでしょう。

その他にも縁起絵巻・合戦絵巻・九相図などなど、その成立事情が簡単に解説されています。いずれもその背後にあった、当時の人々がおそれたものは何だったのか、求めたものが何だったのかが分かります。本書を基にして、古代中世にかけての日本の歴史を垣間見ることができます。まあ、簡単な日本美術入門書といった感じです。

【ゾンビランドサガについて】

現在放送中のゾンビランドサガは、現代の佐賀県を舞台にしていると思われます。きちんと調べていないのですが、おそらく登場人物は佐賀から一歩も出ていないと思います。私は、この記事を執筆時には、7話まで視聴したので、それまでの内容を含むことを書きたいと思います。ちなみに言っておきますと、この記事はアニメの考察などではありません。あと、少しネタバレを含むかもしれないので、アニメをまだ観ていない人は気をつけて下さい。

さて、前節で書いた『闇の日本美術』には、ゾンビらしきものを思わせる絵画は登場しませんが、ある意味ゾンビランドサガよりもホラー的な本かもしれません。まあ、それはいいとして、このアニメは衝撃的な冒頭シーンからはじまります。おそらくこれから先何年にもわたって話題に上がる1話冒頭でしょうね。つかみはオッケーというかんじでしたが、それからの展開はよみがえった女性〔少女?〕たちを集めてのアイドル活動アニメになりました。

ゾンビものかと思わせといて、アイドルアニメの要素を入れ込みつつ、基本的には佐賀推しだけのアニメであることだけは確かなようです。これから先、伝説のあの人やグラサン野郎の正体が分かったとしても、佐賀が視聴者に印象付けられた作品であることだけは変わらないでしょうね。というか、佐賀佐賀うるさいときもありますが(同時期に放送している長崎アニメはどうやら空気な感じになりそうだが・・・)。

個人的におもしろいのは、やはり、各時代のアイドルの違いをうまくいかしているところでしょう。とはいえ、花魁の人がアイドルを理解しているのかはよく分からないし、そもそも彼女らの肉体がなぜそのまま残っているのも疑問ですが、その点は解消されるでしょうか。まあいくつかの疑問を除けば、皆がアイドルというものを独自に捉えてその結果チームとして纏まりつつあるようです(たえさんと元ヤンの人も役割を認識していそう。いや、たえさんは違うかも)。80年代アイドルと現代アイドルのアイドル観の衝突がおもしろいのですが、衝撃の最期を遂げた愛ちゃんの屈託も、7話においてなんとなく区切りがついた感じで、80年代を代表するアイドルさんもそのうち順応するでしょうか。ふたりのアイドル観の違いはどうやらファンとの関係性や距離間をどうとるかを表しているようでした。

これから先の展開は、やはり塩対応ならぬ死後対応として、ファン対応全般はまとまるのでしょうか、ゾンビだけに。アニメの内容としては、ビジュアル的にも設定的にもゾンビという不死をうまくいかしている感じです。ゾンビという設定には、ファンに向けたアイドル活動的にハンディもあるのですが、その反面どんな無茶も通るという大きなアドバンテージ(?)がギャグとしてのアニメ制作的にはあると思われます(シリアスとその反転としてのギャグにかなりのメリハリをつけられるという利点)。

このアニメが最終的にどうなるのか(主人公が完全に記憶を取り戻した時どうなるのか、アイドルの到達点としてどこへ向かうのか)、そういうのを楽しみに視聴したいです。愛ちゃんの存在(←生前)とゾンビ化した現在との差異をどう周囲が扱うのか(扱わないのか)なども気になります。もちろん「伝説」が何を指すのかも。もしかして、たえさんはこれから伝説のゾンビアイドル(アイドルゾンビ)になることを先駆的にあらわしたものかなど、色んな妄想が湧きます。個人的な想定として、もし彼女らがいわゆる「哲学的ゾンビ」といわれる存在として正体を明かされでもしたら、視聴者的にはおそろしいなと思わなくもない。でも「哲学的ゾンビ」って他者には想定(表象)不可能なのでそんなわけないか。

※《追記》
この記事を投稿する時に、すでに第8話まで視聴済みなので、それについても少しだけ。8話では、リリィの死因に関して重大な真実が明かされました。どうやらこのメンバーにはいずれも伝説的な死因があるようです。そのインパクトによって(リリィはギャグっぽいが)、彼女たちの<生前/死後>という差異がさらに強調されて、それによって感動的な場面が時を越えて展開されるという離れ業が成立しています(リリィの性別が実際、本当のところ何なのかという個人的な疑問はどうでもよくなる)。とりあえずこの先の展開としては、生前の彼女らのことを軸に進みそうです。

【鍋島直茂について】

ところで、ゾンビランドサガのアイキャッチには佐賀県の名所や名物的なものがあげられているのですが、その中で「鍋島直正」の銅像がありました。幕末の佐賀藩藩主であった鍋島直正(閑叟)はまあ有名なので、歴史ファンなら知っているでしょうし、佐賀県では人気があるのでしょう。しかし、その佐賀藩の礎を築いたはずの鍋島直茂についてはそれほどではありません。いや、信長の野望などをしていれば知っているでしょうが。ちなみに、以前私の父親(=まあまあの歴史ファン)に直茂のことをきいたところ「誰やねんそれ?」と言われました。

私がはじめて直茂について知ったのは信長の野望でした。ゲームでえらい役に立つから何となく気にいったので、それからなんとなく好きな戦国武将になりました。ほんで、直茂ってすごい人物じゃないかと思ったのは、中西豪『史伝-鍋島直茂』(学研M文庫)を読んだからです。この本では、直茂スゲー感がほんの少し出ているのですが、それでも直茂はゲームのパラメータ通りの人物だと分かったのです。

ところが、この本の他に、一般的な直茂の本があまりないようなのです。本書によると、直茂は、決して竜造寺から実権を簒奪したわけではないようです。そもそも直茂と竜造寺隆信とは義理の兄弟でしたし、隆信戦死後には彼が家臣団をまとめなければならない立場にありました。さらに秀吉の九州経営の思惑から、直茂への家督の委譲要請もありました。その後の関ヶ原戦役において家康へうまく立ち回ったおかげで鍋島氏佐賀藩(竜造寺との連合的な政権)の基礎がなったといえるのでしょう。

まあ、せっかく一部において佐賀に注目が集まっているのですから、この鍋島直茂について(山岡鉄舟の時に書いたように)中公新書あたりで出してほしい(鍋島直正-閑叟についての新書はあるのですが)。

(成城比丘太郎)




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