★★☆☆☆

牛家 (岩城裕明/角川ホラー文庫)

投稿日:2018年11月8日 更新日:

  • ゴミ屋敷の清掃員が体験する恐怖
  • リアルな出だし、シュールな結末
  • ゾンビ物「瓶人」収録。長さは同量。
  • オススメ度:★★☆☆☆

このところ、別の世界を覗きたいという欲求から、自分が詳しく知らない職業を扱ったホラーを探して読んでいる。この作品もその系譜の一つ、と言いたいところだが、思ってた内容とは大分違った。

(あらすじ)主人公(俺・コバさん)は、あるゴミ屋敷を彼女マリと一緒に目撃する。数年後、特殊清掃員として主人公は特殊清掃員としてそのゴミ屋敷を担当することになる。相棒は先輩のジンさんと新入りのコバ君。凄まじい様子ではあるが、順調に作業は進むかに見えたのだが、ゴミ屋敷の怪と夫婦の不幸が交錯して……(牛家)。ゾンビ化した父親と暮らす少年が、青年として成長するまでに経験する汚い大人の世界による悲哀(瓶人)。

表題作の出だしは好調だ。不気味なゴミ屋敷とその住人の姿が描かれた後、その清掃に当たる主人公の奮闘はなかなか興味深い。当然のようにその住人は亡くなっている訳で、ある種の「魔境」に突入する様は、好奇心をそそられる内容だ。ちょっとした冒険気分を味わえる。とはいえ、描写のディテールが甘いなと思うことも。

例えば、ゴミ屋敷につきものの「例の虫」について台詞では言及されるのだが、実際に詳しい描写はなく、もっとエキセントリックな生物が出てくる。この辺で読者は少し違和感を覚えるはず。取材が甘いなどと偉そうには言えないが、この辺の詰めが甘いのはもったいない。

しかし、後半に突入すると、実はそんな些細なことはどうでも良くなる。ネタバレはしないが、展開がリアル路線を離れ、幻想系に突入する。まあ幻想といっても悪夢そのもので、ご存知かどうか知らないがCyriak(スィリアック※)氏の動画のようなシュールかつグロテスクな様子が展開する。

賛否はあるだろうが、個人的にはあまり好みではない。心霊系でもないのだが、モヤモヤする。もっと明確なオチがある方が良かった。作風もど真ん中のモダンホラーを書こうとしたというよりは、後半のコメディ的な展開を、猟奇的描写でホラーに持ってきた感じ。グロい描写は多いのに、妙にコミカルなのである。個性的な作風とも言えるので、興味があればご一読を。

もう一つの中編「瓶人」も、その作風がまんま反映された作品で、フルーツと瓶に詰められ(?)ゾンビとして復活したロボットのような優しい父親と暮らす少年の苦悩……何を言っているのか分からないと思うが、とにかく、作品の概要を書くとこうなる。

少々ありきたりなゾンビものとは言え、こちらの方が力が抜けていて、読みやすい。表題作より作者の嗜好が明確に反映されているような気がする。ラノベ要素っぽいものまである。とは言え、やはり随所に感じるリアリティの喪失は、何らかのパロディのようだ。キングのように無茶な設定を剛腕の筆力で読ませるほどではない。だんだんこの作風に麻痺してきて楽しめるようにはなっては来るが、母親との関係など現実的に考えて「これはないな」と感じた。

ただ、ラストは明確なオチがあって、スプラッター風味のサスペンスドラマを見終わったような、やっぱり全てギャグだったと納得させられるような、何となくオモロ悲しいような、変に清々しい気分になる。こちらだけなら珍しいホラーとして★3にしたい。

長くもなく読みやすい文章なので、ホラーを読んで何とも言えない不思議な気分を味わいたい方にはオススメ。ちなみに生理的に嫌なグロさもあるのでご注意を。

(きうら)

※Cyriak……サイケデリックなPVで知る人ぞ知るクリエーター(電気グルーヴのPVも手掛けている)。以下、公式リンク。私は素晴らしくクリエイティブだと思うが、一応、閲覧注意。サムネイルがすでにヤバい。



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