3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★★☆☆

禍家(三津田信三/角川ホラー文庫)~紹介と感想、軽いネタばれ

投稿日:2017年8月14日 更新日:

  • 家と森にまつわる因縁。
  • 結構単純な怪異の連続だが、結構怖いです。
  • とにかく主人公の少年がスーパーなメンタルの持ち主。
  • おススメ度:★★★☆☆

多分、三津田信三を読むのはこれが初めてだと思います。「ホラーとミステリを融合させた独特の作風」と紹介文にある通り、ホラーを基調に、ミステリと少しのサスペンスを付け加えた、なかなかの面白さです。

本書は、主人公の「棟像貢太郎(12歳)」が、祖母とともに、引っ越してくるところからはじまります。貢太郎は、なぜか引っ越し先の町に既視感をおぼえ、家に不吉な予感を感じたり、不気味な森を恐がったり、住人の老人に奇妙なことを言われたりと、導入部分から、ホラーっぽい要素が満載です。

貢太郎は、新しい住居で、何かの気配を感じます。この家にまつわる恐怖というのは、栗本薫『家』でもそうでしたが、なかなかリアリティを感じます。私も幼少期に、夕方帰宅したら誰も家におらず、家族が帰ってくるまでの数時間、自分の部屋だけ明かりをつけて、薄暗い家の中で、じっとしていたあの時の怖さを思い出しました。屋外の町のざわめきを聞きながら、家には自分の他に誰かいるかもしれないと、そんな気配を感じていました(錯覚)。

貢太郎は、家だけでなく、町に鎮座まします森(個人が祀る鎮守の森)で恐怖体験もするのです。一人では対処できなくなった貢太郎は、町に住む同い年の「生川礼奈」に事情を話し、彼女と一緒に怪異の謎と、貢太郎の家にまつわるある因縁を探るのです。

後半にかけて、ホラーにミステリが加わり、最後はサスペンス風にもなります。ありがちな怪奇ネタだけで、これだけのホラーの雰囲気を書き上げる作者の力は、なかなかすごいです。とはいえ、解かれていないのではないかと思われる謎も残り、さらに、この貢太郎君が、小学生にしては余りにもスーパーなメンタルと、冷静な判断力と、論理的な思考力(これはいいのですが)を持っていて、そのあたりがご都合主義的な面として、少し残念な部分です。

(成城比丘太郎)



禍家 (角川ホラー文庫) [ 三津田信三 ]

-★★★☆☆
-, , ,

執筆者:

関連記事

人喰いの時代(山田正紀/ハルキ文庫)※ネタばれ余りせず

クラシックな探偵小説 と、見せかけての大落ちあり 不思議な読後感 おススメ:★★★☆☆ 著者は著名なSF作家兼ミステリ作家だが、例によって突発的鳥頭思考でこの本を読んだので、一切、そんなことは知らなか …

二階の王(名梁和泉/角川ホラー文庫)~紹介と感想、軽いネタばれ

二階に引きこもる兄の正体は? 元「ひきこもり」達だけに見える異形と化した人々 彼らは「悪因研」と称し、見えない悪と対峙するが……。 おススメ度:★★★☆☆ 旧サイトの「新刊を勝手に予想」というコーナー …

七夕の国(1)(岩明均/ビッグコミックス)

超能力と歴史がテーマの伝奇SFものというジャンル 「寄生獣」に比べると全体に緩い雰囲気 もちろん著者特有の人体欠損や非人間的な登場人物も おススメ度:★★★☆☆ 「寄生獣」「ヒストリエ」などで著名な岩 …

今月買った本を紹介する【2023年1月】〜「成城のコラムー93」

「コラム093」 1月に買った本について。 12年前に読んでいた本。 オススメ度:★★★☆☆ 【近況】 先週降り積もった雪は、今日になってもまだ白いまま、うちの家の裏に、うらみがましく残っております。 …

ドラゴンヘッド(1)-(10) 【完結】(望月峯太郎/ヤングマガジンコミックス)

世紀末漫画の傑作 最初の方はよく出来ている 収拾が付かなくなったのが残念 おススメ度:★★★☆☆ 1995年にコミックスの初版を出版しているリアルなディストピアものの漫画。当時は、けっこうブームになっ …

アーカイブ