3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★☆☆☆

結ぶ(皆川博子/創元推理文庫) ~あらましと感想、軽いネタバレ

投稿日:2017年5月28日 更新日:

  • 18の短編からなる幻想小説集。
  • 特に怖いところなし。
  • 幻想小説初心者向け。
  • おススメ度:★★☆☆☆

まず表題作の「結ぶ」だが、これはなんか思考実験のような短編。身体が縫われることから着想し、球体へと至るまでにどのようなイメージが湧いてくるか、その過程を小説にしたような、なんか(素人にもできる)マジックの裏側を見せられたようなかんじがした(悪い意味ではない)。球体に縫われていくところと、身体を刃物で薄く切り開き無限に身体が拡がっていく想像との対比は、少し面白かった。できればもうちょっと分量があればよかったが。

「湖底」は、ある画集に魅せられた「わたし」が、それに触発されて過去の光景を幻視する。見たことのないはずのfaxの文面が混信して、現実へ侵食した幻像に沈み込む。過去の「わたし」と今の「わたし」との混在。ホテルで出会えなかった男性との再会と自らの過去像は、湖の底に映った鏡像のごとく揺らめいて見えて、かなしい。どこか切ない一品。

その他は特にこれといって書くこともない短編が続くだけ。その中で、「空の果て」と「心臓売り」はまあまあ良かった。全体に怖いところはあまりなく、ホラーとしてはおススメするほどのものはなかった。個人的に胸に残るものもこれといってなかったが、ただ、読んでいる時、たまに小中学生時におぼえた感情(←名前が付けられない)がよみがえってきたのが、唯一良かった点。

本書は、今まで幻想小説の類を読んだことがない人や、小学生高学年になって児童書などに飽きた人向けの読み物としては、いいのではないかと思う。

(成城比丘太郎)

(編者注)二日続けて、本をススメない書評サイトというのは、アフェリエイトサイトとしての自覚を失っている気がする。まあいいか。面白くないものは面白くない。上の書評にある「たまに小中学生時におぼえた感情」を私なりに表現すると、「大人の感覚が理解できた気がする優越感」ではないだろうか。次は面白い本を紹介しようぞ!(きうら)


結ぶ [ 皆川博子 ]

-★★☆☆☆
-, ,

執筆者:

関連記事

深海のYrr〈中〉〈下〉(フランク・シェッツィング(著)、北川和代(訳)/ハヤカワ文庫)~概略と軽いネタバレ感想、先に〈上〉を

  海から異変が起こるSF系ディザスター小説 精密な科学的調査と緻密な人物的背景 しかし、どこか読みたい小説とは違う おススメ度:★★☆☆☆ この小説は非常に長い小説で、上・中・下巻があり、それぞれ5 …

ロード・オブ・ザ・リング 力の指輪 ~2話までの短評

やっちまったな! ゲーム・オブ・スローンズとロード・オブ・ザ・リングはジャンルが違う 簡単に言うとスターウォーズEP7を観た感じ おススメ度:★★☆☆☆ ロード・オブ・ザ・リング(指輪物語)の冠は必要 …

水に似た感情 (中島らも/集英社文庫)

ほぼ実話のTV制作ドキュメント 驚くほどの下品さと繊細さが混在 ちなみに躁病の時に半分書いたらしい おススメ度:★★☆☆☆ まず「中嶋らも」という作家の情報をどの程度知っているかで、この本の面白さが変 …

かわいそ笑(梨/イースト・プレス)核心的ネタバレあり※電子書籍版の感想・一応閲覧注意

変則的な読んだら呪われる系? メタフィクションを重ねるような感じ 怖くは無いが不気味ではあった おススメ度:★★☆☆☆ Amazonでの評価が高い。以下概要を引用。 「死んだ人のことはちゃんと可哀想に …

夏の滴(桐生祐狩/角川ホラー文庫)

少年少女の日常生活が壊れる系のホラー かなりのトンデモ結末 読むのを勧めるかどうかは非常に迷う おススメ度:★★☆☆☆ 本の帯に書いてある導入部の紹介を引用すると「藤山真介。徳田と河合、そして転校して …

アーカイブ