- 「死神」にまつわる凄惨な連作怪談
- 3つのエピソードがあるが最後はプロローグ的な短いもの
- かなり猟奇的な描写があるので注意
- おススメ度:★★★★★
長いお話なのと、前半・後半でカラーが変わるので2回に分けて紹介する「続巷説百物語」の後編。最初の「巷説百物語」と「前編」を読まれてないと、ほとんど意味が分からないと思うので、最初にこのページを開いた方は、上記二つの紹介をご覧いただきたい。
ここまで読まれた方には説明不要と思うが、これまでの物語はどちらかというと「必殺仕事人」よろしく、主人公たちは巧みに影に隠れて悪人たちの知られたくない悪行を暴き出し、時には人情味のある、時には恐ろしい裁定を下すという筋書きだった。そして、基本的に一話ずつで完全に完結していたのであるが、今回の後編で紹介する「船幽霊」「死神或いは七人みさき」「老人火」は連続したストーリーになっている。ただ、「老人火」は全体のエピローグ的存在で、実質的には「舟幽霊」「死神或いは七人みさき」が、一つの長編小説となっていると言っていい。ちなみに「船幽霊」に入る前に前作の「芝右衛門狸」のエピソードが挟まっているので、時系列的には少々ややこしい。
「船幽霊」は讃岐の国に足を踏み入れた考物の百介と山猫廻しのおぎんが藩を巻き込んだ大事件に巻き込まれるというお話で、これまで決して危ない目に合わなかった主人公達があわや……という立ち回りシーンが出てくるのが特徴的だ。さらに重要な登場人物として東雲右近(しののめうこん)という剣客が登場する。仕官の口を探して、ある老中から密命を受けるのだが、ひょんなことで上記の二人と行き会う。そして、物語は山奥に住む謎の集落の秘密を追いつつ、絶体絶命にの危機を大仕掛けで救うという内容だ。話の展開も派手で、ラストも少々強引だが大落ちがつく。
そして「死神或いは七人みさき」は200Pを超える長編で、内容も壮絶だ。のっけからかなり悲惨な展開になるのだが、ここから先は、何を書いてもネタバレになるので詳しくは書けない。概要は上記の藩全体を巻き込んだ、まさに「死神」の話となっている。このお話の猟奇性も飛びぬけていて、あまり思い出したくはない程のホラーな描写がある。続く「老人火」は哀切のある短いお話で、上記二つのお話とセットになっている。どちらにしても、ぐっと怖い話になっている。
これまで、どちらかというと登場人物の恨みや悲しみが原動力となっていた本シリーズだが、このお話はストレートに「絶対悪」的なものが描かれている。これは日本的な怪談としては結構珍しい。京極夏彦の考える「最凶」の存在とは何か? 海外で言えば悪魔となるのだろうか。そんな悪魔的キャラクターが登場する怖いお話、ぜひ、前作と合わせてじっくり読んでみて欲しい。
(きうら)