★★★☆☆

翳りゆく夏(赤井三尋/講談社) ~概要と感想、おススメ点など

投稿日:2017年5月10日 更新日:

  • 20年前の誘拐事件の謎を追う
  • 錯綜する人間関係をスピーディに
  • 意外性と引き替えに、ラストにも疑問も
  • おススメ度:★★★✩✩

(あらすじ)「誘拐犯の娘が新聞社の記者に内定」という「事件」をきっかけに、20年前の誘拐事件が再び動き出す。社命を受けたのは、今や閑職に追いやられた元敏腕記者・梶。犯人はなぜ、両親ではなく、病院をターゲットにしたのか。誘拐犯を父に持つ朝倉比呂子の運命は?

という非常に手堅いストーリーラインと、その期待を裏切らない地に足のついた展開をするドラマ。独特のリズムがあるが、重すぎず軽すぎない文体で、徐々に真実に近づいていく。他のミステリと比べて特段派手というわけではないが、読み進むには十分に興味深い事実が少しずつ明かされる。

登場人物全体にリアリティがあるのもプラス点。特に千代という武藤家のお手伝いさんがいい味を出している。彼女と比呂子が出会うシーンはある意味この小説を象徴している光景だといってもいいだろう。

ここまで上げ調子で書いてきたが、この小説の難しいところは、やはりその「堅実さ」と「リアリティ」にある。両方とももちろん、誉め言葉なのだが、すでに無数の先達の作品があふれかえる現代、その二つが「没個性」を呼び、他の作品に埋没させる要因となっている。

しかし、派手でトリッキーな作品があふれる現在、却って「安心して楽しめる」特異な存在と言えるかもしれないだろう。この辺、評価が難しいのだが、俗な言い方が、いわゆる良くできた「二時間ドラマ」を期待されるのであれば、十分に期待に応える一冊だろう。

(きうら)

翳りゆく夏【電子書籍】[ 赤井三尋 ]

-★★★☆☆
-, , ,

執筆者:

関連記事

神鳥―イビス(篠田節子/集英社)

「発狂する謎の絵」「過去の惨劇」などの魅力的な設定 個性的なキャラクター造形。好みが分かれる。 オチは賛否両論。文章は読みやすい。 おススメ度:★★★☆☆ 本作品の大筋は、古典的な怨念モノのプロットを …

「ゆるキャン△」の秋(成城比丘太郎のコラム-07)

「コラム」という名の穴埋め企画(三度目) 「ゆるキャン△7巻」から アニメに出てくる飯や、本屋のことなど おススメ度:★★★☆☆ 【はじめに】 10月に入り、私は強烈な秋の花粉症に悩まされていたのです …

ダーク・タワー1 ガンスリンガー (スティーブン・キング(著),‎ 風間賢二 (著)/新潮文庫)~あらましと感想

西部劇風のロードムービー風娯楽小説 ファンタジー要素が多数 キング作品の根幹となるシリーズ おススメ度:★★★☆☆ キング作品ではおなじみの長い前書きで書かれているが、この作品はJ.R.R.トールキン …

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ と ゴジラ(前編)【完全ネタバレ】

身に染み込んだ怪獣の記憶 ゴジラを巡る個人的な理由と最新作の感想 昭和と令和のゴジラは主張が反対 おススメ度: ★★★☆☆(ゴジラ キング・オブ・モンスターズ) ★★★★★(ゴジラ) 【前説・なぜ怪獣 …

残穢(小野不由美/新潮文庫)~読書メモ(011)&クロスレビュー

読書メモ(11) ドキュメンタリータッチですすむホラー 現代史の見取り図に沿って語られる おススメ度:★★★☆☆ あちこちのホラーサイトで「怖い」と紹介されていて(確か)、当ブログでもきうら氏が「久々 …

アーカイブ