★★☆☆☆

自殺について 他四篇 (ショウペンハウエル/岩波文庫)

投稿日:2017年5月20日 更新日:

  • 短い自殺への考察
  • 論調は自殺の賛美
  • 特に深い示唆はない
  • おススメ度:★★✩✩✩

ショウペンハウエル(アルトゥル・ショーペンハウアー)は、Wikipediaの受け売りで書くと、ドイツの哲学者。仏教精神そのものといえる思想と、インド哲学の精髄を明晰に語り尽くした思想家であり、その哲学は多くの哲学者、芸術家、作家に重要な影響を与え、生の哲学、実存主義の先駆と見ることもできる(Wiki)

自殺に関する論稿5篇を収める短編論文集。人生とは「裏切られた希望、挫折させられた目論見、それと気づいたときにはもう遅すぎる過ちの連続にほかならない」など、冷めた洞察を分かりやすい言葉で説明されている。

表題作だけに限れば、自殺が不当に貶められているというような趣旨が述べられており、あたかも自殺を賛美しているように見える。最後の最後に、こんな皮肉めいた言葉を引いている。

自殺はまた一種の実験(中略)しかしこの実験は手際が悪い、ーー何故というに、肝心の解答を聞き問るべきはずの意思の同一性を、この実験は殺してしまうのだから

私自身も死の影が過ぎることはよくあるが、やはり諸々の関係性がそれを押しとどめる。例えば、一週間前は、不眠の為に二週間まともに眠れず、それが原因で消化不良を起こし食事がとれず、不眠を原因とする目眩が激しく、かつ想像を絶する倦怠感が覆っていた。おまけに蕁麻疹を発症し、たまに寝付けても悪夢しか見ない。故郷の川を眺めつつ、身を投じれば「何もかも解決する」と、思わないでもなかった。

ところが、私の祖母の末期の言葉を聞いてそれは止めた。もう13年も経つが、当時痴呆が入り、施設に入所していた祖母が、レナードの朝のように、時折正気に戻り、こんなことを母に言ったらしい。

このような生き恥をさらすぐらいならいっそ死んでしまったほうがマシだと心から思う。しかし、それはだめだ。私が自殺することによって子孫に多大な迷惑がかかる。自殺者を家系から出すことは、その子孫に祟るからだ。だから、天寿を全うするまで、どんなにつらくても生きることにする。

私も幸か不幸か子孫を残してしまった。彼らに「死の呪い」をかけることはできない。

考えてみれば、死ぬくらいなら適当に生きればいいのである。今のモットーはこうだ。

1.生きる

2.目一杯やらない

3.目の前の課題に淡々と答える。

それでも幸せとは程遠いが、まあ、死ななくてよかった程度の感慨はある。くれぐれもこの本に感化されないように。

(きうら)


自殺について改版 [ アルトゥル・ショーペンハウアー ]

-★★☆☆☆
-,

執筆者:

関連記事

百鬼夜行 陽 鬼童 青鷺火 墓の火 青女房【電子百鬼夜行

京極夏彦好きのためだけの小節 それなりに面白いがオチはない 壮大なサーガの一部 おススメ度:★★☆☆☆ 前回、同作者の「ヒトでなし: 金剛界の章 (京極夏彦/新潮文庫)」を読んだ後、何となく、まだ読み …

日本〔論〕についての会話

死者と先祖の話 (山折哲雄/角川選書) 日本論(石川九楊/講談社選書メチエ) 日本と日本文化を規定するものとは 宗教観と日本語から見る日本論 どちらも中途半端なかんじです おススメ度:★★☆☆☆ 【登 …

世界の中心で、愛をさけぶ(片山恭一/小学館文庫) ~ベストセラーを読む

シンプルなラブストーリー 恐ろしく早く読める なぜ売れたのか、一応分析してみる おススメ度:★★☆☆☆ 久しぶりの「ベストセラーを読む」はずいぶん古い。2001年に発刊され、2003年に一気に売れたと …

えじきしょんを呼んではいけない (最東対地/角川ホラー文庫) ~ネタバレ気味注意

怪人系不条理(?)ホラー 設定は面白いが色々大雑把 許せるタイプのホラーファンに おススメ度:★★☆☆☆ ツッコミどころ満載という意味で、近年稀にみる怪作ではないかと思ったが、全体の構造が、先達である …

X‐ファイル―未来と闘え(クリス・カーター(著)、 エリザベス・ハンド(著)、 南山宏(翻訳)/角川文庫)

伝説の超常現象捜査官の映画版ノベライズ モルダーとスカリーが出てくるだけで満足 当時としては異常によくできたドラマだった おススメ度:★★☆☆☆ これもまた古い話になるが、テレビドラマである第1シーズ …

アーカイブ