★★☆☆☆

首都消失 (小松左京/ハルキ文庫)  ~概要と感想、かなりのネタバレ

投稿日:2017年5月22日 更新日:

  • タイトルが全てのがっかりSF小説
  • 首都は消失する、するが……
  • 読みたいテーマと微妙に違う
  • おススメ度:★★✩✩✩

(あらまし)首都圏に突如発生する正体不明の異変。都心を半径30㎞、高さ1000mにもなる巨大な雲が覆ってしまった。都心とは完全に通信や交通が遮断されてしまう。閉じ込められた人々の運命はどうなるのか。この異常事態に政府はどのような対応をするのか。第6回(1985年) 日本SF大賞受賞のディザスター小説。

はっきり言ってこの本を読むことはおススメしない。迂遠な表現をすると、痒い所に全く手が届かないまま小説が終わるからだ。分かりにくいのでネタバレ覚悟ではっきり書く。これから読もうと思う人は間にCMを挟むので、そのまま読み飛ばしてほしい。この小説の欠点は……


雲の正体が最後まで分からないことだ!

何なんだこのラストは。人がせっかく期待して長編小説に付き合ったのに「雲の中は謎に包まれているのであった」みたいな終わり方をするのは、ずるい。同じような設定のスティーブン・キングの「ミスト(闇の展覧会 霧 (Ama))」はちゃんと霧の説明と、霧が晴れた後の説明を明確に示している(それがいいかどうかはまた別の話)。こんなモヤモヤしたラストは、そうないと言っても過言ではない。

多方面で評価の高い小松左京氏だが、この作品を見る限り、はっきり言って私は全く評価していない。思わせぶりな描写ばかり重ねて、話の中心から逃げているように思える。もちろん、描きたかったのは謎の雲の正体ではなく、それに右往左往する社会と人間の群像だったのだろう。それはわかる。でも、文学作品じゃないんだから、ちゃんと落としてもらわないと読み手は大変困る。何を面白がっていいのかよくわからないのだ。

どうせ謎のまま終わらせるなら、いっそ霧は晴れず、どんどん広がっていくほうがまだ面白い。解決の糸口だけつかんだような状態で終わるのは、汚い言葉いえば無意味な美人局そのもの。この娼窟には、怖いお兄さんは出てこないが、美しいお姉さんもいない。誰もいない。

結局、お話も結論もこの小説の面白さも「霧の中」のまま。SF好きの方がいれば、後学のためにお勧めするくらいの作品だ。

(きうら)


首都消失(上)


首都消失(下)

-★★☆☆☆
-, , ,

執筆者:

関連記事

私が彼を殺した (東野 圭吾/講談社文庫)~あらましと感想、軽いネタバレ

毒殺した犯人を探るミステリ 類型的設定と「推理」中心の内容 ミステリという組立ブロックを組み合わせたよう おススメ度:★★☆☆☆ (あらまし)あまり特定の主人公を主役にしない東野圭吾にあって珍しいシリ …

川を覆う闇(桐生祐狩/角川ホラー文庫)

不潔と清潔とのたたかい とにかくお下劣ばんざい でも、文章(文体)は、まとも おススメ度:★★☆☆☆ 【まえおき】 一か月に15冊くらいの本を読んでいる。図書館で借りてきて部分的に読む(見る)ものを含 …

日出る国の工場(村上春樹・著/安西水丸・画/新潮文庫)

工場見学の文章とイラスト どこを切っても村上春樹 30年前のドキュメントで時代を感じる おススメ度:★★☆☆☆ 初版発行が1987年平凡社となっている。およそ30年前である(2018年現在)。そもそも …

実録怪異録 死に姓の陸 (西浦和也/竹書房ホラー文庫)

実話短編怪談集。メインタイトルは連作 堂に入った語り口で安定して読める 実話だと思うが、霊現象そのものには「?」 おススメ度:★★☆☆☆ こういうサイトを運営していると時々読みたくなる実話怪談シリーズ …

魔の聖域 (楢山芙二夫/角川ホラー文庫)~あらましと感想 、ややネタバレ

映画のスタントマンの事故死にまつわる怪異 イマイチ、何のホラーなのか分からない 昭和映画界の裏側描写は面白い おススメ度:★★☆☆☆ 「魔の聖域」と、抽象的なタイトルがついているが、内容は上記のような …

アーカイブ