- 読書メモ(063)
- 日本と世界の怪奇実話集
- なんか、なつかしさを感じる
- オススメ度:★★★☆☆
【怪奇実話集とは】
最近、2冊の「怪奇実話」に関するアンソロジーを読んだ。ひとつ目は、かの平井呈一が編訳した「世界怪奇実話集」で、これはなんと60年ぶりの復刊だという。
もうひとつは、現代を代表する怪奇アンソロジスト東雅夫による「日本怪奇実話」に関するもの。中身は明治末年から昭和初期にかけてのものです。
ところで、「怪奇実話」とは何かということですが、これはたぶん現代も盛んに行われている怪談や、実録もののホラーなんかに、通じるものだと思います。怪奇な実話とは実際にあった体の怪奇な話であり、また、奇っ怪な実話でもあるのでしょう。怖さと懐かしさが同居したような短編集でした。
【日本編】
・『日本怪奇実話集 亡者会』(創元推理文庫)
まず収められている田中貢太郎のものは、現代ものに翻案できそうなのもあるんじゃないかと思わせるような実録ものが多い印象。
その次の平山蘆江のものに関しては、なんとなく女性が非主体的に描かれたものが多いような気がする。恨みをもった幽霊として化けて出てくるのが女性という図式があって、これは江戸時代から踏襲したものもあるのだろうか。ちなみに、それだけではないのもありますが。
その他には、小泉八雲ファミリーの系譜をたどれるような構成があってよかった。また、佐藤春夫と稲垣足穂の連作?は今でいう事故物件怪談にあたるのかな。
懐かしいと思ったのは、狐や狸に化かされたという信念があることか。この時代にはさすがに狸が人をだますということを真剣に考えてはいないと思うけどね。化け猫ですら本書には出てこなかった(はず)くらいだから。どうなんだろ。以前、キツネとエンカウントしたけど、とくに何かだまくらかされそうとは全く思わなかったけど。
あと、欧米由来のものとおもわれるオカルティズムの影響も感じられてよかった。
【世界編】
・『世界怪奇実話集 屍衣の花嫁』(創元推理文庫)
こちらは、だいぶ昔の英国の実録もの怪奇譚。といっても、そのほとんどが幽霊屋敷に関するもの。だいたいが、似たような感じだけど、そこに懐かしさをおぼえてよい。ちょっと、平板なところもあるけど、後半部分はおもろかった。「魔のテーブル」とか「石切場の怪物」とか、あと「ベル・ウィッチ事件」とか。
【怖がらせた話】
以前、自分の(たいして怖くはない)恐怖体験を書きました。10年以上前に体験した、早朝の軽い山登りのときの話です。薄いもやに包まれた朝6時くらいの山頂で、老夫婦らしき影がベンチに座って食事をとっている光景が視界に入りました。それを見た瞬間、「あっ、これは見たらあかんやつや」と直感がはたらいて、すぐに踵を返しました。という話です。
ほんで、また別の日に同じ道を歩いていました。その日の朝はかなり濃い霧で、視界はかなり悪くて数メートル先しか見えない状態でした。そんななか歩いていると、前方から砂利を踏む大きな足音が聞こえてきました。そのとき、これは生きてる人間のものだなと思いました。そういうときの私の勘はするどくて、実際霧から現れたのは間違いなく生きてる50代くらいのおっさんでした。左の方へよれて、そちらに会釈すると、どうしたことかそのおっさんはこちらを見たとたん歩行を止めて後ずさりしました。そして、こちらをすごい目付きでにらんできたので、「なんやねん」と思いつつ、一応こちらも目を細めてにらんでおきました(視力が悪いので)。そんなこんなでちょっとした山登りも終え、帰宅して顔を洗おうと洗面所の鏡を見たときに、あのおっさんが何を見ていたのか判明しました。そうなんです、私の肩に・・・でなくて、私の相貌がまんま「こいつ、幽霊やん」と思えるほど血の気の失せたもののようなかんじだったのです。要は、霧から現れたどちらかというと色の白い私の顔を見て、あのおっさんが私を亡霊かなにかと、一瞬そう思ったのでしょう。という話でした。
(成城比丘太郎)