- 奇想天外なホラーサスペンスの完結編
- 住人500人が一瞬にして消失。その理由は?
- 少々強引だが、水準以上ではある。
- おススメ度:★★★☆☆
(あらすじ)前編からの続き。一瞬にして500人の住人が消えうせたと思われるアメリカの田舎町スノーフィールド。女医の姉と14歳の妹とという美人姉妹はそうとは知らず、その田舎町に帰ってくる。しかし、見つかるのは死体ばかり。二人はおびえつつも、隣町の保安官に救助を求める。見かけは愚鈍だが切れ者のブライスをはじめ、保安官たちが到着するが、あっという間に襲撃に合う。襲撃者に銃は無力。悪魔的な力を持つ襲撃者の正体は? 対抗する術はあるのか?
後編だけ読む人はいないと思うので、前編を読んで頂いた前提で感想を書く。全編を読んでいない人は、こちらをご覧ください。
妹へのセクハラシーンと、いけ好かない科学者チームがやってきたところで幕を閉じた上巻。下巻も上巻と同じく、読者目線で「見たいと思うシーン」のみを見せていく、ペーパーバックスタイル。思えば著者とよく比べられるスティーブン・キングもペーパーバックスタイルで、エロ・グロ描写に躊躇がないのが特徴だった。多少やり過ぎの感はあるとはいえ、この「必要なシーンはタブーであってもバンバン描く」姿勢は清々しい。作品の「品」にこだわるあまり、残酷描写に二の足を踏むなど、個人的には本末転倒も甚だしいと考えている。そもそも、肝心なシーンをぼやかせるくらいなら書かなければいいのだ。
そういう意味では、後半も絶好調。エロ要素は最低限に留め、ひたすら残酷シーンとついに正体を現したファントムとの壮絶な戦いが描かれる。読んでからのお楽しみということになるので、詳細には書かないが、敵の正体は当時(1980年代)の最新知識を活用し、極めて科学的に描写される。霊やモンスターに逃げなかったのは偉いと思うが、現代においては少々パンチ不足であるのは否めない。
そういった時代性を差し引いても、後半に出てくる考古学者や精鋭チーム、悪役の二人の人間など、少々扱いが雑だと感じるシーンもままある。前半は勢いで押し切ったが、後半はそうもいかず、微笑ましい気分で読むことになる。ただ、最後に誰が死ぬか分からない展開など、十分に読みごたえはあると思う。もっとも、ラストのノー天気さは実にアメリカらしく、いろんな意味で文化の違いを感じる。
絶対悪を求めるのは、実に一神教的世界観だと感じた。日本人はこういう悪役は求めない。先日紹介した「飛騨の怪談」に見られるように、悪役にも情を求める日本的怪談とは一線を画する。スティーブン・キングにも感じることだが、欧米人にとっては「敵は敵」なのであって理由は必要ないのだと実感した。
とにかく理屈抜きでホラーを楽しみたい方にはうってつけの一冊。そこら辺のエンタメ小説にはないノンストップ・サスペンスとしての面白さがある。後半の少々雑な展開に目をつむれれば、おススメのお話だ。
(きうら)