3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★★★★

ベルセルク 1(三浦建太郎/ヤングアニマルコミックス) ~ベルセルクの今と昔(前編)

投稿日:2017年6月26日 更新日:

  • 過酷な運命を背負った若者を描くファンタジー
  • エロ・グロ・ロリータなど必要と思えば何でも描く
  • 3巻~13巻は間違いなく傑作
  • おススメ度:★★★★★

(あらまし)人間を超えた存在から、ある運命によって常に狙われることになった戦士・ガッツ。相棒のパックと共に、逆に自分に仇為す存在を「狩る」狂戦士=ベルセルクとして、魔物たちにほぼ単身立ち向かっていく。毎回、絶対に勝てそうにない敵を相手に、超絶な執念と体力で立ち向かうガッツの姿が熱い。また、サブキャラクターも魅力的で、特に「黄金時代」の仲間との交流は非常に面白い。そして、他の追随を許さない圧倒的な画力と描き込み。この話が終わらない理由がよくわかる。

つい先日に最新刊39が発売されたこともあって、前編と後編に分けてベルセルク「今と昔」をご紹介したいと思う。本作は著者が読切作品がもとになっており、そこから話を広げ現在の形になっている。その面影は1巻~2巻に残っていて、この2巻だけを見ると、「普通のダークファンタジー」の域を超えていない。お話もそれほど印象的ではないし、絵も現在に比べれば粗さが残る。ただ、その容赦ない描写は最初から全開で「まさか死ぬはずのないキャラクター」があっさり死んだりする様に驚かされる。

そして、本領が発揮されるのは、主人公ガッツがなぜ、魔物たちを狩り続けることになったかを描く3巻から13巻までの物語。ここで、最初の普通のダークファンタジーのタッチから、リアリティ志向の青春ストーリーとも呼べる内容に激変する。その熱さといい、ストーリーのダイナミックな展開といい、容赦ない過酷な描写といい、まさに一皮むけて、傑作という呼び名に値する漫画に変わる。友情あり、恋愛あり、アクションあり、もちろん、スプラッター的な描写もあれば「エロ漫画」と呼ばれてもおかしく無いような性的描写もある。

私が大嫌いなのは、残酷なシーンを描いているにもかかわらず、表現を曖昧にすることだ。少年向け漫画などでよく見られるが、ストーリーはエグイのに、絵は直接描写を避ける(酷い怪我をしても、血が飛び散る絵だけを描くなど)。少年漫画でも、ドラゴンボールなどは、その辺はきちんと折り合いをつけて表現を工夫していた(結構直接的に描いていたが)。その点、ベルセルクは全く容赦しない。敵だろうが仲間だろうが死ぬときは、残酷に死ぬ。著者は大変だろうがそれが真の緊張感を生み、読者はハラハラする。物語作家なら誰だってお気に入りのキャラは殺したくないものだ。

つまり、ベルセルクの面白さはその緊張感に凝縮されている。

13巻までの一瞬たりとも気の抜けない展開には誰もが魅入られるだろう。そういう意味で、前半の評価としては★5つとした。ただし、これがその後の展開になると様相が変わってくる。絵はどんどん美しくなるのだが、ストーリー的には……。その辺は後編で語ってみたい。

余談だが、世界最長のファンタジー小説「グインサーガ」を書いた栗本薫を、面と向かってリスペクトしていた漫画家は、私の知る限り三浦建太郎氏だけだ。確か、栗本御大がご存命の時の対談を読んだ記憶がある。グインサーガも途中までは素晴らしいファンタジーなのだが……同じ轍を踏まないように願うばかりである。

(きうら)



(楽天)

-★★★★★
-, , , ,

執筆者:

関連記事

ドラゴンランス戦記 (1) (マーガレット・ワイス(著)、トレイシー・ヒックマン(著)、安田均(翻訳)/富士見文庫)

完成されたファンタジー娯楽大作 魅力的なキャラにスリリングな展開 あえて書けば、全てのラノベの原点的存在 おススメ度:★★★★★ こんな古い本(昭和62年初版)を引っ張り出して批評するサイトも今は少な …

シークレットレース(タイラーハミルトン/小学館文庫)

自転車レースの裏側、ドーピングを語るノンフィクション 偉大なチャンピオンの転落劇を生中しく語る 暴露本だが感動する。みんな必死なんだ。 おススメ度:★★★★☆ 自転車レース。今回は、競輪のことではない …

武装島田倉庫(椎名誠/新潮社)~あらすじとそれに関する軽いネタバレ、感想

崩壊後の世界で働く男のSF小説 短編7つで一つの小説になっている とにかくアツくて独特で魅力的。大好きです! おススメ度:★★★★★(普通の人には★★★~★★★★くらい?) 個人的なことで恐縮だが、こ …

ルパン三世 カリオストロの城(宮崎駿/アニメ映画) ~ネタバレ感想・観てない人は注意すること

情熱に満ちた宮崎駿監督の最高傑作 ナウシカより、シータより、さつきより、キキより、ラナより可愛いヒロイン(異論は認める) これが「ルパン三世じゃない」というモンキー・パンチの抗議も分かる おススメ度: …

あしたのジョー 〜力石戦後から最終話まで(梶原一騎・原作/ちばてつや・画/講談社)

不器用なジョーの生き様に号泣必至 ラスト2巻の鬼気迫る緊張感 デッサンどうこうではなく漫画が上手い オススメ度:★★★★★ (あらまし)宿命のライバルと正々堂々と渡り合った結果、ジョーは力石に敗れる。 …

アーカイブ