- 軽く読めるが、中身は結構重い。
- 身近にある、気をつけるべき病気。
- 海外渡航する人は特に注意。
- おススメ度:★★★★☆
感染症というのは、人間誰しもかかるし、いつ発症してもおかしくない病気です。(2017年1月現在)「地球上から根絶できた感染症は天然痘だけ」というように、ペストから結核やノロウイルスまで、今でも世界中で患者が出ています。だから大事なのは、感染症という「うつる病気」に対して、きちんとした知識を持つことでしょう。最近は病気の情報はネットなどで簡単に手に入りますが、本書のような、ためになって軽く読める本を読んでみてもいいのではないでしょうか。この本には感染源から、感染ルート、病状の進行具合までが詳しく書かれていて、その内容の客観性は、現実的だけに結構怖いです。
多くの病原体を媒介するものに蚊があげられます。近年有名になった「ジカウイルス」や「デング熱」や、古くからある「マラリア」など、蚊が媒介する感染症はいくつもあります。「ジカウイルス」のブラジルでの発生は、ワールドカップ(2014年)による人の移動が大きな要因といわれています。「ジカウイルスの予防ワクチンはまだ未開発」で「ウイルスに効く薬もまだない」という状況で、日本でもオリンピック時に気をつけなければならないでしょう。また、「デング熱」は、2014年に日本で70年ぶりに流行しました。これのおそろしいところは、二度目以降の感染でおこる「デング出血熱」だそうです。
私が一番おそろしいのは、「狂犬病」でしょう。幼少期、この病名を聞いた私は、「狂犬病」という字面から、人間が凶暴な犬のようにワンワン吠えまくる姿を妄想して怖がったものです。実際の「狂犬病」はヒトを含めてほとんどの哺乳類が感染し、人が一度発症してしまうと「ほぼ全員死亡する」というほんまにおそろしいものです。日本では一応根絶されましたが、外国では未だ野生・半野生を含めて多くの動物が感染しているので、海外渡航する人は特に気をつけるべきだそうです。ワクチン接種はしておいた方が良いとのことです。それにしても、「狂犬病」発症後のプロセスはおそろしいです。
その他にも、災害時に気をつけるべき「破傷風」、「結核」、「麻疹」、マダニによる「重症熱性血小板減少症」(こわそうな病名)、「ノロウイルス感染症」まで、身近な感染症の危険性と予防法が書かれています。自分がもしかしたらこれらの感染症にかかったのではないかという恐れがある場合、怖くて眠れないかもしれません。しかし、不必要に怖がるものでもないです。普段から正しい知識を持って対処すればよいのです。特に病名はよく聞くものの、その実態はよく分からない場合が多いですから。
(成城比丘太郎)
(編者注)これ系の「病気もの」はある種独特の怖さがある。怪談と違って、自分が「こちら側」に立たされるからだ。私が知っている感染症で印象深いのは、日本住血吸虫(Wiki)のはなし。これはある種感動的なエピソードなので、良ければこちらもどうぞ。