3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★★☆☆

暗い暗い森の中で(ルース・ウェア[著]・宇佐川晶子[訳]/ハヤカワ文庫) ~感想と軽いネタバレ

投稿日:2017年6月25日 更新日:

  • あるパーティーの夜に起こった事件。
  • 一人の女性の視点から解かれていく謎。
  • 人間関係(特に女性同士のもの)の怖さ。
  • おススメ度:★★★☆☆

ストーリーは、作家である「わたし」こと「ノーラ」のもとに、一通のメールが届いたところから始まる。その内容は、学生時代の友人「クレア」の「ヘン・パーティー(=女性の独身さよならパーティー)」に、「ノーラ」を招待するものだった。「ノーラ」は、いぶかしみながらも、同じく友人の「ニーナ」とともに、パーティーに参加する。そこに待ち受けていたものは……。

パーティーの会場は、「クレア」の友人である「フロ」が用意した、人里離れた森の奥にある別荘。なぜそんな所でパーティーが開催されるのか。別荘周辺はなぜか携帯電話が通じない、(通信するには)隔絶された場所で、一応ミステリーでいうところの閉鎖された環境に準じたものができあがっている。とはいえ、別荘には固定電話もあるし、森から出れば携帯も通じる。そういった外部と通信するのが少々面倒なところが、この作品の肝になる部分だろうか。

パーティーに集まったのは、「ノーラ」を含めて6人。癖のありそうなもの、そうでないものと、色々。6人の職業は、それぞれ作家に医者に弁護士に脚本家などというもので、この作品の舞台がイギリスなので分からないが、日本だったら、ハイソな連中の集まりというところだろうか。集まった6人の間には、パーティーのゲームや会話などを通して、徐々に関係のきしみが生じる。この辺りの描写には、どこか無理矢理の感はあるが、いい緊迫感はある。

叙述は、「ノーラ」の一人称ですすめられる。彼女の2つの状態が交互に語られ、読者は、彼女の置かれている状態と並行して、物語の概要をつかむとともに、事件の核心へと導かれる。だからだろうか、読んでいる途中で、ある程度の真相にせまれるのではないかと思われる。「クレア」は作家なのだが、人への依存心が高いようなところがあり、また真相に繋がることをかくしているため、なんだか人物造形としてはフワフワしている。しかし、読むにあたってはそれほど気になるものではないです。

たいして怖いところはないので、おススメ度は高くはないですが、読みやすい文体で、さくさく読みすすめられるので、新幹線の車内などでの暇つぶしには丁度良い一冊です。

(成城比丘太郎)



暗い暗い森の中で (ハヤカワ文庫NV) [ ルース・ウェア ]

-★★★☆☆
-, , ,

執筆者:

関連記事

山岡鉄舟と月岡芳年について《2》

   「山岡鉄舟と月岡芳年《1》」のつづき 山岡鉄舟の人物像について はたして山岡鉄舟はすごい人物なのか!? おススメ度:★★★☆☆ 【登場人物】 《神》と《私》 【鉄舟と芳年について】 《私》…(無 …

読書について【3】(成城比丘太郎のコラム-13)

コラム(013) 小説家の書評本を読む だいたいにおいて健全な内容 おススメ度:★★★☆☆ 【はじめに書評本を読むとは】 この5月は、暑さもあったのですが、それ以外にもけっこうしんどいことがあったので …

地下鉄道(コルソン・ホワイトヘッド、谷崎由依〔訳〕/早川書房)

黒人少女コーラが奴隷のくびきから「逃げる」 逃亡奴隷を追う奴隷狩り人の執拗さと凶悪さ 19世紀アメリカ南部にはびこる奴隷制を、虚実をまじえて描く おススメ度:★★★☆☆ 【あらすじ】 ジョージアのとあ …

ヴェトナム戦場の殺人 (デイヴィッド・K・ハーフォード(著)、松本 剛史(翻訳)/扶桑社ミステリー)

ヴェトナム戦争の米軍の内部犯罪物 実にまっとうなミステリ ヴェトナムへの掘り下げ度は浅い おススメ度:★★★☆☆ 霊能者や呪いに少々食傷気味な気分で、タイトルだけで選んだ一冊。ミステリは数あれど、ヴェ …

櫛の火(古井由吉/新潮文庫)

死んだ女性を裡に秘めつつ、生きる女性と交わる 『行隠れ』の発展的変奏 古井文学的には過渡期にあたるものか おススメ度:★★★☆☆ 【はじめに】 本書は、古井由吉が出した単行本としては、『杳子・妻隠(過 …

アーカイブ