3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★☆☆☆

私は人を殺したことがある。: パラノーマルちゃんねる-怖い話・不思議な話まとめ(パラノーマルちゃんねる管理人/Kindle版)

投稿日:2017年9月7日 更新日:

  • 掲示板の書き込みのまとめ
  • 50篇の短編怪談集の体裁
  • 怪談はどこから生まれるか?
  • おススメ度:★★☆☆☆

本作はパラノーマルチャンネルという2チャンネルの書き込みのまとめサイトを運営者が、その書き込みの中から50篇を選んで、本の体裁にしたもの(Kindle版)で、いわゆる自主出版に近い。随分とセンセーショナルなタイトルなので、検索すると割と上位に表示されるが、中身は完全に掲示板の書き込みであるので、話の展開やオチはもとより、文体もバラバラで、果たして一つの作品として評価していいのかどうか、少し躊躇があった。

例えば、いくつかタイトルを挙げてみよう。「【不気味】踊る友人」、「ドッペルゲンガーを見てからお婆ちゃんがおかしくなった」、「クモババア」、「【心霊ちょっといい話】お稲荷様」などバラバラである。そうかと思えば、「放火殺人」「隣の奴がとにかくうるさい」「不気味な電話対応など普通の犯罪じゃないか」というタイトルから、「【笑える霊体験】幽霊にもいろんな奴がいる」というユーモアを題材にしていたり、良く分からない選び方だが、それだけ元の話が滅茶苦茶だということだ。

ただ、やっぱり取り上げてみようと思ったのは、今、有名になっている怪談や妖怪の話にしても、元は人のうわさ話や勘違いなどから発生しているものも多いと思う。そういう意味でいうと、これは怪談の「素材」を読んでいることになり、そういう意味では興味深い。

例えばわかりやすいので「クモババア」を例にとってみると、

なんとそれは、クモみたいに四つん這いで歩く婆さんだった。服装は農作業の時に着るような服で、頭に手ぬぐいを巻いている。

という描写があって、そのあとは、消息不明のお婆さんがいたという話と、その時怖かった、という印象が語られているだけである。正直に言うと、50篇最後まで読んだが、ほとんど内容を覚えていない。程度の差こそあれ、「現象」そのものはショッキングな題材が多いが、起承転結で言えば「起」か「結」しかないような内容なので、致し方ない。元が多数の人に読んでもらおうと思って推敲を重ねたような話ではないので、これは非難しないが、全体的にこの調子なので、必要以上に期待して読むとがっかりするだろう。

ただ、やはり怪談の発生源としては興味深いので、上記の「クモババア」にしても、キャラクターに肉付けをしていけば、ちょっとした短編怪談にはできるはず。また、作家的な作為的な部分がないので、却って「リアル」に感じるということはあるだろう。

とはいえ、しょせん素人の怪談風ゴシップなので、正直、管理人のサイトで元の怖い話を読む方がいいのではないかと、身も蓋もないことを考えてしまった。こうして考えてみると、人はとかく「恐怖」に支配されやすいものだと実感する。Kindle Unlimitedで読めるので、興味があれば暇つぶしにどうぞ、という程度の内容である。

※成城比丘太郎氏が所用のため、きうらの連投となっています。成城氏の批評を期待されていた方はあしからずご了承を。

 

(きうら)



-★★☆☆☆
-,

執筆者:

関連記事

夏の滴(桐生祐狩/角川ホラー文庫)

少年少女の日常生活が壊れる系のホラー かなりのトンデモ結末 読むのを勧めるかどうかは非常に迷う おススメ度:★★☆☆☆ 本の帯に書いてある導入部の紹介を引用すると「藤山真介。徳田と河合、そして転校して …

バトルロワイヤル(高見広春/幻冬舎)

当時斬新だった「中学生同士の殺し合い」がテーマ キャラが類型的で単調な展開 ごく普通の娯楽小説 おススメ度:★★☆☆☆ 出版当時は国会で話題に上がったという問題作……のはずだが、中身はごくごく普通の娯 …

かわいそ笑(梨/イースト・プレス)核心的ネタバレあり※電子書籍版の感想・一応閲覧注意

変則的な読んだら呪われる系? メタフィクションを重ねるような感じ 怖くは無いが不気味ではあった おススメ度:★★☆☆☆ Amazonでの評価が高い。以下概要を引用。 「死んだ人のことはちゃんと可哀想に …

いきはよいよいかえりはこわい (鎌田敏夫/ハルキ・ホラー文庫)~あらすじとそれに関する軽いネタバレ、感想

セックス描写の多い、オカルト的サスペンス 謎の理由が不可解 内容と真逆の純愛もの おススメ度:★★☆☆☆ お話の導入はありがちだが面白い。広告代理店に勤めている由紀恵という主人公は、都心に格安マンショ …

世界の果て(中村文則/文春文庫) ~あらましと感想、軽いネタばれ

暗くて生硬な文章。 ちょっとしたユーモア(のある作品)もある。 面白い本を読みたい人には、おススメしない。 おススメ度:★★☆☆☆ 中村文則の作品を最初に読んだのは、芥川賞受賞作『土の中の子供』で、一 …

アーカイブ