★★☆☆☆

ハサミ男(殊能将之/講談社文庫)

投稿日:2016年12月11日 更新日:

  • ミステリ寄りのトリッキーなサスペンス
  • 残酷描写が苦手な方も大丈夫
  • 面白いが癖が強く、万人には薦められない
  • おススメ度:★★☆☆☆

少女の首にハサミを突き立てるという「ハサミ男」による残虐な連続殺人が起こった。物語の主人公はこの「ハサミ男」が、自分の犯罪を真似た殺人に偶然出くわすことから始まる。「ハサミ男」は、はからずも真犯人の捜査に乗り出すが……。大まかなストーリーは上記の通りで、終盤にドンデン返しが仕込んである。面白いし引き込まれるが、これは賛否両論あると思う。

この作品は冒頭から連続殺人犯が主役であることが知らされる。それもどうやら少々精神を病んでいる感じである。殺人犯が自分の殺人を真似た殺人に出くわすというのは面白いアイデアだと思うが、弊害として感情移入しにくいのである。話の引き込み方がうまいので、投げ出したくなったりはしないが、やや没入度が落ちてしまう。

タイトルがショッキングだが、思ったほど残酷でもなく、ジャンルとしては正統派のミステリに当たると思う。注意して読んでいると、後でなるほどと思うことも多く、そういう意味では非常に良く出来ているし、警察の面々など魅力的なキャラクターも多い。ただ、それらが好きかどうかと聞かれると微妙だ。

作中に他のミステリの引用が多く登場するのだが、こういうのは引用だと分からないように引用するのが上品な手法だと思う。作中、あからさまに「え、こういうの知らないんですか」と登場人物がほかの人に話すが、それを知らない読者は間接的に馬鹿にされているような気もする。そもそも推理小説に他の推理小説の小ネタが登場するのは、いわゆる内輪ネタと呼ばれるものではないのかという疑問も感じる。

本作は作者のトリックに挑戦したいというミステリファンの方にはお薦め、逆にホラーサスペンスとして楽しみたい方には微妙なところ、といった感じだ。

(きうら)

-★★☆☆☆
-, ,

執筆者:

関連記事

危ないお仕事!(北尾トロ/新潮文庫)

実際にあるマイナーな仕事の取材・体験記 軽いインタビューや体験談がほとんど わざわざ読むほどのものでもないが、興味があれば。 おススメ度:★★☆☆☆ ここ一ヵ月ばかり、ちょっと幽霊・亡霊・モンスターも …

怪奇博物館(赤川次郎/角川文庫) ~あらましと感想、軽いネタバレ

非常に軽い内容のホラー風短編 大学教授と助手のコンビ連作と独立した短編 肩透かし、あるいは息抜き? おススメ度:★★☆☆☆ (あらまし)ドラキュラや謎の箱、呪いなどにテーマを取った7つの短編を収録。同 …

厭魅の如き憑くもの (三津田信三/講談社文庫)

憑き物をテーマにした戦後間もない架空の村の怪異 探偵役が登場する正しいミステリの構造 固有名詞に違和感があるが読みやすい おススメ度:★★☆☆☆ 戦後の昭和の架空の村が舞台で、谺呀治(かがち)家と神櫛 …

えじきしょんを呼んではいけない (最東対地/角川ホラー文庫) ~ネタバレ気味注意

怪人系不条理(?)ホラー 設定は面白いが色々大雑把 許せるタイプのホラーファンに おススメ度:★★☆☆☆ ツッコミどころ満載という意味で、近年稀にみる怪作ではないかと思ったが、全体の構造が、先達である …

恐怖箱 袋小路(神沼三平太/竹の子書房)~概要と軽いネタバレ、感想 ※Kindle Unlimited対応

実話の短編エピソードを100話収録 玉石混交の内容で、軽い話も多い バラエティ豊か。気軽な読書に おススメ度:★★☆☆☆ 百物語(参加者が順番に怖い話を披露する会)を開催している著者が実際に聞いた話を …

アーカイブ