★★☆☆☆

地図にない谷(藤本泉/徳間文庫)

投稿日:2016年12月13日 更新日:

  • 謎の風土病がテーマの伝奇ミステリー
  • 恋愛・歴史要素あり
  • 謎解きはあっさり。
  • おススメ度:★★☆☆

その谷に住む住人は「いきなり病」という正体不明の風土病によって、次々と死んでいく。その原因はいったい何なのか? 大学の夏休みに実家に帰った主人公・帯金多江は自らの故郷に潜む謎に挑む、という魅力的な設定の伝奇ミステリー。

文章は読みやすく、謎解きもストレートで、グロテスクな描写も控えめ。発表が1982年なので、大学生の描写がいささか古く感じるが、そもそも舞台となる鬼兵衛谷はかなり古風な風習が残る地域として描写されるのであまり気にならない。しかし、物語の焦点となる風土病の謎解きはあっさりしており、主人公の恋愛関係の描写が多い部分が、物足りなく感じる。

惚れた腫れたはどうでもいいので、もっと風土病の核心に迫ってほしい、というのが正直なところ。読み終えると「その部分」が不可欠なのも理解できるのだが……。女性作家の描く恋愛観がよく出ているので、女性が読むとまた違った印象を持つかもしれない。

ちなみに本書は1971年の第17回江戸川乱歩賞最終候補作とのことだが、当時タブー視されていた「部落問題」がテーマだったため、受賞を逃したらしい。また、1989年にフランスで消息不明となっているとのこと(Wikipediaより)。興味深い。

(きうら)


地図にない谷【電子書籍】[ 藤本泉 ]


-★★☆☆☆
-, ,

執筆者:

関連記事

夏の滴(桐生祐狩/角川ホラー文庫)

少年少女の日常生活が壊れる系のホラー かなりのトンデモ結末 読むのを勧めるかどうかは非常に迷う おススメ度:★★☆☆☆ 本の帯に書いてある導入部の紹介を引用すると「藤山真介。徳田と河合、そして転校して …

怪奇博物館(赤川次郎/角川文庫) ~あらましと感想、軽いネタバレ

非常に軽い内容のホラー風短編 大学教授と助手のコンビ連作と独立した短編 肩透かし、あるいは息抜き? おススメ度:★★☆☆☆ (あらまし)ドラキュラや謎の箱、呪いなどにテーマを取った7つの短編を収録。同 …

魔の聖域 (楢山芙二夫/角川ホラー文庫)~あらましと感想 、ややネタバレ

映画のスタントマンの事故死にまつわる怪異 イマイチ、何のホラーなのか分からない 昭和映画界の裏側描写は面白い おススメ度:★★☆☆☆ 「魔の聖域」と、抽象的なタイトルがついているが、内容は上記のような …

エス(鈴木光司/角川ホラー文庫) 【ネタバレ全開】

「貞子」にまつわるアナザーストーリー 粗が多すぎて最後は本を投げたくなる 怖くはありません。 オススメ度:★★☆☆☆ 作者が鈴木光司で、本の裏に次のようなあおりがある以上、リングの関連書であるのは分か …

プロメテウス(リドリー・スコット監督)~あらましと感想、散々なネタバレ評価

エイリアンの前日譚(のような)映画 初代の荘厳さはなく、ハチャメチャな内容 エイリアンシリーズを見て爆笑するとは思わなかった…… おススメ度:★★☆☆☆ 普段、一部の例外を除き、世間の時間の流れとは、 …

アーカイブ