★★★☆☆

あくむ(井上夢人/集英社)※電子書籍版

投稿日:2016年12月14日 更新日:

  • 悪夢をテーマにした短編集
  • 興味深い設定で文章も読みやすい
  • 話のオチには物足りなさを感じる
  • おススメ度:★★★☆☆

目が覚めると、全身が動かず、おまけに目も見えない。医者の説明によると、全身複雑骨折で、失明までしているという。自分でも事故にあった記憶はある。しかし、本当にそんな大怪我なのだろうか。痛みは感じないし、どうもグルグル巻きにされた包帯の隙間から、明かりが見える気がする。それに、ここはどう見ても病院とは思えない。そもそも、この男は本当に医者なのか?(ブラックライト)。

と、いう興味深い設定から始まる一編のほか、盗聴に取り憑かれた男や自称「吸血鬼」の物語など、日常と非日常を行き来する不思議な物語がこの「あくむ」には五編収められている。テーマはもちろん「悪夢」で、表紙裏には「ホラーストーリー」と紹介されるが、どちらかというとサイコ・サスペンスだと思う。

設定も面白くスラスラ読める小説だが、僕は非常に不満に感じる点がある。冒頭紹介したような思わず引き込まれる出だしは各話共通しているが、オチが全部同じに思えるのだ。詳しく書くと興が削がれるが、すでに「あくむ」というタイトルからもネタばれしているような気もする。

せっかくの面白い設定なので、もう一ひねりして意外なオチをつけて欲しいとも思うう。ただ、無理やり奇抜な結末を用意していないので、全体の読み口は悪くない。この辺は好みによるだろう。そういえば、阿刀田高氏(Wikiリンク)の作風を思い出す部分もある。

(きうら)


あくむ【電子書籍】[ 井上夢人 ]


-★★★☆☆
-, ,

執筆者:

関連記事

現代百物語 因果 (岩井志麻子/角川ホラー文庫)

2ページ完結の短編ホラー99話 密度の濃い一味違う短編ホラー 恐怖よりも悪意を感じる作風 おススメ度:★★★☆☆ このブログでも良く取り上げている「本当にあった怖い話」系の本だが、今回は、あの「ぼっけ …

乱歩と正史(内田隆三/講談社選書メチエ)

乱歩について言及されているのが、ほとんど。 横溝(作品)にも最後の方で触れています。 乱歩と横溝が直面した、戦争に対する探偵小説の行方。 おススメ度:★★★☆☆ 江戸川乱歩と横溝正史という、戦前・戦後 …

MASK 東京駅おもてうら交番・堀北恵平 (内藤了/角川ホラー文庫) ~ややネタバレ

新人婦警のほのぼの事件簿(?) とはいえ、猟奇殺人を扱っている 都会の孤独がテーマか。読みやすい。 おススメ度:★★★☆☆ タイトルにある堀北恵平は「ほりきたけっぺい」と読むのだが、女性の新人警察官だ …

古井由吉「木曜日に」を読む

円陣を組む女たち(古井由吉/中公文庫) 古井由吉の処女作「木曜日に」を読んでみる。 はじめの頃から「古井由吉」は「古井由吉」だった。 分明と不分明をかきわけながら確かめる存在のありどころ。 おススメ度 …

リアル王様ゲーム~女子高生.com (しろいちじく/竹書房文庫) ~ややネタバレ気味

「真面目な」サスペンスミステリ 時代を感じる設定(2010年) 面白いような、恥ずかしいような…… おススメ度:★★★☆☆ なんか、ゴメン……基本的に読む本を選ぶときは、内容はあまり確認せず、タイトル …

アーカイブ