★★★★☆

恐怖箱 怪医(雨宮淳司/竹書房文庫)

投稿日:2016年12月16日 更新日:

  • 医療にまつわる実話系怪談集
  • 変化に富んだ内容で読み応えあり
  • 抑えた文章で読みやすい
  • おススメ度:★★★★☆

実際に医療現場に携わった著者による実話系怪談集だが、よくあるこの手の怪談集より語り口がアレンジされており、非常に読みやすい内容。基本は伝文調であるが、一人称で語られるエピソードもあり、読み手を飽きさせない。また、話の長さも長短さまざまで、途中に息抜き的な小話を挟むなど単なるエピソードの羅列でないところもいい。

内容をいくつか紹介すると「ヒラメ」と呼ばれる少女と美しい友人の関りを描く「ディプロピア」、炭鉱で働く父親を持った少年のある思い出「正露丸」、精神病棟のある患者の歌に関するエピソードを描く「ローレライ」、さらに穏やかな精神科医が徐々に変貌してく恐怖をじっくり描く「回廊」など、設定や内容も多種多様だ。

「ヒラメ」や「ローレライ」は奇妙で悲しい後味があって秀逸。浮浪者をテーマにした話も2編あり、特に「饂飩」と題されたエピソードが面白かった。興を削ぐので詳細は省くが、福本伸行氏の漫画「カイジ」を想起させるような味わいがあった。

グロテスクな描写も所々あって生理的に「くる」場面も多かったが、適度に抑制されており、悪趣味というほどではない。この手の怪談集が好みであれば、読んで損はないだろう。
ちなみに、2016年12月現在、何かと話題の「Kindle Unlimited」にも対応しているので、AmazonPrime会員の方は無料で読むことができる。

(きうら)


恐怖箱 怪医【電子書籍】[ 雨宮淳司 ]


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