★★★★☆

嗤う伊右衛門 (京極夏彦/角川文庫)

投稿日:2016年12月29日 更新日:

  • 有名な四谷怪談を京極夏彦風にリブート
  • 元ネタが有名なので意外性がある設定
  • 怖いというより非常に美しい物語
  • おススメ度:★★★★☆

有名な「四谷怪談」を京極夏彦が独自の解釈を加えて、再構築した作品。映画風に言うと、リメイクというよりリブートという風になるのではないか。

小説の設定はよく知られているは四谷怪談(醜い顔のお岩が夫に災いを為す)なのだが、その動機や展開はかなりオリジナルとは違う。元ネタが人間の醜さゆえの悲劇を語ったものとすれば、本作は人間の美しさ故に悲劇に至るという構図で、いわば真逆だ。よく知っている話だけに、逆に話の展開に意外性を感じて面白い。

作品の文体はこれぞ京極夏彦といった内容で、少々堅めの文章だが読みやすい。京極堂シリーズなどが好みであれば、全く違和感がないだろう。読後感も恐ろしいというよりは、非常に悲しい。繊細で美しい作品だ。

他にも「番町皿屋敷」を扱った「数えずの井戸」、「復讐奇談安積沼」をもとにした「覘き小平次」もあるが、このシリーズは総じて質が高い。興味があればこの2冊もお勧めしたい。

Amazon:
嗤う伊右衛門 (角川文庫)
楽天:
嗤う伊右衛門 [ 京極夏彦 ]

-★★★★☆
-, ,

執筆者:

関連記事

エルフランドの王女(ロード・ダンセイニ〔著〕、原葵〔訳〕/沖積舎)

ダンセイニの傑作ファンタジー 人間の世界に隣り合う、もうひとつの世界がある 魔の国から見る人間世界 おススメ度:★★★★☆ 本書は、1924年発表の傑作ファンタジーで、この度復刊されました。「ファンタ …

ピアノ・レッスン(ジェーン・カンピオン監督) ~あらましと感想

驚愕するほど美しい情景と音楽 脊髄を突き抜けるエロス 愛を問う残酷な物語 おススメ度:★★★★✩ (あらまし)舞台は19世紀半ば。主人公の未亡人エイダは娘とともに、荒ぶる海を隔てた野蛮な土地へと嫁いで …

引き潮(R・L・スティーヴンスン&ロイド・オズボーン[著]、駒月雅子[訳]/国書刊行会)~あらすじと感想

タヒチにくすぶる三人組。 海に出た三人組のとある計画。 ある島で彼らが出会う強大な人物。 おススメ度:★★★★☆ 著者のスティーヴンスンは、先日紹介した『ジーキル博士とハイド氏』の作者で、ロイド・オズ …

江戸の刑罰(石井良助/吉川弘文館) ~内容の紹介と軽いネタバレ

江戸の刑罰と牢屋に関する、古典的名著。 処刑の記述や、牢屋内でのドキュメントは結構おそろしい。 刑の執行や牢屋内の取り決めは、かなり細かい。 おススメ度:★★★★☆ 著者は、「日本法制史」の研究者で、 …

マイケル・ムーアの世界侵略のススメ(字幕版)

世界侵略という名の明るい社会派ドキュメント 楽しく観られるが耳が痛い いつものマイケル・ムーアの作風 おススメ度:★★★★☆ マイケル・ムーア監督と言えば、最新作「華氏119」が最近公開された。どうい …

アーカイブ