3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★★★☆

人体模型の夜 (中島らも/集英社文庫)

投稿日:2016年12月31日 更新日:

  • ユーモアのある作風が特徴のホラー短編集
  • 豊富なアイデアで読んでいて飽きない
  • オチが滑ることもあるが、よくできた話も多い
  • おススメ度:★★★★☆

人体のパーツをテーマに18の短編を集めホラー短編集。住人が誰も働かない南国の楽園の恐ろしい秘密を描く「セルフィネの血」、趣味が盗聴でその為に引っ越しを繰り返す男が遭遇した恐怖の体験「耳飢え」、金利で生活している暇人の<人面瘡>評論家が関わってしまったある男とのやり取りを描く「膝」等々、バラエティ豊かな内容となっている。

本作が通り一遍の短編集と違うのは、単純に恐怖を狙って書かれているものばかりではなく、どこかユーモアがあるところだろう。現代的な正統派怪談である上記の「耳飢え」以外にも、時に幻想的に、時にバカバカしく思えるエピソードが楽しめるのは中島らもならでは。一見突飛な設定でも「そんなこともあるかも」と思わされるのは、著者の波乱万丈な人生経験から生まれたものと思われる。

きちんとオチが付けられているのも、体験談を集めた怪談集とは一味違うところだ。短いエピソードも多いので、最初は物足りなく感じるかもしれないが、読み進めるにつれ、先が気になって止まらなくなる。ただし、グロテスクな描写も多いので、その辺は注意が必要だ。

個人的には最後の一行が素晴らしい「貴子の胃袋」のエピソードがお気に入り。ぜひ、過激な環境保護団体のメンバーに読ませてやりたい。

人体模型の夜 (集英社文庫)
人体模型の夜 [ 中島らも ]

-★★★★☆
-, ,

執筆者:

関連記事

下妻物語(嶽本野ばら/小学館)〜あらすじと軽いネタバレ、感想

ど田舎のロリータとヤンキーの友情 露悪的でユーモア満載 残酷さを笑いに昇華 オススメ度:★★★★☆ (あらすじ)ロリータファッションに魅力された高校二年生の桃子はダメ親父の失敗のせいで茨城県の下妻の祖 …

江戸病草紙(立川昭二/ちくま学芸文庫)~読書メモ(50)

読書メモ(050) 「近世の病気と医療」 病が江戸の人々の暮らしに何をもたらしたのか 個人的おもしろさ:★★★★☆ 【江戸の人々の暮らし本を読む】 最近、『江戸入門』(山本博文〔監修〕、河出書房新社) …

千と千尋の神隠し(宮崎駿/スタジオジブリ) ~あらすじと軽いネタバレと怖さの構造

いわずと知れた摩訶不思議な和風ファンタジーの傑作 ホラー要素満載で悪意しか感じない展開 しかし「超」天才の限界を感じる作品 おススメ度:★★★★✩ 「君の名は」や「アナ雪」や「タイタニック」を足蹴にす …

巷説百物語(京極夏彦/角川文庫)~あらましと感想、軽いネタバレ

人工怪談とでも言うべき怪奇短編集 江戸の世を舞台に悪人を非合法(妖怪的?)に罰する 著者の博識ぶりが発揮されているが、衒学的に過ぎず読みやすい おススメ度:★★★★☆ 著者の京極夏彦氏の著作は本サイト …

黒い家(貴志裕介/角川ホラー文庫)

「やっぱり生きた人間が一番怖い」をたっぷり楽しめる リアルな設定と抑えた文章 スリリングな展開で抜群の没入感 おススメ度:★★★★☆(20210913も同様) 保険会社に支払査定主任として勤める主人公 …

アーカイブ