★★★☆☆

六番目の小夜子(恩田陸/新潮文庫)

投稿日:2017年1月7日 更新日:

  • ファンタジー要素のある青春小説
  • 類型的なキャラクター設定だが展開が早くて上手い
  • 読みやすい文体で内容と併せ軽い読書向き
  • おススメ度:★★★☆☆

恩田陸のデビュー作となる「六番目の小夜子」は、ジャンルとしては青春小説・ジュブナイル小説だが、当初はファンタジーノベルとして刊行されていた。確かに、ある種のファンタジー要素が含まれていて、最後まで読むと納得できる。

導入部は、とある高校にやってきた美少女転校生、その高校には奇妙なゲームが受け継がれており、それは、3年に一度、サヨコと呼ばれる謎の存在が選ばれるというものだった……と、これだけではよく分からないが、高校3年生の1年間を通じ、青春時代特有の喜びや苛立ち、もどかしさが盛り込まれている。

読み始めた当初は、たいへん否定的な印象を持った。何しろ美少女転校生に、天性の秀才である主人公、爽やかなスポーツマンの友人、ひがみっぽいいかにもな役回りのクラスメイトなど、あまりに型通りの人物造形だったからだ。また、青春小説特有の「恥ずかしい」感じも少しあって、ヒネたホラーファンには厳しいものがある。

ただ伏線をあまり引っ張らないのは好感が持てるし、一つひとつのエピソードに山場があって飽きずに一気に最後まで読み通せる。特に、学園祭の描写が良く、この部分は不気味で印象に残る。また、一見ミステリーや青春小説の形を借りながら、ジャンル小説に囚われない不思議な雰囲気が漂っている。

とはいえ、未消化のまま終わる伏線もあったりし、不満点がないわけではないが、普段このサイトで紹介しているような血生臭い怪談に飽きたら一読をお勧めしたい。

(きうら)


六番目の小夜子 [ 恩田陸 ]


-★★★☆☆
-, ,

執筆者:

関連記事

ぼぎわんが、来る(澤村伊智/角川ホラー文庫)

正統派の化け物系ホラー 視点の転換は新鮮 ただし、後半は半ばマンガ…… おススメ度:★★★☆☆ 「映画化決定! 全選考委員が絶賛した第22回日本ホラー小説大賞受賞作!」という華々しいキャッチコピーもあ …

声優(森川智之/岩波新書)~読書メモ(010)※長編のため本編記事として

読書メモ(10) 「声の職人」が伝える声優の極意 著者本人の経歴を綴る おススメ度:★★★☆☆ 本書の著者である森川智之は、現役の声優であるとともに、個人事務所社長として声優のマネジメントや声優志望者 …

アニメ研究入門【応用編】(小山昌宏〔他〕/現代書館)

「アニメを究める11のコツ」 いろんな視点からアニメをみる 今期(2019春)のアニメ感想も おススメ度:★★★☆☆ 【本書のタイトルについて】 まず本書についてです。この本には前編があるようですが、 …

最後から二番目の真実(P・K・ディック[著]、佐藤龍雄[訳]/創元SF文庫)

世界を二分する勢力による戦争の行方とは。 地下に移り住んだ人々に隠された真実。 主要人物数人のドラマ。 おススメ度:★★★☆☆ フィリップ・K・ディックは日本でよく読まれています。最近読んだ『フィリッ …

百器徒然袋 風 (京極夏彦/講談社文庫)

百鬼夜行シリーズの外伝・主要キャラの榎木津礼二郎が主人公 平凡な設計士・本島の視点で描かれる「ギャグ」ミステリー 本編を知っている読者「には」楽しく読めるだろう おススメ度:★★★☆☆ 「姑獲鳥の夏」 …

アーカイブ