★★★★☆

火車(宮部みゆき/新潮社)

投稿日:2017年1月8日 更新日:

  • カードローン破産がテーマの本格サスペンス
  • 時代設定は古くなったがテーマは不変
  • 無駄のない緻密な文章と展開
  • おススメ度:★★★★☆

今更といえば余りに今更だが、本書を読み終えて「これぞ本物のサスペンス小説」という思いがこみ上げてきた。クレジットカードが作れないことをきっかけに失踪した女性を追って、細かな手がかりを手繰り寄せて真実にいたる道程がなぜこんなに面白いのか。無駄のない展開で、到底登れないと思っていた山に着実に登っていくような快感があった。血肉の通った人物の描写も見事。

物語のテーマはクレジットカード・ローン破産の悲惨さとその「日常性」。約20年以上前の作品なので、時代設定が古くなってしまっているが、今も誰かが確実につまづいているローン・クレジットの罠がリアルに描かれている。私も車をローンで買った経験があるが、とにかく毎月の固定費が増える息苦しさというのは独特のものだ。生活してみるとよく分かる。

サスペンス=読者の不安感や緊張を煽るものであるとすれば、このジャンルのど真ん中に位置する作品。ミステリに本格ミステリという呼び名があるが、これはまさしく本格サスペンスと呼べるだろう。

(きうら)


火車 [ 宮部みゆき ]

-★★★★☆
-, ,

執筆者:

関連記事

Q&A(恩田陸/幻冬社)

タイトル通り「質問」と「答え」だけで構成される小説 正体不明の大惨事が多数の視点から描かれる オチは弱いがゾッとする恐怖を味わえる おススメ度:★★★★☆ 作者のデビュー作「六番目の小夜子」に続いての …

クリムゾンの迷宮 (貴志裕介/角川文庫) ~簡単なあらすじと感想

隔離された舞台での頭脳戦を描くサバイバルホラー 非常にゲームを意識した展開。結末に物足りなさも 痛い描写も多数あるので、苦手な方は注意 おススメ度:★★★★☆ 表紙の写真にあるようなまるで火星のような …

月岡芳年 妖怪百物語(月岡芳年・日野原健司+渡邉晃[著]/青幻舎)

芳年の初期から晩年までの作品を集める。 妖怪が書かれたものを中心に。 コミカルなものから端正なものまで。 おススメ度:★★★★☆ 月岡芳年(wikipedia)は、幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師 …

黒い家(貴志裕介/角川ホラー文庫)

「やっぱり生きた人間が一番怖い」をたっぷり楽しめる リアルな設定と抑えた文章 スリリングな展開で抜群の没入感 おススメ度:★★★★☆ 保険会社に支払査定主任として勤める主人公とその顧客である不気味な登 …

多和田葉子をおすすめしてみる(成城比丘太郎のコラム-08)

「コラム」という名のおすすめ記事 多和田葉子作品の中で、最初に読むにはどれがいいか 最新作『穴あきエフの初恋祭り』についても おススメ度:★★★★☆ 【はじめに】 先日、多和田葉子の『献灯使』(過去記 …

アーカイブ