★★★☆☆

蟹工船(小林多喜二/新潮文庫)

投稿日:2017年1月14日 更新日:

  • 経済社会の恐怖を描くホラーとして読める文学
  • 労働者の凄まじい絶望感を描く
  • 後半の展開が性急に感じるが深いテーマ性
  • おススメ度:★★★☆☆

ご存知の通り小林多喜二と言えば「プロレタリア文学の代表者」として紹介される著名な作家だ。今回「蟹工船」を読んでみたのは「労働をテーマにしたサバイバル劇と読めるのでは?」と思ったためだった。

その予想通り、登場人物が感じる凄まじい絶望感は、やはりある種の恐怖小説と言える。小説としては導入から途中までは面白かったが、ラストが急に展開しすぎたようには思う。とはいえ、故郷で食いはぐれた貧しい労働者が、不気味な「蟹工船」に乗り込み、過酷な労働に斃れていく様子が鮮やかに描かれてる。

もちろん、プロレタリア文学としての背景も無視することはできず、思想的な部分を抜きにしても、考えさせられる部分が多々ある。「労働とは本当に苦痛なのか」「誰のために、何の為に働くのか」といった、社会人なら一度はぶつかる疑問に対して、ある種の回答も示されている。

以前に紹介した「野火」もそうだが、「文学」という括りに拘らなければ結構面白い小説だ。登場人物に感情移入できないのは辛いが、深く印象に残る一作。こんな時代だからこそ、凍えるような北の海に浮かぶ蟹工船に乗船する気持ちで、一読してみてはどうだろうか。

(きうら)


蟹工船/党生活者新装改版 [ 小林多喜二 ]


-★★★☆☆
-, ,

執筆者:

関連記事

夜の夢見の川(中村融・編/創元推理文庫) ~あらましと感想、軽いネタバレ

12編の「奇妙な物語」。 ホラー要素もあるが、どこかとらえどころのない話。 翻訳ものに向かない人には、あわないかも。 おススメ度:★★★☆☆ 『麻酔』(クリストファー・ファウラー)…歯科治療にきた「サ …

オペラ座の怪人(ガストン・ルルー、平岡敦〔訳〕/光文社古典新訳文庫)

リのオペラ座を舞台にした憎しみと愛の劇 怪人の境遇に同情できるか 恐怖譚の中にひそむ滑稽さ おススメ度:★★★☆☆ 【簡単なあらすじ】 オペラ座に怪人(ファントム)が出没するという目撃情報が流れだした …

でえれえ、やっちもねえ (岩井志麻子/角川ホラー文庫)※ほぼネタバレ無し

あの作品のまさかの続編⁉︎ うーん、いつもの岩井志麻子節 何となく気持ちわるい おススメ度:★★★☆☆ 「ぼっけえ、きょうてえ」はJホラー史に残る強烈な不気味さと鋭さを備えた傑作だと思う。未だに岡山弁 …

殺人鬼-覚醒篇 (綾辻行人/角川文庫)

タイトル通りの残虐スプラッター・ミステリ オチは意外だが、少々わかりにくい 残酷描写が苦手な方は読まない方がよいだろう おススメ度:★★★☆☆ 著名なミステリ作家である綾辻行人が仕掛けるスプラッター・ …

湖上の回廊(森水陽一郎/Kindle版)

不気味な色調で始まる謎の多い物語 ミステリ調で始まるが、幻想私小説風に変化する まあ、何というかスッキリしない おススメ度:★★★☆☆ この本、出だしは素晴らしく怪奇的に始まるのである。何しろ主人公の …

アーカイブ