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13階段(高野和明/講談社)

投稿日:2017年1月25日 更新日:

  • スリリングな展開と深いテーマ性
  • 受刑者と元刑務官という新鮮なコンビ
  • 予備知識なしで読むのが最適
  • おススメ度:★★★★★

無実の罪で死刑が迫っている受刑者を救う為に、あることから殺人に及んでしまった青年と刑務官が奔走する。事件の真相を探るスリリングな展開に、日本の死刑制度や受刑者たちの苦悩が織り込まれ重厚なドラマが展開。きっちり娯楽作品でありながらテーマ性もあり、かなり読ませる一冊だ。

映画にもなっているのが、そういうものは観ずに、予備知識なく小説を読んだほうがいいと思う。何よりお話が面白い。3ヶ月の期限付きの犯人探しという要素に、元殺人犯と刑務官という斬新なコンビの設定が秀逸だ。同じ内容でもいきなり刑事が出てくれば興ざめだが、その絶妙な設定が興味を引く。

「人が人を裁く」という重いテーマにも踏み込んでおり、しかも、その場面が単なる説明ではなく、登場人物の過去として実にリアルに書かれている。ここだけでも十分面白い。作者が参照した資料がきっちり小説として昇華されており、興がそがれることもない。その辺も上手いなあと思う。

知らない世界を覗く快感、興味を引っ張る主人公達の「過去」、意外な展開を見せる捜査状況といった要素でほとんどだれずに最後まで引っ張ってくれる。文章の硬さもこの内容に相応しいものだ。終盤の展開が力技過ぎる気もするが、読んでいる間は気にならない。ラストは賛否両論あるかもしれないが、自分は満足できた。不満があるとすれば色んな「強引さ」かもしれないが、娯楽作品としては文句なし。

総じて、パズルのような推理小説でもなく、バリバリの社会派作品でもなく、下品なおふざけも無く、才能が鼻につくでもない稀に見る傑作娯楽作品だ。久しぶりに内容にも読後感にも満足できる一冊だった。こういう本に次々出合えれば本当に幸せだ。

もちろん、解せないシーンもあるにはあるが(終盤の種明かし部分や「偶然」の多発)、整合性よりも面白さを取った結果だと見た。映画の評価はイマイチだが、何となく分かる気がする。

(きうら)


13階段 [ 高野和明 ]


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