3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★★☆☆

鳩笛草―燔祭・朽ちてゆくまで(宮部みゆき/光文社) ~簡単なあらすじとレビュー

投稿日:2017年2月3日 更新日:

  • 超能力を持った女性をテーマにした3つの物語
  • ジャンルはSFサスペンスだが、十分なリアリティ
  • 語り口の巧みさで読みやすい小説
  • おススメ度:★★★☆☆

本作品では特殊な能力を持った3人の女性の物語が描かれている。死んだ両親が残したビデオから自分に特殊な力があったことを知る「朽ちてゆくまで」、パイロキネシス(火を発生させることのできる能力)を持った女性の復讐譚「燔祭」、他人の心が読める女性刑事の苦悩を描く「鳩笛草」。

作品紹介に「傑作推理小説」と書かれているが、全く推理要素がない。現代を舞台にしたSFサスペンスと言ったところではないだろうか。図らずも超能力を持ってしまった3人の女性の数奇な運命が哀しさたっぷりに描かれていて、広義ではホラーの要素もちょこっと入っている。

宮部氏の作品は、以前「レベル7」「魔術はささやく」「かまいたち」などを読んだが、微妙なリアリティと悲劇性が自分に合わず、どうもスッキリしない読後感だった。しかしながら、魅かれる要素も多く、今回の作品も設定の面白さは抜群だと思う。

本作は超能力をテーマにしているが、いずれも前半でたっぷり感情移入させておいて、後半で悲劇(あるいはちょっと切ない展開)に持っていく。前半の導入部分が巧みなので、超能力を扱っていても違和感が余りないのは流石だ。また、2作目の燔祭(はんさい)は、長編「クロスファイア」につながる作品らしく、女性と主役の男性との心理描写がスリリングだ。

総じて、SFとしてのアイデアはありふれているが、語りの巧みさで楽しませるタイプの小説で、読みやすさは抜群だ。どれも短編なので物足りなさはあるが残酷度も低く、これはこれで十分楽しめる作品集だと思う。

(きうら)


鳩笛草 [ 宮部みゆき ]


-★★★☆☆
-, , ,

執筆者:

関連記事

道元「典座教訓」(藤井宗哲〔訳・解説〕/ビギナーズ日本の思想)

禅寺の食事係の僧である典座(てんぞ)について 食事による身体と心の涵養 精進料理と言ってもヴァラエティは豊富 おススメ度:★★★☆☆ 生きることにおいて最も必要なのが食事をとることなのは言うまでもない …

乱歩と正史(内田隆三/講談社選書メチエ)

乱歩について言及されているのが、ほとんど。 横溝(作品)にも最後の方で触れています。 乱歩と横溝が直面した、戦争に対する探偵小説の行方。 おススメ度:★★★☆☆ 江戸川乱歩と横溝正史という、戦前・戦後 …

入門 現代物理学 素粒子から宇宙までの不思議に挑む (中公新書)

タイトルを見てガクッと来ましたね? 物理学の外観をわかりやすく解説 が、高速解説過ぎて「なるほど分からん」状態 おススメ度に:★★★☆☆ 本ブログの読者の方には興味がないと思うのだが、殺伐としたホラー …

2月の読書【2023年2月】〜「成城のコラム(95)」

「コラム095」 2月に買って読んだ本。 2月の競馬。 オススメ度:★★★☆☆ 【2月のこと】 今回の投稿は、2月最後の記事になるようですので、2月のまとめみたいなことを日常雑記風に書きます。 この2 …

隣の不安、目前の恐怖(アンソロジー/双葉文庫)

「日本推理作家協会賞受賞作家短編集」 隣人や家族における、不安や恐怖または異変 まあまあのおもしろさ おススメ度:★★★☆☆ アンソロジー(異なる作家の作品をテーマ別などでまとめたもの)を読むおもしろ …

アーカイブ