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★★★☆☆

七夕の国(1)(岩明均/ビッグコミックス)

投稿日:2017年2月19日 更新日:

  • 超能力と歴史がテーマの伝奇SFものというジャンル
  • 「寄生獣」に比べると全体に緩い雰囲気
  • もちろん著者特有の人体欠損や非人間的な登場人物も
  • おススメ度:★★★☆☆

「寄生獣」「ヒストリエ」などで著名な岩明均氏の超能力をテーマにしたコミック。当時、衝撃を受けた傑作「寄生獣」の次に連載された作品なので、期待度は大変高かった。超能力そのものは、よくある素材ながら、歴史ミステリーや田舎の風俗、大学での生活や謎の美少女まで登場して、実に捻りの効いた作品だ。

導入部は、あえて伏せるが意表を突くシーンから始まる。そして、少しだけ超能力が使える平凡な南丸(ナン丸)は、行方不明の大学教授・丸神の行方を探すために、故郷(出自のある古い里)に帰る。二人は同郷である共通点があるのだが、そこでは正体不明の猟奇殺人が起きていた……と、いったストーリー。

導入部はともかく、メインとなるナン丸を中心としたストーリーは「寄生獣」などに比べると、ずっと緩い感じで、読んだ当時は少々肩透かしを食らった感じだった。ただし、岩明氏の歴史の知識や、おそらく人体欠損に対するこだわりはこの1巻でも既に発揮されており、全4巻で完結した現在では「佳作」として評価されているようだ。けっこう直接的な残酷なシーンも登場するので、苦手な方はご注意を。個人的には、ヒロインの女の子が可愛くて、このコミックの雰囲気によく合っている。

この後のストーリーは、ある意味予想通り、ある意味あさっての方向に展開していくので、1巻が面白ければそのまま、次の巻も読まれてみてはいかがかと思う。全体の評価は★3.5位で少々微妙だが、独特の味がある作品なので「寄生獣」ほど力を入れずに楽しまれるのが最適だと思う。

(きうら)


七夕の国(1)【電子書籍】[ 岩明均 ]


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