★★★★☆

茄子(1) (黒田硫黄/アフタヌーンコミックス) ~映画「茄子 アンダルシアの夏」を含む感想、軽いネタバレ

投稿日:2017年3月22日 更新日:

  • 「怖い本」ではないがどことなく不気味な日常漫画系
  • 映画「茄子~アンダルシアの夏」の原作
  • 非常にクセのある作風。つげ義春的天才
  • おススメ度:★★★★☆

今回もホラーというか直接的に怖い本ではないので、怖い本を読みたい方には趣旨と反して申し訳ない。正直に言うと、暇になったので、アフェリエイトでちょっと儲けてやろうと思って書いていたが、今のところ収入はないし、ちょっと好き勝手やっても別に怒られないかなと、言うところだ。無理やりこじつければ、だいたい怖い話になるし。
この漫画は、あの宮崎駿氏の右腕とも呼ばれる「高坂希太郎(Wiki)」が監督・脚本・作画監督を務めた「茄子 アンダルシアの夏(Amazon)」の原作である「アンダルシアの夏(全編)(後編)」を含む連作もある短編集。ただ、自転車レースに関係があるのは、「アンダルシアの夏」だけで、他は余りやる気のない人々が、ちょっとだけ非日常的な会話をするだけという「不思議な日常系マンガ」になっている。

「アンダルシアの夏」については後述するとして、それ以外のお話は、ちょっとだけ普通と違う軽い恋愛や会話等の話で「3人」「2人」などはちょっと言葉に出来ない怖さを感じる時がある。最後の「ランチボックス」は、社会的な落伍者の若い男女の恋のようなちがうような、そんなやりとりが出てくる。すべての話に茄子が登場するので、題名が「茄子」となっている。
この漫画は一言で言うと非常に味のある漫画だ。ちなみに同感の方も多いと思うが、作者はある種の「天才」で、最大公約数的な漫画は描かないので、宮崎駿氏ほどの知名度はないが、宮崎駿氏もファンと公言する知る人ぞ知る「天才漫画家」の一人だ。

「アンダルシアの夏」
皆さんはロードレースというのをご存じだろうか? 要は自転車の国際レースだが、日本では野球やサッカーのような知名度はなく、知らない人も多い。ここで書くと長くなるので、詳しくは「ロードレース(Wikipedia)」を読んでください。

この「アンダルシアの夏」は、原作もアニメも全員本物の「ロードレース/自転車好き」だ。なぜかというと、私自身もツールド・フランス、ジロ・デ・イタリア、ブエルタ・ア・エスパーニャという世界三大レースを毎年観ているし、ロードバイクも時々乗っているそこそこの自転車好きだから、良くわかる。この漫画/アニメは「本当に好き」ではないと書けない要素が満載。自転車に興味があって勉強して描いたのではない。本物だ。

この話は上記のブエルタ・ア・エスパーニャの一部分を舞台に、無名の選手の活躍を描く短編だ。短い話の中に、自転車レースの面白さ、複雑な人間関係、愛と憎悪、夢と希望、厳しさや虚しさなどが濃密に描かれている。自転車レースの知識があればより楽しめるが、なくても十分面白いお話だ。この話だけでも読んでみて欲しい。

そして、アニメ版の「茄子 アンダルシアの夏」も間違いなく傑作アニメ。監督も自転車好きなので、一切の嘘やごまかしがない。作画もジブリ風(制作はマッドハウス)。これで面白くないはずがない。47分の短いアニメだが、上記の漫画の面白さに、さらにディティールを追加・強化している。作画も美しく、スペインの様子が良く伝わってくる。レースの実況・解説も本物の解説者を起用したりしている。偉そうなことを言わせてもらうと、本物のレースと同じ面白い展開のレースが描かれている。

関係ないが、ロードバイクは車社会からすると、嫌われ者だ。中途半端に速い、信号守らない、危ない、気取ってる、変な格好をしている等々。でも、真のロードバイクファンは、車の多い所は避けるし、信号も守る。運転に注意するし、変な格好は「頭を守る」「速く走る」ために必要な制服なのだ。それだけは、言っておきたい。

脱線しまくりだが、最後のエンディングテーマが故・忌野清志郎氏が「自動車ショー歌(Wiki)」を替え歌にした「自転車ショー歌(Wiki)」を歌っていて、これが本当に泣ける。私は忌野清志郎氏の大ファンではないが、それでも彼の生きざまには惚れるし、いい歌を歌っている偉大な人だ。そして、彼もまた「ロードバイク好き」なのだ。昔、テレビで全国を走る映像を見たことがあるが、本当に紳士だった。彼の早世を悼まずにはいられない。

とにかく、マンガでもアニメでもどちらでもいいので、ぜひ、一度、読んでみて欲しい。怖い本ではないので、★4にしたが、5や6でもいいくらいの傑作だ。

(きうら)

追記:マンガの最終ページのラスト「働かないで生きていけないかなー」「無理じゃん?」という会話が最高。


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