★★★★☆

三毛猫ホームズの推理(赤川次郎/角川文庫)〜あらすじと軽いネタバレ、感想

投稿日:2017年4月20日 更新日:

  • 気の弱い刑事と三毛猫が密室殺人に取り組む
  • 軽妙な文章、抜群の読みやすさ
  • 落ちは意外とヘビー
  • オススメ度:★★★★☆

最早、伝説となりつつある赤川次郎の最も著名なシリーズの第1作。初めて読んだのは中一のころ。世の中に推理小説というジャンルがあり、それが「けっこう面白い」ことを最初に私に教えてくれた一冊。しかしオチは重いぞ。

(あらすじ)血を見ると貧血を起こすダメ刑事・片山義太郎は、ある大学で売春グループの捜査を命じられる。しかし、事件は起こり、片山刑事は愛猫となるホームズと出会う。そして事件は更に複雑に展開していく。

当時、余りの軽妙な文章に世のブンダンの皆さんは著者を馬鹿にしたが、読者は馬鹿ではなかった。スラスラ読めて面白い「我輩は猫である」が存在するとしても、まさか推理小説に猫が探偵役で出てくるとは、という意外性。

再読して感じるのは読みやすい文体やプロットの裏で展開される余りに寂しい出会いと別れ。特にラスト、いつも片山を明るく支えるあの人の秘密。中学生にはちょっとヘビーな読後感だったろう。

だが、その毒気こそ、このシリーズを支える元となったのだ。甘いだけのお菓子なら食べたくはない。甘さの中の複雑な苦味。無知蒙昧な中一も、理解不能な感情、喜びと悲しみが同時にやってくる「あれ」を感じて、著者の「幽霊列車(Ama)」を買いに走るのであった……。

こんな重い話を軽く飲み込ませるとは、カルーアミルクの様な恐ろしい一冊。時代設定は古いが、ぜひその後で効いてくる「毒気」に触れてみてはどうだろう?

(きうら)

三毛猫ホームズの推理 [ 赤川次郎 ]


-★★★★☆
-, ,

執筆者:

関連記事

千霊一霊物語(アレクサンドル・デュマ、前山悠〔訳〕/光文社古典新訳文庫)

「語り手」デュマによる「枠物語」 殺人事件から始まる怪奇譚の披露 まさに19世紀オカルティズムの潮流 おススメ度:★★★★☆ 【あらすじ】 時は19世紀フランス。語り手のデュマは20代の劇作家。彼はあ …

魔界水滸伝(栗本薫/小学館)

クトゥルー神話をモチーフにした壮大な伝奇小説 ホラー要素もあるが能力バトル物としても楽しめる 古さはあるが面白さは一級品 おススメ度:★★★★☆ 今でこそラヴクラフトのクトゥルー神話を扱った小説や漫画 …

古井由吉自撰作品(一)(古井由吉/河出書房新社)

初期作品では個人的に一番好きな小説である『行隠れ』を読む。 死者と生きる者が、一人の若者に重なりあう。 一つの死が家族のありようを浮かびあがらせる。 おススメ度:★★★★☆ 【はじめに】 近年出版され …

新装版 蚤と爆弾 (吉村昭/文春文庫)

いわゆる731部隊の細菌兵器についての「小説」 真にDemoniacな内容 終始冷静な視点・単純なヒューマニズムを描かない おススメ度:★★★★☆ 読書中、なぜか頭の中にDemonという単語が浮かんで …

淫売婦・死屍(しかばね)を食う男(葉山嘉樹/ゴマブックス) ~あらましと感想、軽いネタバレ

幻想とホラーの混じった短編。 少し作り物めいているが、妙に後に残る。 夏の夜のお供にどうぞ。 おススメ度:★★★★☆ 『淫売婦』は、ある男の体験談。事実なのか幻想なのか分からないという、なんだか覚束な …

アーカイブ