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Another(アナザー)(水島努[監督]・P.A.WORKS[制作]/TVアニメシリーズ) ~あらすじと感想、軽いネタバレ

投稿日:2017年7月19日 更新日:

  • 綾辻行人原作小説のアニメ化作品。
  • 水島努監督の最高傑作だと個人的には思う。
  • ついでに実写版『アナザー』についても。
  • おススメ度:★★★★☆

(簡単な導入説明)
時は1998年、母親の故郷「夜見山市」に、転地療養のため引っ越してきた主人公の「榊原恒一」は、ある夜、入院先の病院で「見崎鳴(みさきめい)」という少女に出会います。その後退院した恒一は、転入した「夜見山北中学校」のクラスメートに鳴がいることを知ります。実はそのクラスには、ある秘密があり、それは夜見山市にひろがる、おそろしい出来事の源泉となっていたのですが……。

最初に書いておきますが、私は綾辻行人の原作を読んでいないので、どの程度このアニメが原作に忠実なのかは分りません。しかし、おそらく原作の持っている以上のものを、監督の水島努が引きだしていると思われます。水島監督は、原作や原案に独自の味付けをして、傑作へと仕上げることにかんしては、名監督との定評があるからです(迷作をうみだすこともありますが…)。最近だと、『ガールズ&パンツァー』や『SHIROBAKO』といった(オリジナル作品でも)大ヒット作をうみだしています。そのTVシリーズ監督作品の中では、私はこの『アナザー』が一番好きな作品で、最高傑作なのではないかと思います。ホラーと(たまに挿入される)ギャグとがうまく絡みあい、ミステリー原作にあるトリックをネタバレせずに、映像としてうまく描き出していて、本当によくできた作品だと思います。

とにかく怖い作品であることを、雰囲気を通して描こうとしていて、まず1話目の冒頭からそれを出しています。ちょっと基本に忠実なきらいもありますが、これから起きる惨劇(の舞台)の連続的なカットと、それらに(説明)セリフを重ねて、導入部分としては分かりやすくつくりあげられています。第1話から曇りを帯びた暗い感じと、死の匂いを粒子のように漂わせて、これからの惨劇の予兆を提示しています。それらをアンニュイでいて緊張感を感じさせる音楽と(声優の)演技と、効果的な演出でまとめて、静かに視聴者を作中に引き込んでいきます。以前「きうら氏」が取り上げた『千と千尋の神隠し』でも述べられていましたが、いかに導入の部分がホラー要素として重要かということです。それが通俗的なものであっても、ということです。

アニメーション制作会社のP.A.WORKSがうみだした、影と光とのメリハリのついた綺麗な映像美が、この作品の怖さにうまくあっていて、個人的にはPAWORKS制作作品の中でも最高傑作なのではないかと思います。PAWORKSは水島努監督と『SHIROBAKO』とでもタッグを組みましたが、これはどうも現代ものなのにファンタジーの要素が強く、時に見ていて現実へ醒めてしまうことがあって、十二分に楽しめませんでした(おもしろさは文句なしですが)。またいつか、このスタッフでホラーっぽいのをつくってほしいものです。本来ならここで脚本とシリーズ構成にも触れなければなりませんが、原作を読んでいないので、省かせてもらいます。

怖さとおもしろさとを兼ね備えたものとして、TVシリーズのアニメ作品では(私が見た中ですが)一番だと思うのですが、星5つとしたいところを星4つとしました。そのわけというのは、はっきりいうとミステリーとしての話自体がたいしたことないからです。最後のオチを知ってから、何度か見直すほど、ミステリーとしてのオチと、登場人物たちの恐怖への対応に<粗>のようなものが見えるからです。主人公に対して、もっと有効な手立てはあると思うのですが、なぜそれをしなかったのかとか、つっこむ部分がいくつかあるからです(とはいっても、何らかの瑕疵というほどのものでもありませんが)。登場人物たちの軋轢をうむには丁度よい設定ではあります。

衝撃ある映像として描かれている死についても、見るほどに突っ込む部分があります。舞台である「夜見山市」では、様々な死に襲われるわけですが、そのほとんどは事故で処理されるものであり、自殺についても集団ヒステリーが高じた中での突発的なものとして解釈されるもので、真相はほぼ当事者にしか理解されないものです。だから、連続して起こる死について、外部のものは誰も不審に思わないのでしょう。それとも思わせない何らかの超常的な力が働いているのでしょうか。まあ、そのあたりはどうでもいいのですが、その肝心の死の描写が見れば見るほど、ギャグ的要素がちらつくのです。

死(暴力)の様子をどう描くかはかなり難しいところだと思います。単なる記号的表現としての死から、グロくてスプラッター的残虐なものとしてのそれまで色々あります。水島監督は『アナザー』の前年に制作した(スプラッター)アニメ『BLOOD-C』(12話)で、スプラッターシーンを演出しましたが、それは『撲殺天使ドクロちゃん』(同監督)を思わせるギャグテイストの虐殺っぷりで、変な爽快感がありました。それに比べると、『アナザー』では、ギャグ的な残酷さをある程度抑制しつつ、偶然なのに予感された、死という不条理に襲われる登場人物の心理をうまくみせていて、死の恐怖がじわじわと感じられます。しかし、本作品を何度も見ると、死に襲われた後(=死体となった)の描写は、ギャグ成分が抜け切れていないように見えてくるのです。この点に関しては、アニメ『エルフェンリート』(監督:神戸守)の残虐シーンと比べるとよく分かります。『エルフェンリート』の惨殺シーンでは、それまで生きていた人間が、あっというまにただの肉塊(物質)へと変貌するという見せ方で、ある意味リアルな表現にもなっていました。『アナザー』にはその死体のもっていると思しき生々しさが、それほど感じられません。まあ、それはそれでいいのですが、『アナザー』の死は、時に死の形態模写をしているようで、それを何度も見ると、どうしてもギャグっぽく思えるのです。

このアニメはホラーとしても面白いですし、キャラクターたちの魅力も存分に描かれていて、エンターテインメント作品として見られると思います。ただ、直接的な残酷シーンが多々あるので、見る際には注意してください。

(最後のおまけ)
実写映画の『アナザー』について簡単に。2012年公開の映画は、主演が、今や人気俳優になったとされる山崎賢人と、『あまちゃん』にも出ていた橋本愛。この映画のロケは、東日本大震災の影響で、私の地元三重県伊賀市に変更されて行われました。私の感想は(ホラーとしては)凡作という印象で、ただ見覚えのある光景がいくつあるか、それだけを確認するためだけの作品でした。
(成城比丘太郎)

(成城比丘太郎)


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