★★★☆☆

ZOO〈1〉 (乙一/集英社文庫)~紹介と感想

投稿日:2018年1月5日 更新日:

  • 趣の違うホラー短編を5つ収録
  • ワンシチュエーション物からちょっとした感動物語まで
  • 「状況」だけで「意味」が弱い気がする
  • おススメ度:★★★☆☆

新年、一発目の通常更新は、前年に「平面いぬ。」で紹介した乙一氏の短編集。その時の印象として「奇抜なアイデアを形にする作風」と書いているが、今回の短編集は奇抜さもあるが、全体的にちゃんとフォーカスを絞った物語になっている。

(あらすじ)
この短編集には、ホラーやホラー・ファンタジーに類する短編が5つ収録されている。順に簡単に紹介すると、虐待される双子の妹のある決意と残酷な結末を描く「カザリとヨーコ」、謎の地下室に閉じ込められた姉妹の脱出劇「SEVEN ROOMS」、ある家族に起きた不思議な世界軸のズレを描く「SO-far そ・ふぁー」、近未来の終末世界でその人生を終える男とアンドロイドの悲哀の物語「陽だまりの詩」、毎日ポストに死んだ恋人の腐敗していく写真が投函される表題作の「ZOO」となっている。

最初にフォーカスを絞って……と、書いているが、実はそれぞれに著者が表現したいことは伝わって来て、ホラー的状況やプロットは理解できるのだが、その下にある「伝えたいこと」が平坦で、大変失礼だが「で?」と、感じることが多かった。

例えば、最初の短編では、容姿が全く同じで、なぜだか酷い虐待を受けている妹の目線で描かれるのだが、最後までなぜそうなったのかは分からない。作者的にはそこは重要なファクターでないと判断したのだと思うが、私は気になって仕方なかった。そこで母親の「業」が描かれていれば結末がさらに意味のあったものになるように思う。

続く「SEVEN ROOMS」は、よくある「密室突然放り込まれ系」の小説で、目が覚めると絶望的なシチュエーションに陥っている話だ。例えが古くて申し訳ないが、映画で言えば「SAW」、小説で言えば「クリムゾンの迷宮」のような感じで、ひたすら脱出に向けた経緯が語られる。結構ホラーな感じで、読んでいる時は面白いのだが、これも結局、姉弟愛を描きたかったのか、不条理ホラーにしたかったのかが良く分からない。前者ならキャラクターが薄いし、後者ならもっと奇抜さが欲しい。結局、状況は理解できるが「それでどうなった?」がないので、何だか肩透かしを食らった気になる。途中は楽しめるので、非常に惜しい。

巻末で映画化されたという「陽だまりの詩」について、監督と著者が語り合っているが、私的にはこの五編では一番駄作だと思う。テーマもキャラクターも舞台設定もはっきりしているが、SFというには設定が甘くて良く分からないし、「愛」を語るストーリーは少々気恥しい。この作品だけ、ホラーではなくてSFファンタジーだが、作品集としてのバリエーションとして理解しておきたい。こうした穏やかな作風が好みの方もいるかも知れない。

逆にタイトル的には駄作だと思っていた「SO-far そ・ふぁー」が、落ちまで含めて一番楽しめた。これだけなら★4でもいいと思う。何でもない家庭の何でもないシーンから、ちょっと不思議な出来事が発生するのだが、論理的な整合性もあるし、似た話のプロットをうまくかわしてオリジナルティのある短編になっている。読後感も悪くないし、ホラーではないがちょっと不思議でいい話だ。この短編だけは特におススメしたい。

最後は表題作の「ZOO」だが、ある男の狂気が描かれている……という表現で完結してしまうような内容で、こういうジャンルが好きな方もいるだろうが、私は合わなかった。やはり私はどうしても論理的な解決を望んでいるようで、シチュエーションが奇抜で魅力的であればあるほど、綺麗な収束を望んでしまう。投げっぱなしも時には、一種爽快な気分になるが、やはりそこはちゃんと起承転「結」してほしいと思う。

ちなみに「ZOO2」もあるようなので、見かけたら読んでみたい。あと一歩で何か凄い大作になりそうな、そんなポテンシャルは感じる短編作品集だった。

(きうら)



ZOO 1【電子書籍】[ 乙一 ]

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